一般の旅行ガイドブックにはフィンランドについて詳しいものがほとんどありません。私が持参してきたのは「地球の歩き方Plat」というものですが,昨年行ったアイスランドもまた,旅行ガイドブックはこのシリーズしかありませんでした。このことは,日本から訪れる観光客が少ないということを意味するのだから,観光客の多いところが嫌いな私にはそれはそれで好ましいのですが,この本には,フィンランドといっても,載っているのはヘルシンキのほかにはムーミンワールドに近いナータリンとトゥルク,ムーミン美術館のあるタンペレ,そして,北極圏の町ロヴァニエミとサーリセリカのみです。そこで,フィンランドのこれ以外の町の情報は日本ではほとんど手に入らないということになります。
私が抱くフィンランドのイメージはムーミンやサンタクロースよりもむしろシベリウスなのです。しかし,シベリウスというのは,モーツアルトなどと比べるとずいぶんと地味で,かつ,渋く,シベリウスに関する場所がどこにあるのかというのがよくわかりませんでした。私のうっすらとした記憶にあるのが,昔,LPレコードの解説にあった,ヘルシンキから郊外に行ったところにあるシベリウスの住んでいた森の中の一軒家の写真で,すごい田舎に住んでいたんだなあ,こんな場所に行くことはないだろうなあ,と思ったことくらいのものでした。

今回,フィンランドに来るまえに,ネットで,シベリウスの関連スポットという情報を見つけてプリントして,たいして読みもせずに持ってきました。しかし,まさかこの旅でそこに行けるとも思っていませんでした。こちらに来てから読んでみると,ヘルシンキから北に30キロメートルほど行った場所にあるヤルヴェンパー(Järvenpää)という田舎町にシベリウスの自邸だった「アイノラ」があると書かれていて,そこに行くにはヘルシンキ中央駅から近距離電車に乗ってアイノラ駅で降りてそこから歩けば行くことができると書かれていました。しかも,公開しているのは夏の間だけでした。
メトロでマリメッコの本社まで行った帰り,ヘルシンキ中央駅に戻った私は,このあとそこに行ってみようと,電車のチケットを買うことにしました。チケットは大きな液晶パネルの機械を操作すると,想像以上に簡単に購入できました。こうして私は,フィンランドに来てから,日々徐々に遠くに行くことができるようになってきたのです。
電車は日本のものとそう変わったこともなく,違いといえば日本と違って人が少なく席が空いているということでした。席は指定で,座って外を眺めていると,ヘルシンキ郊外の景色が旅情を誘いました。朝あれほど降っていた雨も止んで,ずぶぬれで不快だった足元も次第に乾いてきました。
こちらの電車は改札がなく,ホームに行って乗り込むだけです。チケットも検札が来ることがあるらしいのですが,この近距離電車には来ませんでした。約30分でアイノラ駅に到着しました。無人駅でした。駅に大きなシベリウスの看板があって,その看板に書かれた方向に至るあぜ道のようなせまい道路を歩いて行きました。やがて森の向こうにシベリウスの自邸が見えてきました。

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