しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

カテゴリ:アメリカ合衆国50州 > アーカンソー州

DSC_0536 DSC_0549 DSC_0550 DSC_0555 DSC_0561 arumajiro

●憂鬱な気分でアルマジロの中を●
 やっと私はインターステイツ40に入ることができた。さして長くないこの旅の期間で,メンフィスからナッシュビル,そして,できればケンタッキー州まで行こうと思っていたのに,地図をみると,3日目にして,まだほどんと到着したカンザスシティの近くをだらだらとめぐっているように思えた。
 しかも,ブランソンからはインターステイツが遠く,本当に,やっとのことで,ここまでたどり着いた気がした。 そして,改めて地図を見ると,アーカンソー州は,なんと,アメリカの南部ではないか!  カンザスシティやセントルイスではこんな感じはしない。しかし,少し南まで来ただけで,もう,ここは,ルイジアナ州と同じ香りがするではないか!
 私は,走りながら,随分前のことになってしまったが,ルイジアナ州ニューオリンズに行って,スワンプやらプランテーションを観光したときのことを思い出していた。

 ニューオリンズに行ったとき,それまで私が知っていたアメリカとのあまりの違いに,この町を知らないでアメリカは語れない,と思った。それほど,ニューオリンズは他の町とは全く違う魅力をもつ町であった。
  ・・・・・・
 「ディープサウス」という言葉がある。
 「ディープサウス」とは,アラバマ州,ルイジアナ州,ミシシッピ州に,ジョージア州,フロリダ州,さらに,テキサス州とサウスカロライナ州を加えたもの,あるいは,アーカンソー州を加える,などの説があるが,私は,アラバマ州,ルイジアナ州,ミシシッピ州というのが一番しっくりくる。
  ・・・・・・
 私にとっても,この3州は本当に遠い所で,よほどその気にならないと行く機会がない。そして,今走っているアーカンソーなんて,本当に日本では無名なところではないか。

 一体,この州は何が見どころなのだろうか? と再び思った。
 インターステイツ40に入ったら,道路標示に,この先にある町の名「リトルロック」と書かれてあった。
 リトルロックは,第42代大統領ビル・クリントンが州知事を務めたことのあるアーカンソー州の州都である。また,公民権運動の初期に,アフリカ系アメリカ人生徒の公立高校への編入を阻止せんと起きた事件「リトルロック危機」が有名である。このように,この州の見どころは,クリントン大統領センター,セントラル高校国立歴史地区などである。
 しかし,正直なところ,わざわざ行く気にならなかった。そんなわけで,私は,リトルロックはやり過ごし,そのままインターステイツ40をアーカンソー州の端まで走り抜けることにしたのだった。

 ところが,リトルロックを過ぎたあたりから,インターステイツ40は,やたらとコンボイが目立ちはじめ,大型トラックの渦の中をかきわけかきわけ走るということになってしまった。まるで,深夜の日本の名神高速道路のような感じであった。
 しかも,道路の周りは,これまでの牧草地とは打って変わって,南部の雰囲気ただよう,小高い木々に覆われたスワンプのようになって,まったく景観がよくないのだった。しかも,時折見通しがよくなると,今度は沼地なのであった。
 道路も,大型車がたくさん通るからなのか,ガタガタで,日本の工業地帯の,ひっきりなしに通るトラックの洪水の中を走っているときに感じるのと同じ不快感しかなくなった。私は,憂鬱な気分で走り続けるしかなかったのだった。残念ながら,私には,アーカンソー州というのは,こうしたイメージしか残らなかった。

 そうそう,書いていて思い出した。
 アーカンソー州には,もうひとつ残ったイメージがあった。それは,やたらと,道路にアルマジロの死骸が転がっていることであった。死骸だけではない。生きているアルマジロがうじゃうじゃ歩いているのだ。
 私は,はじめ,なんだこりゃ,と思った。ここは本当にアメリカか? と思った。私はなんかの間違いじゃあないのかと思った。悪い夢でも見ているんじゃないかとさえ思った。こんなのが大発生しているんじゃあ,世も末だとも思った。
 アルマジロは,もともとは南アメリカ大陸の生物であるが、最近ではアメリカ合衆国南部では一般的に見かけられるようになってきているのだそうだ。実は,アルマジロはテキサス州の州の動物である。また,テネシー州では野生のアルマジロが増えすぎてしまい、狩猟免許を持っていれば狩猟して食肉として食べて良いことになっているが,果たしておいしいのだろうか? 食べた人の話では,豚と牛と鶏の肉の味を足して3で割ったような味なのだそうだが…?! こんなもの好き好んで食べる人がいるのだろうか?
 ザリガニは美味しかったけど,ワニの肉さえ四苦八苦した私は,アルマジロなど絶対に食べたくない。ワシントン条約で国際取引を禁止されている動物らしいが,取引など頼まれてもしたくない。
 そうこうするうちに,やがて,インターステイツ40は,ミシシッピ川に差し掛かろうとしていた。
 この川を越えれば,いよいよテネシー州である。

DSC_0495DSC_0504DSC_0513DSC_0529DSC_0533

●おかしな日本語を話すカーナビ●
 アメリカで車を運転していて一番難しいのは,カーナビ(GPS)さんとのおつきあいである。
 はじめは,カーナビが案内する道路だから間違いないと思って,私は道路を左折した。
 アーカンソー州に入ると,走っていた道路が片側1車線の一般道になってしまったのが,そもそのも原因であった。そのあともずいぶんと走っていったのだが,進路はどんどんと北向きになっていく。どう考えても,方向がおかしい。これでは,ミズーリ州に逆戻りである。そのときやっと,私は,もと来た道まで戻ることにしたのだった。
 要するに,私の入力した地名で検索して出てきた場所が,地名ではなくどこかの商店か何かの固有名詞だったのだ。

 ところで,カーナビのついていない車でアメリカを旅行するには,かなりの技術が必要である。私は,自分でいうのもなんだが,地図が読めるので,遠くに行くときはそれでも何とかなる。それよりも問題なのは,都会で運転するときである。
 アメリカの都会を運転するのはかなり難しい… と書きながら,それは何もアメリカだけではないことに気づいた。日本のほうがよほど難しいかもしれない。日本でそれほど困らないのは,単に、道路を知っているというだけのことであろう。
 近ごろのカーナビはとても優秀で,多くの国の言葉に設定が変更できる。そこで,私は、この旅行では,日本語に設定して走っていたのだが、彼女(=カーナビ)の話す日本語がかなりおかしい。というより,よくわからない。この日本語を理解するのに,ずいぶん時間と日本語力? が必要であった。英語に設定しなおせばよかったのだが,面倒でほかっておいた。次にアメリカで車を借りたときはそれに懲りて英語の設定にしたが,これならとてもよくわかった。
 ぜひ,アメリカでカーナビつきの車を借りられるときは,英語の設定にされることをお勧めする。

 カーナビを使うときの次の問題は,目的地をどう入力するかということであった。
 いろいろと試してみたのだが、もっとも正確なのは,住所を入力する,という方法であった。ホテル名を入力しても同じ名前のホテルがさまざまな町にあるから間違うことが多いし,地元でなければ表示されないことも多くある。また,住所の入力でとても便利なのが,日本の郵便番号にあたるZIPコードを入力する方法である。
 カーナビで目的地を入力するときは,ZIPコードに限る。
 これが結論である。

 さて、私は,再び,もとの道路まで戻ってカーナビを設定しなおした。とりあえず,リトルロックまで行くことができればいいのだから,今度はリトルロックのシティホールに設定した。
 そして,ガソリンを入れるついでにコンビニで朝食を買った。いつものように,菓子パンとコーク。ホテルで朝食をとる前に出発するといつもこんな感じだ。
 どうやらこれで,無事,カーナビは私を正しい方向に導いてくれたようだった。改めて国道65を走っていくと,やっと,目の前にインターステイツ40が見えてきた。
 その途中で「クリントン」という町を通った。確かに,アーカンソー州はクリントン元大統領ゆかりの地ではあるが,調べてみたところ,この町は特にクリントンさんとは関係がないようであった。

DSC_0456DSC_0470DSC_0475DSC_0485

●アーカンソー州には何があるか?●
 いよいよ,私は,未知のアーカンソー州に入った。
 アーカンソー(Arkansas)という名前は,アメリカンインディアンの カンザ族と近縁のクアポー族の言葉で「下流の人々の土地」を意味する,あるいはスー族の言葉で「南風の人々」を意味する「アカカズ」(akakaze)をフランス語風に発音したものである。

 私は,アーカンソー州に行って,初めて,ここは,「アー+カンザス」なのだと気づいた。ならば,なぜ,アーカンザスではなく,アーカンソーなのだろうか?
 この語末の「a+子音字」は標準のフランス語では「ア」と発音する。これを「オー」と発音するのはケベック・フランス語など北アメリカのフランス語である。 だから,アーカンソーの発音については,州選出の2人のアメリカ合衆国上院議員の間で,片方が「アーカンザス」(ar-kan-zəs)を主張したのに対し,もう一方が「アーカンソー」( ar-kən-saw)を主張するという論争があったのだ。
 そして1881年の州議会立法で公式に「アーカンソー」と決められたというわけだった。

 それにしても,アーカンソー州なんて,行った日本人がどのくらいいるのだろうか?
 私と同じくアメリカ合衆国50州を制覇しようとした人の書いたものを読んだことがある。というよりも,それを読んだことを覚えていて,私もそうしようと,いつの間にか思うようになったのだが,その人が最後に残ってしまったのは,ノースダコタ州であった。私はこれを知っていたので,それほどノースダコタ州というところが行きにくいところなのかと興味をもったのだし,それが理由で,すでに,わざわざそのノースダコタ州には行くことができた。
 しかし,今考えてみれば,ノースダコタ州以外にも,結構行きにくい州は存在する。メイン州もそうだし,アーカンソー州も同様である。しかし,このアーカンソー州こそ,もっとも「何もない」州なのではなかろうか,と今回行ってみて思ったのだった。

 ノースダコタ州には,シェールオイル(石油)があった。一体,このアーカンソー州に何があるというのだろうか?
 私は,行った時にはそれがまったっくわからなかった。帰ってから調べてみると,アーカンソー州はダイヤモンドが自然に埋蔵されている事が発見された合衆国で唯一の州であることを知った。ただし,一般人が少ない日給で原始的な掘削道具を使って掘り出しているので,商業ベースには乗っていないのだという。
 この州には州立公園が52あって,天然資源が保存されている。そして,少額の料金を払うと,本物のダイヤモンドなどの宝石の原石を採掘して,見つけた原石はもらうことができるのだという。

 私は,カーナビでナッシュビルと入力して走っていたと前回書いたが,その案内に従って,順調に国道65を南下していった。そして,アーカンソー州に入った。
 この辺りまでは順調であった。
 地図上では,国道65はそのまま南から南東に進路を変えて,アーカンソー州の中央にある州最大の都市リトルロックを目指し,そこで,インターステイツ40に入るはずであった。
 ところが,国道65はアーカンソー州に入ったあたりから,片側1車線のカントリーロードになって,しかも,どう考えてもそのまま南に行かなくてはおかしいのに,カーナビは左折を指示したのだった。

このページのトップヘ