しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:やっと晴れたか!春2020

IMG_0465t2 (4)wIMG_0472s (2)nn

☆☆☆☆☆☆
 5月23日に,すでにブログに書いたように,薄曇りの中,念願だったパンスターズ彗星(C/2017Y4 PanSTARRS)とおおくま座の三つの銀河との接近を写すことができました。
  ・・
 その1週間後の5月29日から30日にかけて,それまで自粛閉館をしていた,いつもお世話になっている木曽駒高原のゲストハウスが再開したので,旧街道歩きと星見を兼ねて行ってきました。
 29日はお昼間はさわやかに晴れて,人のまったくいない旧中山道の鳥居峠歩きを楽しんだのですが,夕方になって,天気予報に反して小雨が降ってきたのには驚きました。しかし,調べてみると深夜には回復するということだったので,それまで仮眠をしました。午前1時ころに晴れ上がるとのことだったのですが,午後11時に目覚めたら,すでに晴れ上がっていたので,慌てて準備をして外に出ました。こうして,満天の星空も堪能できました。
 実は,今年の3月はいつものようにオーストラリアに星見に出かけるはずだったのですが,入国ができなくなったので,オーストラリア行きは断念せざるをえなくなりました。
 私がオーストラリアで星見をするときに泊まるゲストハウスは,ブリスベンから約3時間ほど車で走ったところにあります。そしてまた,木曽駒高原の定宿も,私の自宅から約3時間程度で行くことができます。同じようなシチュエーションなのです。そこで,オーストラリアのような景色の美しさやのどかさはまったくないのですが,それでも,信州の山々を眺めながら同じような気持ちに少しは近づけるので,海外に行くことができなかったその代わりとして,それなりに楽しい星見になりました。
 
 この晩は,魚眼レンズや広角レンズで星空の写真を写すつもりでしたが,念のためにと300ミリの望遠レンズも持っていったのが結果的に正解でした。それは,今日の1番目の写真のように,300ミリ望遠レンズを使って写したパンスターズ彗星が,思った以上に長い尾をもった素敵な写真になったからです。やはり空が暗いというのはすごいものです。
 1週間前にあれだけおおくま座の三つの銀河に接近したパンスターズ彗星ですが,2番目の写真のように,この晩は銀河からはかなり離れてしまいました。北極星に近づいて一晩中見られたパンスターズ彗星も次第に暗くなっていき北極星方向からも離れていくので,そろそろ見納めです。
  ・・
 先に書いたように,この晩は深夜から晴れるという予報だったので,私は先に仮眠をとりました。予報より早く晴れ上がったのですが,準備をして望遠鏡をセットして星を見はじめたのは深夜の12時ころでした。この季節は夜が短く,午前3時には明るくなってきます。そこで,わずか3時間くらいしかなかったのですが,こうして,彗星の写真と,さらに,はじめの目的だった魚眼レンズや広角レンズによる星空の写真をたくさん写すことができました。その中の1枚が3番目の写真のような銀河の写真です。地平線に近いところに輝いているのは木星と土星です。
 午前2時30分過ぎ,空が白んでくる前に,この晩の締めとして,日周運動をはじめて写すことにしました。赤道儀のモーターを停止して,カメラを北極星に向けて20分露出したのが4番目の写真です。日周運動は簡単に写せるように思えるでしょうが,ディジタルカメラのような感度の高いものでは,実際は,都会のような空の明るいところだと1分も露出するとカブって真っ白になってしまいます。長時間露出してもカブらず大丈夫であるためには,空が暗いことが必要条件です。さらに,絞りやISOをどのくらいにすればいいかなど,試してみないとよくわからないし,試す時間もなかったのですが,なんとか写すことができました。これもまたやはり,空が暗いというのはすごいものだと改めて思いました。

IMG_0482 (4)snIMG_0495sn

DSC_1659s (5)cz DSC_1659s (6)n

☆☆☆☆☆☆
 地上のことはさておき,空の上ではおもしろい出来事が連日あって,この春は忙しい毎日です。月というものがなくいつも天気がよければ予定も立つというものですが,月明かりと雲が予定を阻害します。しかし,それもまたよしと思える歳になってきました。
  ・・
 さて,この春の見ものは,第一にアトラス彗星(C/2019Y4 ATRAS)でしたが,あえなく分裂して,期待に反して明るくならず,でした。そうこうするうちに,南半球ではスワン彗星(C/2020F4 SWAN)が明るく見えているという情報が伝わって,南半球なんて関係ないや,と思っていたら,彗星が太陽に近づいてくるにつれて日本でも地平線すれすれに見ることができるようになったのには,うれしいというより参りました。このことはすでに書きました。

 これらのことはパプニングとして,私がずっと楽しみにしていたのは,パンスターズ彗星(C/2017Y4 PanSTARRS)がおおくま座にある銀河M81,M82,NGC3077に大接近するということと,月齢2の月が金星と水星に接近するというふたつの出来事でした。
  ・・
 彗星は銀河M81,M82,NGC3077に接近したあとは次第に遠ざかるのですが,最も近づくのが5月23日で,その前後数日は同じ画角の写真の視野に入ります。また,条件最悪のスワン彗星とは違って,この時期は新月の前後なので条件もよく,また,彗星の位置も北極星に近いので,一晩中見ることができます。
 しかし,このごろはすでに梅雨空のようになってしまい,3月から4月にかけて毎日晴れ渡っていたのがなつかしく感じるようになりました。5月23日もまた,さえない天気でしたが,予報では明日以降も晴れそうになかったので,ダメもとで,曇ってしまったときは深夜のドライブを楽しむつもりで出かけました。
 現地に着いたとき,なんとか北極星とおおくま座が見える程度で空のほとんどは曇っていてがっかりしました。おおくま座のM81とM82はとてもわかりずらいところにあるので,晴れていても視野に入れるのが大変なのに曇り空では打つ手もなく,しかも,この日はおおくま座は天頂に近く望遠鏡を覗くのもまた大変でした。苦労のあげく,なんとかふたつの銀河M81とM82の近くにあるおおくま座24番星(4.5等星)をファインダーに入れることができたので,やっと場所が特定できました。
 おそるおそる写してみたのですが,はっきりと銀河と彗星が写っていました。それにしても,こんな曇り空でも8等星の彗星が写るのが驚きです。
  ・・
 こうして,私は,前回のスワン彗星に続いて,今回もなんとか写真に収めることができて,すっかり満足しました。

☆ミミミ
その翌日5月24日は,月と金星と水星の接近でした。
私が上に書いた彗星を写した23日は金星が午後8時ころには思っていたより高い位置に簡単に見つけることができたので,次の日も晴れていれば期待できそうかな,と思ったのですが,当日は雲があって絶望的でした。しかし,前日に金星の位置を確かめることができたのが幸いしたことと,幸運にも雲が切れて,沈む寸前に美しい姿を写すことができました。
これもまたツキにめぐまれました。
DSC_5431 (3)x

IMG_9657s (5)n IMG_0943 800px-SOHO_ready_for_encapsulation Moon_age 27.1 2015_12_09 (2) IMG_1065 IMG_1066

☆☆☆☆☆☆
 本当ならこの時期はアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が日が暮れた後の北西の空に明るく輝いているはずでしたが,期待に反して分裂してしまいました。
 そんなとき,急にスワン彗星(C/2020F8 SWAN)が南半球で明るく輝やいている(=2番目の写真)というニュースが飛び込んできました。
  ・・
 今年2020年3月25日,オーストラリアのビクトリア州スワンヒルのアマチュア天文家マイケル・マッティアッツォ(Michael Mattiazzo)さんがSOHOに取りつけられているSWANが撮影した画像に彗星らしい天体が写っているのを発見しました。新型コロナウィルスの影響で世界各国の天文台ではすぐに観測できる状態になく,マッティアッツォさんををはじめとする南半球のアマチュア天文家がこの天体を観測,国際天文連合(IAU)で確認され軌道が確定しました。
 それによると,彗星は太陽系の天体と逆回りで公転していて,5月12日に地球に約0.56AU(1AU=地球と太陽の距離)まで近づき,さらに5月27日には太陽に約0.43AUまで近づき4等星ほどになることがわかりました。

  ・・・・・・
  SOHO(Solar and Heliospheric Observatory=3番目の写真)というのは,1995年に欧州宇宙機関(ESA)とアメリカ航空宇宙局 (NASA)によって開発された太陽観測衛星で,SWAN(Solar Wind ANisotropies)は水素の特性スペクトルを観測する望遠鏡です。太陽風の流れや太陽圏における密度分布,太陽風の流れの大規模構造の観測を行うものです。
 SOHOは,これまで3,000個以上のサングレーザーと呼ばれる太陽をかすめる彗星を発見しています。なお,発見された彗星の85%はクロイツ群に含まれる彗星ということです。クロイツ群(Kreutz Sungrazers)というのは近日点が太陽に極めて近い類似の軌道をもつもので,天文学者ハインリヒ・クロイツにより数百年前に分裂したひとつの非常に巨大な彗星の破片だと考えられています。クロイツ群に属する彗星で最も有名なものは1965年の池谷・関彗星です。
  ・・・・・・

 さて,このスワン彗星,北半球ではほとんど見ることができず,しかも,この時期南半球に行くこともできないので,私はあきらめていたのですが,日本でも,5月の中旬に,夜明け前に北東の地平線から昇り,夜が白むまでの数十分間かろうして見ることができるかも,ということでした。
 しかし,それにしても条件悪すぎです。最悪です。満月が終わったばかりで月が明るく,彗星は高度が10度以下と低く,しかも,夜が白むのは早くも3時30分ごろなのです。
 5月12日の早朝は快晴でした。時節がら遠くに出かける気にもならず,地平線まで見通せる家の近くの場所へ,眠い目をこすり,とりあえず出かけました。その日,彗星はうお座にあったのですが,近くに明るい星もなく探せません。しかも,月明かりでもともと空は白んでいました。当然肉眼でも双眼鏡でも見えず,方角だけを頼りに写真を写してみましたが,少し長く露出をすると真っ白になってしまい,結局写すことができませんでした。
 あきらめがつかず,月明かりがなくなった5月20日は前日19日の夕方に降った雨も上がり晴れそうだったので,思い切っていつもの山まで出かけました。到着したときは空の80パーセントくらいは雲に覆われていたのですが,かろうじて北極星は見えました。雲が切れる予感がしたのでしばらく待っていたら,奇跡的に彗星の昇る北東の低空の一部だけ晴れてきました。この日,彗星はうお座からペルセウス座に移動していて,ペルセウス座のα星「ミルファク」(Mirfak),アンドロメダ座のγ星「アルマク」(Almach)という明るい星がなんとか見えたので,そのふたつの星から彗星の位置がわかりました。そして,ダメもとで写した写真に彗星の像が確認できました(=1番目の写真)。私にはこれが精一杯です。
 夜明け。さきほどの曇空がうそのように晴れ渡り,東の空には月齢26.7の月が山から昇ってきてそれはそれは神々しいものでした。(=4番目の写真)帰りの車から家の前で家族で月を観察している人たちを見つけてほえましくなりました。時間は朝4時,早起きして自然の美しさを知るのです。

 さて,スワン彗星はこのあと太陽に近づいていくので見えなくなります。おそらくこの写真がラストチャンスだったでしょう。5月下旬になると太陽を追い越して,そして,今度は夕方の北西の低空に再び姿を現すのですが,空の暗い明け方でさえ困難なのに,街灯りの明るい夕方,しかも新月をすぎた月も輝く空では,とても見ることができるとは思えません。救いといえば,ぎょしゃ座のカペラのすぐ近くということくらいでしょうか。
 それにしても,明け方に月があるときに明け方に見え(=5番目の写真),夕方の月があるときは夕方に見え(=6番目の写真),しかも,ともにかなりの低空とくれば,これほど条件最悪の彗星もめずらしいです。実際に見もしないで,明るい彗星が見えるなどと書いているブログも多々あるのですが,困ったものです。本当に見えるか試してごらんと言いたくなります。何事につけても行動もしないくせに机上の空論を振りかざす輩が多すぎます。

月金星a 月と金星3 DSC_5019s (5)

☆☆☆☆☆☆
 今,夕方の西の空に金星がきれいです。
 金星は大きさと質量が地球によく似た惑星です。公転周期は225日ですが,地球とは違って自転周期は243日と長く,しかも自転の方向が公転とは逆です。また,地球のように大気があるのですが,分厚く覆われているので地表の温度は約摂氏470度もあり,二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降っているといいます。
 金星は地球より内側を公転しているので月と同じように満ち欠けします。太陽の反対方向に見えることはないので,地球と金星と太陽の位置関係から,夕方の西の空(宵の明星)か明け方の東の空(明けの明星)にしか見えません。金星が太陽から東に最も離れて夕方の西の空に最も高く見えるときが「東方最大離角」で,反対に太陽から西に最も離れて明け方の東の空に最も高く見えるときが「西方最大離角」です。
 今年の金星は5月ごろまで夕方の西の空にひときわ明るく輝いていて,3月25日の東方最大離角をすぎると,次第に太陽に近づいていきます。4月28日には最大光度を迎えました。

 金星は,およそ1か月に1回くらいのペースで細い月と並んで見えます。ちょうど今月は25日から27日までがそうでした。3日間にわたって,次第に月が金星に接近するのを見ることができました。金星の輝きはそれだけでも美しいものですが,幻想的な細い月と金星が夕空に並ぶ光景は幻想的です。また,この時期の金星は望遠鏡で眺めると,月と同じように三日月状に見えます。
 この3日間は幸い天気に恵まれたので,写真に収めることができました。今日の2番目の写真の左側が4月25日,そして右側が4月26日です。4月26日は少し雲があったのですが,なんとか見ることができました。そして,最も近づいた4月27日が今日の1番目の写真です。この日はさらに,望遠鏡を使って,月と金星の拡大写真も写すことができました。
  ・・
 金星はプレアデス星団M45との大接近も起こります。今年は4月4日ころ,最もプレアデス星団に近づきましたが,そのときに写した写真が3番目のものです。
 この先の見ものは5月24日です。この1か月で金星は急速に高度を下げていくのですが,5月24日は夕方の西の低い空で水星と大接近し,そこに月齢1.7の細い月が並びます。今から楽しみです。晴れるといいなあ。

IMG_0281IMG_0279IMG_0280IMG_0282

 今日は昔話です。
 今から40年以上前のアマチュア天文愛好家は観測所をもつのが夢でした。それは,藤井旭さんが「月刊天文ガイド」で白河天体観測所のことを書いていた影響が大きかったからだと思います。
 おそらく,今と比べれば,そのころは都会でもずいぶんと夜空は暗かったのでしょうが,当時は当時で,都会の空が明るいことが問題でした。さらに,これを書いていて思い出したのですが,そのころ,郊外のいたるところにできたパチンコ屋がその存在を知らせるために,夜になるとサーチライトをぐるぐる回し空を光らせていて,どこかしこもその光害に天文ファンは迷惑をこうむっていました。

 さて,話を戻します。
 私もまた,自分の観測所をもつことに憧れていました。満天の星空さえ見たことがなかったから,当然,観測所で何をするかなど考えたこともありませんでしたけれど…。しかし,私の最大の問題は,そのころはまだ車を持っていなかったことでした。都会に住んでいてしかも車という移動手段がないとなれば,星を見にいくなどというのは,夢のまた夢のことでした。
 そんなころ,大学で一緒だった天文好きの友人から,実家にいい土地があるからそこをアジトにしないかと誘ってきました。場所は鉄道のローカル線の駅の裏でした。家からは列車を乗り継いで2時間ほどかかりましたが,車がなくとも列車を使えばでその場所まで行くことができるのでした。しかし,お金もないので,いきなり観測所を作るわけにはいきません。そこでまず,観測小屋を作ることにしました。そこに望遠鏡を入れておいて,狭いけれど寝袋で仮眠をとれるようにすればなんとなるだろうということになりました。
 そこでさっそく実行に移して,観測小屋ならぬ物置小屋を購入して軽トラックで運んでもらいました。こうしてすぐに観測小屋ができましたが,そこまででした。
 今考えると不思議な話であり,しかももったいない話です。ここまでやれば後は出かけて星を見るだけなのに,わざわざ行くのが面倒になって結局足を運ぶことがなかったのです。こんな観測小屋があっても,夜,現地に着いても始発の電車が来るまでは雨が降ろうと風が吹こうとどうにもならないわけで…。さらに,そのあとすぐに就職して仕事が忙しくなって,結局,観測小屋を作っただけに終わりました。
 このとき私が学んだのは,何かを作ったり企画すると,それを維持することはその何倍も大変だということでした。観測小屋を作れば盗難の心配もあります。そこで,観測小屋を作るという夢を実現しても楽しいものではなかったのでした。
 そのころ,今のような行動力と知恵があったら,その後観測小屋はどうなっていたのだろうと思うことがあります。稼いだお金をどんどん使って観測小屋が観測所になって,観測装置も巨大化して…。で,私はいったい何をしようとしたのでしょうか? 実際にそうした観測所を作った人たちのその後を知った今となっては,それはそれで,それほどうらやましいことでもないような気がします。
 それよりも,今の私のように,きままに,世界中の天文台を見にいったり旅先で満天の星を眺めるほうが,ずっと楽しいお金の使い方だったなあと,強がりでなくそう思います。あの観測小屋に時間とお金をつぎ込まなくて本当によかったことでした。
 どうやら,人は歳を取ると,自分の行動を正当化しようとするようです。でないとみじめです。

 それはそうと,そのときに作った観測小屋がその後どうなったか,ということをふと思い出しました。何度も行ったわけでもないのに,その場所のことはとてもよく覚えていました。そこで,近くに行くついでがあったので,今回,その途中で寄ってみることにしました。
 実際に着いてみると,40年もの月日が経つのに,当時の面影がたくさんありました。今でも夜になればけっこうマシな星空が見られそうで,こんなにいい場所だったのかと,それだけは後悔しました。今でもこの場所に観測所を作れば十分に機能しそうでした。
 それよりなにより,そのときにこしらえた観測小屋が今でも健在だったことに驚きました。今は何に使われているのでしょうか? おそらく畑の物置にでもなっているのでしょう。こうした現実を見ると,月日の流れというものは,つくづく不思議なものだと改めて感じます。
 できることなら,1度でいいからそのころに戻って,一晩中この場所で思う存分星を見たかったと思ったことでした。

☆☆☆

Star Cartアトラス DSC_1636s (2) DSC_1639s (3)DSC_1645s (2)

 桜が咲くまでは暖冬だったのに,桜が咲くころになって寒くなり,おかげで花の季節が長くなりました。例年と違って,せっかく咲き誇っていても見る人が少ないのは桜にとっても無念でしょう。
 私は花粉症でないので花粉のことはわかりませんが,春といえば,例年ならこの時期は大陸からのPM2.5と黄砂に悩まされるのに,PM2.5が少ないのはわかりますが,黄砂も少ないのはどうしてなのでしょう。よって,星がよく見えます。

 現在,10等星より明るい彗星が3個,すべて北西の空にあって,日没から捉えることができます=1番目の星図。やっと月明かりの影響がなくなりつつあり,天気もよかったので,4月14日の夕方,彗星の写真を撮ることにしました。
 3個の彗星のうちアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が世紀の大彗星になるという思ってもみない朗報があって,大いに期待したのですが,月明かりで星が見えなかった時期に,どうやらアトラス彗星は分裂してしまっただの,もうすぐ消え去る運命だのといった残念なニュースが聞こえてくるようになりました=2番目のグラフ。そこで,実際はどうなのかという興味がありました。
 以前にも書きましたが,まずはこの3つの彗星についてのおさらいです。

●アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)
 2019年12月28日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラに設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見されたものです。5月にかけて世紀の大彗星になるかと予想された彗星で,現在はきりん座を動いています。
  ・・
●アトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)
 こちらのアトラス彗星は,先に書いたアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)に先立って,2019年12月16日にATLASサーベイによってハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)に設置された望遠鏡 ATLAS-MLO で発見されたものです。
 現在はカシオペヤ座にいて一晩中沈まないのですが,高度が低く,北極星の周りを日周運動で反時計まわりに半円を描いて動きます。時計の文字盤に例えると太陽が沈むと7時のあたりに見えはじめ,夜明けが近づくと4時の方向で消えていきます。つまり,ずっと地平線ぎりぎりの低い高度を這っていくのです。予想より明るく8等星ほどだそうですが,このように高度が低いので,写真に撮るのはあきらめていました。
  ・・
●パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)
 2017年10月2日にハワイ・マウイ島のハレアカラにある1.8メートル Pan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。もっと明るくなるという前評判でしたが,どうやら8等星止まりというところです。しかし,彗星と地球と太陽の位置関係がずっとよく,長い間楽しめています。この彗星も今はきりん座にいます。

 この晩はとにかくはじめにアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)を写すことにしました。きりん座というのは明るい星がないので,私の使っている古い望遠鏡では自動で導入することもできないので彗星のいる位置を探すのにも一苦労です。私にはめずらしく予習をして,事前にどうやって導入するかを調べておきました。おおくま座から順を追ってファインダーに次々星を入れていって場所を特定しました。写してみると,もっと暗くなっているかと思ったのですが,意外に明るく,しかもかわいい尾をひく姿を簡単に見つけることができました=3番目の写真。
 アトラス彗星を写しているときに,地平線ぎりぎりにカシオペア座が見えました。こんな低いところにカシオペア座がはっきり見えるのに驚きました。そこで高度が低くならないうちに急いでもうひとつのアトラス彗星(C/2019Y1 ATLAS)を写すことにしました。場所はカシオペヤ座のγ星の近くなので,すぐに探せました。この彗星の写真を撮ることができるとは期待していなかっただけに,写せてホッとしました=4番目の写真。
 そして,最後にパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)を写しました。この彗星もまたきりん座にあって,探すのに苦労するのですが,最初に写したほうのアトラス彗星の位置からとパンスターズ彗星の位置から簡単に探すことができました。この彗星はすでに何度も写していたので,この晩は後回しにしてありました。最も明るい時期は過ぎていますが,依然健在で,かわいい姿をとらえることができました=5番目の写真。
 こうして,この晩は写したかった3つの彗星を短時間ですべて写すことができました。5月に太陽に最接近するアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)がどうなっていくかが今後の楽しみです。

◇◇◇

月水星火星木星土星_20200321月水星20200321DSC_4969dnna無題 (2)

 このブログは私が自分の記録用に書いているので,いささか「おたく」化しつつある懸念はあれど,今日もまた月と惑星の接近を書きます。
  ・・
 ことのはじまりは,すでに書いたように,3月19日,火星と木星と土星と月が接近するので,その写真を写したらどんなに美しいのだろう,というだけの動機でした。そのことを知ったのは,その少し前のことだったのですが,調べてみると,3月18日から3月20日までを観察して,月が惑星の間を動くのを観察しよう,とかいう記事がたくさんありました。学校も休みだし,望遠鏡もいらず,肉眼で見ることができるので,子供は早起きしてこんな観察でもすれば楽しかろうと思うのですが,そんなことをしている姿は見ませんでした。

 3月18日は曇り空で一応星見に出かけたのですが,薄い雲の間から時折月が顔を出すだけでまったく星は見えませんでした。
 結果として,幸い3月19日から3月22日まではすべて晴れましたが,はじめの目的のように,3月19日に我ながらイメージ通りの写真が写せたので満足しました。このときの写真はすでに載せました。
 この時点まで,私の関心は,月が火星,木星,土星の3つの惑星に接近することだけだったのですが,では,水星はどこ? とさらに調べてみると,なんと,水星も明け方の空に,水星としては高い高度で見られることがわかりました。
 水星はきわめて太陽に近いので,夕方か明け方の空低くしか見えません。太陽からもっとも東側に離れるときを「東方最大離角」,西側に離れるときを「西方最大離隔」といい,東側に離れたときは夕方,西側に離れたときは明け方見ることできます。そして,3月24日が「西方最大離角」だったのです。
 こうなると,3月19日に写した写真に水星を入れ忘れてしまったことを後悔しましたが,歳のせいであきらめがはやくなり,まあいいかと妥協しました。これでやめようと翌日3月20日は目覚ましもかけなかったのですが,目が覚めてしまい,外をみると,美しく惑星と月が輝いていたので,準備もそこそこ,起きたばかりの格好で防寒具だけ羽織って,カメラと三脚だけをかついで外に出て,自宅の近くで,水星は肉眼では見えなかったけれど,この辺りだろうと視野に入れて写しました。あとで確かめると,水星もちゃんと写っていました。
 
 家に戻って,さらにさらに調べて行くと,次第に月齢を上げて薄くなっていく月ですが,翌々日の3月22日には高度の低い水星よりさらに低く昇ることがわかりました。さすがに暗すぎ光度が低すぎ,これを見てみようと書いてあるものはありませんでしたが,こうなると,見えるかどうか確かめてみようと思うようになりました。こんなに低い月ではどこにあるか肉眼では探せません。そこで,月がまだ肉眼でもはっきり見える3月21日に月や水星の位置を確かめておいて,3月22日は同じ場所で同じ時間に地平線ぎりぎりの月を探してみることにしました。
 3月21日はとても空の条件がよく,きれいな朝焼けも見えました。今日の1番目と2番目の写真が3月21日に写したものです。
 そして,待望の3月22日になりました。19日から21日まで連日晴天だったので,さすがにこの日は天気が心配で半分期待はしていなかったのですが,東の空に木星が見えたのでどうやら晴れているようでした。しかし,空全体が灰色に濁っていて,最悪の条件でした。春は春霞といって,暖かい日の空はだめです。いつもの撮影場所に行っても,かろうじて木星と土星が見えるだけ,火星もやっと探し出せるいような空でした。
 前日確かめておいた月の昇ってくる場所を双眼鏡で何度も探しましたが何も見えないので,ともかく位置を決め,画角も決め,ピントをしっかり合わせて,単なる空の写真を撮りました。しかし,写した写真をモニターで何度確認しても,ここにあるはず,という場所なのにもかかわらず,何もわかりませんでした。がっかりしました。この日の月齢は27.2。私は過去に同じ場所で月齢28.4の月を写したことがあるので,写るはずなのです。私が期待したのは,今日の4番目のイメージ写真のような細く美しい月が水星と縦に並んだ姿だったのですが…。
 家に帰って,写してきた写真をコンピュータに取り込んで拡大しながらずっと眺めました。まず,かろうじて水星を見つけました。その位置から探していくこと30分,どうにか月を探し出すことができました。単なる自己満足ですが,それはそれで,やり遂げた感がありました。それが今日の3番目の写真ですが,果たして月がおわかりになるでしょうか?
  ・・
 ところで,水星,火星,木星,土星と4つの惑星が明け方の空に並んでいるのですが,残る金星はどこにいっちゃったのでしょうか。
 そう,金星は,夕方の空高く,ひときわ明るく,まるで孤独を楽しむかのように,4月1日の「東方最大離角」を目指して,輝いているのです。そして,その近くには天王星も寄り添っていることは,すでにブログに書きました。なお,海王星は水星と太陽の間にあって,3月22日は月よりさらに高度が低く,つまり太陽に近く,現在は望遠鏡を使っても,まったく見ることができません。
 次の日は新月なので,これで惑星と月を追いかける日々は終わりです。

☆ミミミ
今後は,明るくなるという前評判がどんどん高くなりつつあるアトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)を追いかけたいと思います。写真は3月23日に写したアトラス彗星ですが,すでにかなり明るくなって,尾も見えはじめました。

DSC_1627s (2)

◇◇◇

月と3惑星_20200319C_2019Y4_ATLAS_2020031990305729_1417867581733409_499265174788636672_n

 何がすばらしいかといって,明け方,太陽が昇る前の夜空ほどすばらしいものはほかにありません。それに比べたら,太陽が顔を出した後の世界は,たとえは悪いのですが,何か悪夢を見ているかのようです。特にこのごろは世界中が耐え難い不安に包まれています。
 今回とはまったく原因は違うのですが,リーマンショックのときの株価や為替の変動は,今とそっくりでした。あのときもまた,多くのマスコミや政治家やアナリスト,そして無責任なワイドショーのコメンテーターたちが言っていたことはまったくあたらず,冷静な少数の人たちの声なき声が語っていたように相場は動いていきました。おそらく今回もまた,そのときと同じ動きをするのでしょう。
 現在は,どんな対策を打ち出そうとそんなことには関係なく,まるで底なしの泥沼に土をくべていくような感じに思えます。であっても,多くの人が飽き飽きしてきたころになると,やっと入れていく土の量が泥を凌駕してすべてが解決するのです。そのころには,人々は今の危機的状況を忘れすっかりもとの生活に戻って,また,懲りもせず浮かれはじめるのです。
 私は,リーマンショックのとき,つくづくそう感じました。長く生きていると,世界はこんなことの繰り返しだということだけはわかってきました。

 さて,星空のお話です。
 明け方の空には,火星,木星,土星がずっといて,動きの速い -それは地球に近いからですが- 火星がほとんど位置のかわらない木星と土星の間を駆け抜けています。そして,火星よりもまたずっと動きの速い月がそれらを追い抜きながら,姿を変えていくので,それらの姿を毎日眺めていても,決して見飽きるものではありません。
 3月19日の早朝は,木星に接近した火星と,その間を縫って高度を下げた月が土星に接近して,月と3つの惑星を同時に写真に収める構図の写真が撮れるという状況になりました。
 月が昇るのは3時10分過ぎだったので,2時過ぎに東の空の開けた場所に向かいました。

 到着したときはまだ早く,月が昇るまで,アトラス彗星(C/2019 Y4 ATLAS)がM81,M82 銀河に接近しているというので,それを写しながら待ちました。
 やがて,東の空にいつの間にか月が姿を現しました。この朝はあまり大気が澄んでいなかったので,昇ったばかりの月は真っ赤で,その隣にあるはずの土星はなかなか肉眼では見えませんでした。20分くらい待って,月の高度が高くなると,土星も見えてきて,火星,木星,土星と3つの惑星と月,そして,背景に地上も入る角度の写真が写せるようになったときに撮ったのが,今日の1番目の写真です。
  ・・
 2番目の写真は,先に書いたアトラス彗星とM81,M82銀河を同時に収めた写真です。銀河を一緒に収めるために画角の広い180ミリ望遠レンズで写したので,彗星が暗くしか写っていないのが残念です。
 このアトラス彗星ですが,当初の予想からは大きくはずれ,3番目のグラフのように,このところの光度上昇の変化の度合いから,来月4月末には0等星,そして,5月末にはマイナス25等星といった,とんでもない予想がたちはじめました。おそらくそこまで明るくはならないでしょうが,久々の大彗星が見られるかも,といったうわさも聞こえはじめました。
 彗星は,軌道は決まれど,彗星本体がどれほどの大きさであってその組織がどうなっているかがわからないので,太陽に接近したときにどのくらい明るく輝くかという光度の予想は常に水モノです。多くの場合は期待外れに終わりますが,まれに大化けします。さて,今回はどうでしょうか?
 このまま順調にいけば,次第に太陽に近づいていって見えなくなる5月20日ごろまで,しだいに明るく大きくなっていって,北西の夕方の空に尾をひいた彗星が肉眼でも見られるようになることでしょう。

JrkfxsgLS2-g05E5-LyFTA


☆☆☆
次の写真は3月20日午前5時20分の東の空です。昨日とはうって変わって,とても澄んだ空でした。月齢は25.2。月の位置がずいぶん変わったことがわかるでしょう。地平線ぎりぎりには水星も昇ってきました。

DSC_4756n (2)s

金星と天王星_20200312s金星_海王星 _20170112C_2017T2_PanSTARRS_20200312

 コロナウィルス騒動が続いていますが,気がつけば3月,もう春です。そしてまた,3月も満月が過ぎて,星見の時期になってきました。
 私は人混みがきらいだし,スポーツジムもライブハウスも無縁で,誰も人がいない空の広い,そして暗い場所で星空を眺めるのがもっとも落ち着きます。しかし,こんなものが流行してしまうと海外旅行をする気にならないのだけが誤算です。
 現在,夕方の西の空に「宵の明星」とよばれる金星が高く輝やいています。実はその近くに天王星がいるのですが肉眼ではまず見えません。そこで,3月12日の夕刻は天気がよかったので,金星と天王星を同じ画面に収めようと,画角を調べてみると180ミリ望遠レンズなら一緒に撮ることができることがわかったので,そのレンズを持って,日没を待って写しにいきました。

 子供の頃,惑星の名前を「水・金・地・火・木・土。天・海・冥」と覚えました。今は冥王星は惑星の座から降りた(降ろされた)ので「水・金・地・火・木・土。天・海」です。
 これを英語では,
 My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas.
というように,惑星のスペリングの先頭の文字で覚えるのだそうです。ちなみに,
 水星=Mercury
 金星=Venus
 地球=Earth
 火星=Mars
 木星=Jupiter
 土星=Saturn
 天王星=Uranus
 海王星=Neptune
 冥王星=Pluto
です。しかし,冥王星を抜いてしまうと文書にならないので,新たな覚え方というのが発案されたそうです。
 それは,たとえば
 My Very Educated Mother Just Served Us Nachos.
 My Very Educated Mother Just Served Us Noodles.
の類ですが,最後の「Nine Pizzas」を別のモノに変えただけです。
 
 さて,水星から土星までは明るく,簡単に肉眼で見ることができるのですが,天王星と海王星は暗いので,簡単には探せません。とはいえ,天王星は意外と明るく,理屈では肉眼で見られないこともないのですが,海王星となるとお手上げです。たとえ,天王星や海王星を位置を調べて望遠鏡の視野に入れても,小さな望遠鏡では単に恒星のようにしか見えないので,それが天王星や海王星なのかはなかなか区別がつきません。そこで,金星が近くにあると,星の並びから容易に探しだせるというわけです。
 ということで,今日の1番目の写真は,この晩に写したものです。
 ちなみに,2017年1月12日に金星は海王星と接近しました。そのときに金星と海王星を同じ視野に入れて写したものが,今日の2番目の写真です。
  ・・
 この晩はこれで目的を果たしたので早々に帰ろうと思ったのですが,せっかくなので,機材を入れ替えて,いつもの望遠鏡でパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)も写してみました。それが3番目の写真です。この彗星は7月ごろまではまだ今よりも少し明るくなる予報なので,まだまだ写すことができます。
 また,この晩は写しませんでしたが,アトラス彗星(C/2019Y4 ATLAS)が5月ごろに,ずいぶんと明るくなるという予報が出ています。ひょっとしたら大化けするかもしれません!
 それに加えて,3月18日から19日にかけて,明け方の東の空に,火星と木星と土星,それに加えて月が大接近するので,今から楽しみです。午前3時30分ごろ,東の空が開けたところなら,3つの惑星と月が同じころに昇ってくる姿が見られます。晴れるといいなあ。

◇◇◇
私は,星を見ていると,もののスケールや時間のスケールがいつも気になりますが,多くの人はそういうことをほとんど考えません。たとえば,今流行しているコロナウィルスですが,愛知県で感染者が100人といっても,愛知県の人口は750万人あまりだから,感染者は7万人に1人。日本中では感染者が1,500人弱で日本の総人口は1億3,000万人弱なので,10万人に1人ほどです。これは,「年末ジャンボプチ」の1等1,000万円に当選するのと同じくらいの確率です。ちなみに,コロナウィルスほど騒がれませんが,2018年9月第1週から2019年2月第2週までのインフルエンザの累積予想患者数は10,448,891人(約1千万人)でした。
また,マスクを買うのに行列を作っていますが,私はこのご時世,人混みで行列を作っていることのほうがずっと危険だと思うのです。実際,マスクの目の大きさは約5μm,それに比べて,コロナウイルスの大きさは0.05μmから0.2μmで約50分の1ほどなので,マスクの目をすり抜けます。しかし,ほとんどの人は,こうしたことをまったく知りません。マスク洗って何度も使っているいる人,マスクを汚いポケットにしまったり,テーブルに置きっぱなしにして食事をしている人さえいます。屋外や車の中のように,マスクが必要でない場所で貴重なマスクを無駄遣いしている人もいます。さらに,マスクを顎に下げて,コロナウイルスよりよほど有害なタバコを吸っている人もいます。マスクを市販の布で自作している人もいますが,マスクはマフラーとは違います。目の粗い布で作っても,それは,形がマスクであるだけで,マスクの機能をみたさなけば意味がありません。それはたとえば,「倍率100倍の双眼鏡!」のような,双眼鏡の形をしているだけのマガイモノのようなものと同類です。
スギ花粉はマスクの目よりもずいぶん大きくて20μmなのでマスクで侵入を防げるのですが,正しくマスクを使わない人がマスクを買い占めることで,気の毒にも花粉症でマスクが本当に必要な人や,医療従事者のようにマスクの必要な人の手にゆきわたらないということにもなっています。
ちなみに,政治家など言わずもがな,「情報の信ぴょう性」を指導しなけらばならない教育者や「正しい情報の伝達」を最も重視しなけらばならない報道関係者でも,こんなことすら知らない人がいます。また,そうした人に限って,正しい使い方を知らず教えず単にマスクの着用をよびかけたりしているのは,「偏差値」の正しい意味も知らずに進路指導をする教師同様,きわめて嘆かわしい話です。
無題

このページのトップヘ