しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:やっと晴れた!秋2019

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 何度も何度も書いていますが,今年は本当に晴れません。10月は例年,大陸から移動性高気圧が周期的にやってきて,雲ひとつない夜に満天の星空が楽しめるので,今年も10月の新月のころ25日から26日にかけて長野県木曽駒高原に星を見にいくことにしていました。ところが太平洋岸を北上する台風21号が大雨を日本列島に連れてきて再び雨となりました。それでも何となく深夜になれば晴れるのでは,という淡い思いで,望遠鏡を車に積み込んで出発しました。
 夕方午後5時ごろ到着,やはり雨でした。
 夕食を終えた午後8時過ぎには雨は上がりましたが,一向に雲が切れません。ところが,午後10時を過ぎたころに,突然快晴となり,空には満天の星が輝いていました。

 車に望遠鏡を積んでは来たものの,まったく準備ができていませんでした。あたりは真っ暗で,慣れているとはいえ,望遠鏡を組み立てるのも大変でした。いろいろと手違いをしながら,それでもなんとか準備がすみました。そして,写したのが今日の写真です。
 まずは,彗星。先月,アフリカーノ彗星(C/2019W2 Africano),アサシン彗星(C/2018N2 ASASSN),シュワッスマンワハマン第1彗星(29P Schwassman-Wachmann),パンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)と写したのですが,そのとき,うっかり忘れていた彗星をねらっていました。それが,マクノート彗星(260P McNaught)です。12等星くらいですが,空も暗いので簡単に写ります。
 マクノート彗星は,オーストラリア・サイディング・スプリング天文台のマックノートさん(R.H.McNaught)が2005年5月20日に口径50センチメートルのウプサラ・シュミット望遠鏡で みずがめ座を撮影したサーベイ・フレーム上に17.3等星で発見したものです。2012年5月18日,チェコのMartin MasekさんががアルゼンチンのPierre Auger天文台の30センチメートル反射望遠鏡の遠隔操作で再び地球に接近した17.5等星の彗星を検出し回帰が確認されたことから,260Pという周期彗星の確定番号が付けられました。周期は7.07年です。

 これで思いは遂げたので,この暗い空ならどのくらい写るものだろうかと,ついでにM45を写しました。前回の写真と比べてみてください。
 そのあとは,新たに購入したキヤノンの天体撮影用の改造カメラに35ミリレンズをつけて,試し撮りをしました。それが,2番目から4番目のまでのカシオペア座,オリオン座,ぎょしゃ座の星野写真です。まだまだ調整が必要ですが,次回オーストラリアに行くまでには使いこなせるようにしておきたいと思っています。
 このように,今回は,準備不足でしたが,奇跡的に快晴となって,満天の星空を堪能できました。また,極大期を過ぎたオリオン座流星群の流れ星が時折飛んで,すばらしい星空にさらに彩を与えました。午前1時過ぎに終了して寝ましたが,翌朝はすっかり曇っていたので,私が星を見た数時間だけ晴れたようです。昨晩のことは夢のような気がしました。

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☆☆☆☆☆☆
 以前書いたことがありますが,日本は空が明るく水蒸気が多く,満足な星空は望めません。そこで,多くの愛好家はお金と時間をかけて,高級な機材を使いコンピュータを駆使して写真を仕上げます。
 私は,所詮,趣味というのは自己満足と割り切って,お金をかけて高い機材を買う気にもならず,30年前に買った古い望遠鏡で満足しています。そのお金でオーストラリアに出かけて美しい星空を見るほうがいいと思っているからです。コンピュータを使った画像処理も凝ったことがあるのですが,時間ばかりがかかるので,そんなことに手間暇かけるなら,旅行をしたほうがいいと思っているので,それもしません。
 晴れた晩に,往復約2時間,そして現地で2時間ほど,つまり合計4時間ほどかけて出かけて,10等星より明るい彗星を2分の露出で写したり,満天の星空とはいえなくても,双眼鏡で星雲や星団を眺めることに楽しみを絞っています。

 しかし,そんな明るい夜空でも,私が思っているよりも暗い彗星が写せるようです。便利な時代になったものです。
 今日の1番目の写真はこの日試しに写した散開星団「プレアデス」(Open cluster ”Pleiades” M45)ですが,この写真でも14等星くらいまで写っています。そこで,これからはどのくらい暗い彗星まで写せるかを試してみようかなと思うようになりました。
 そんなわけで,この晩は,アフリカーノ彗星以外に,10等星よりも少し暗い彗星がいくつか地平線上にあったので,それらを順に写してみることにしました。
 2番目写真がアサシン彗星(C/2018N2 ASASSN)です。アサシン彗星は,2018年7月11日,ASASSN(All-Sky Automated Survey for Supernovae)プロジェクトで,南アメリカ・チリのセロロ・トロロ(Cerro Tololo)天文台にあるカシアス(Cassius)14センチメートルの探査ユニット=3番目の写真 で発見したものです。
 4番目の写真がシュワッスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassman-Wachmann)です。シュワスマン・ワハマン第1彗星は1927年11月15日にドイツ・ベルゲドルフ(Bergedorf)のハンブルク天文台(Hamburger Sternwarte)のアルノルト・シュヴァスマン(Arnold Schwassmann) とアルノ・ヴァハマン (Arno Arthur Wachmann)が発見した公転周期14.7年の周期彗星です。 シュワスマン・ワハマン第1彗星は,ふだんは16等星ほどの暗い彗星ですが,突然アウトバーストを起こして12等星くらいまで明るくなることで知られています。アウトバーストは頻繁に起きて,1,2週間で16等星に戻ります。これまで,最大で19等級から9等級まで変化したことがあるといいます。アウトバーストは揮発性物質が爆発的に蒸発して起こると推測されていますが詳しいことは不明です。
 そして,5番目の写真がパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)です。パンスターズ彗星は2017年10月2日,ハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)にある1.8メートルPan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。

 パンスターズ彗星はおうし座にあるので昇ってくるのが遅く,写すことができるまで少し時間があったので,その時間を利用して,みずがめ座とくじら座のふたつの惑星状星雲 NGC7293=6番目の写真 と NGC246=7番目の写真 を写しました。
 惑星状星雲は美しいのですが,小さいので,私の持っているような小さな望遠鏡ではなかなかうまく写りませんが,この写真のように,けっこうマシに写すことができました。
 NGC7293 通称らせん星雲(The Helix Nebula)は,みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。距離は約700光年で,太陽系に最も近い惑星状星雲のひとつです。猫のような目の形をしている中心部が「らせん」の名前の由来ですが,最近の研究ではその周囲に淡い環状のガスが広がっていることがわかっています。全体の大きさは満月の約半分くらいまで広がっているという大きなもので,中心部に白色矮星が存在します。
 NGC246は,くじら座にある淡い惑星状星雲です。こちらは地球から約1,600光年離れています。星雲の中心の恒星は12等級の白色矮星です。中心の恒星とその周囲の配置から,この星雲はカシオペヤ座にある NGC 281 とともに,「パックマン星雲」( Pac-Man Nebula) というニックネームがあります。
 「パックマン」(Pac-Man)というのは,ナムコ(後のバンダイナムコ)より1980年に発表されたアーケードゲームのタイトルでキャラクターのことです。

  ・・・・・・
 ずっと天気がよくなくて,半年以上,日本では満足のいく星空を見る機会がなかったのですが,この晩はめずらしくずっと晴れていて,しかも,寒くも暑くもなく,最高の晩になりました。
 それにしても,こんな晩も1日だけ,また次の日からは曇り空,しかも,10月だというのに台風が接近するとあっては,またしばらく星空を見ることもできません。そのうちに冬になってしまうことでしょう。冬もまた,以前は太平洋岸は快晴の日が続いたものですが,今は,日本海側のような天候が多く,満足のいく星空を見る機会が少なくなってしまいました。

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 2019年は本当に晴れません。お昼間に太陽が雲の間からのぞいていることはあるから,一般の人に実感はないでしょうが,これほど星の見えない年を私は知りません。わずかばかり雲のない夜もあったのですが,そうした日に限って月が明るかったりで,月明かりのない夜に晴れ渡ったことがまったくないのです。これでは,日本にある天文台は仕事ができないでしょう。日本しか知らなかったころはこんなものかと思っていたのですが,ハワイやオーストラリアに出かけるようになると,日本の条件の悪さを実感します。
 そんな日本でも秋は唯一,気候が安定して,空が晴れ渡る季節です。しかし,今年は秋になっても,空が晴れ渡る要因となる移動性の高気圧が日本列島を横切る,その通り道が通常よりも少し北側なので,高気圧の南側には雲がでてきてしまうのです。
 そんな晩が続き,10月もついに新月が終わり,せっかく,久々に10等星よりも明るい新彗星アフリカーノが地球に接近したというのにその最盛期も過ぎてしまい,ついに,これを見ることもないのかなあとあきらめていた10月4日,ついに晴れました。私は,この晩を逃せばもう見る機会がないと,ひさびさに星見に出かけました。

 私の住むところは,もう,星は2等星までしか見えません。何時間もかけて遠出をすればそれでもマシな星空が見られるのでしょうが,そんな時間をかける気にもなりません。そこで,北の空の星空が見たければ1時間ほど北に,南の空の星空が見たければ1時間ほど南に走って,街灯のない,なんとかかろじて天の川が見られる場所に出かけることにしています。
 アフリカーノ彗星はほんの少し前は北東の空に見ることができたのですが,出かけるまえに調べてみると,どんどんと位置を変えて,今はもう南西の空! これにはびっくりしましたが,そこで,南に向かって走りました。
 到着して望遠鏡を構え,ファインダーをのぞくと彗星の位置はすぐにわかりましたが,もう月齢が6まで達してしまっているので,明るい夜空はさらに明るく,月が沈むのは午後10時ころ,それまで待って,写真を撮りました。

 アフリカーノ彗星(C/2019W2 Africano)は,2018年年11月27日,アメリカのグレーラー(H. Groeller)さんが Catalina スカイサーベイプロジェクトで,アリゾナ州のレモン山のすぐ東にあるビゲロー山にある68センチメートルシュミット望遠鏡=2番目の写真 を使って18.2等星として,また,アメリカのアフリカーノ(B. M. Africano)さんがレモン山天文台にある1.5メートルの反射望遠鏡=3番目の写真 で18.3等星としてCCD画像から独立して発見した彗星です。レモン山天文台(Mount Lemmon Infrared Observatory )はサンタ・カタリーナ山地のコロナド国立森林内,アリゾナ大学の北約73キロメートル,海抜2,800メートルのレモン山の頂上にあります。アメリカ航空宇宙防衛司令部のレーダー基地であったのをハイテク赤外線天文台に変換したものです。こうしたプロジェクトで利用する望遠鏡は天文学の研究というよりもむしろ地球に接近する天体を探すという目的で運用するものなので,根本的な性格が異なります。
 NASAのJPLは組織的な地球接近天体捜索を行っていて,これまでにも多数の小惑星や彗星を発見しています。彗星は発見された人の名前をつけるのですが,この頃はスカイサーベイプロジェクトで発見されたものはプロジェクト名がつけられることが多くなりました。しかし,このプロジェクトでは,クレジットは原則として観測者に与えるというアリゾナ大学チームの方針から,自動捜索で小惑星として初期報告された天体を除き,天文台内で発見した個人名がつけられています。
 今回の発見は,グレーラーさんが最初に発見したのですが,アフリカーノさんの方が21分ほど早く天体を通報し,グレーラーさんの通報が到着する前にこの天体が小惑星センターの NEOCP ウェブページに掲載したので,アフリカーノさんの名まえだけが彗星につきました。

 現在,アフリカーノ彗星は太陽に接近していて,これまではちょうど地球も彗星に向かって軌道を進んできたので,地球から見た彗星はあまり位置を変えず太陽と反対側に見れらたのですが,数日前,彗星が地球軌道を越え,さらに,地球も彗星とすれ違うような形で遠ざかる位置になったので,急に見かけ上の移動が速くなりました。この先,彗星は太陽に接近するのですが,地球からは遠ざかり,彗星が太陽の方向になるので見えなくなります=4番目の写真。先週くらいが最も明るく見ることができたようですが,今後は暗くなります。ということで,何とかラストチャンスでとらえることができました。
 家に帰ってから写した写真を見てみると,今日の4番目から6番目写真のようにわずか数十分で星の間を縫うように動いている様を見ることができて,大変おどろきました。

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 この晩は,ほかにも暗い彗星をいくつか写すことができました。その話題はまた後日書きます。

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