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 プロのカメラマンでもない私は,単に趣味として写真楽しんでいるだけですが,それでも,昔からカメラというものにたいそう興味がありました。
 家には山ほどカメラがありますし,ずいぶんと長く人間をやっていると,カメラの歴史についても詳しくなります。
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 カメラは,昔,ドイツのライカに代表される距離計連動式のものでしたが,家1軒買えるほどの値段でした。やがて,1960年ごろ,日本で一眼レフカメラが実用化されて以来,それがカメラの標準形となって,ドイツに変わって日本のメーカーが世界を君臨するようになりました。
 やがて,オートフォーカスという技術が開発されました。今となっては当たり前ですが,カメラがピントを自由に合わせてくれるようになったのは,その当時は驚きでした。そして,その次がディジタルカメラで,フィルムというものがほとんど姿を消しました。
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 こうした新しい技術が開発されるたびに,それぞれのメーカーは,それに見合う製品の開発が急務となり,失敗したメーカーは生き残れず姿を消していきました。生き残ったメーカーは,それそれ,どのようにして新しい技術を採り入れた製品を開発して生き残って来たかを思い起こすと,その会社ごとの遺伝子のようなものがよくわかって興味深いものです。

 そんな経緯をたどって進化したカメラですが,現在は,ソニーが先頭を走るミラーレス一眼の人気が,今までの一眼レフカメラに変わろうとしています。そこで,今回もまた,それに乗り遅れんと,ニコンやキヤノンといったメーカーも新製品の開発をはじめました。
 ただし,これまでの技術革新と決定的に違うのは,スマホの台頭で,カメラ自身の存在が脅かされているということです。つまり,これまでと同じような方法で新しい技術を採りいれた新製品を開発しても,そもそもカメラ自体の存在が危うくなってしまっているので,これから先,生き残れるかどうかはわからないということです。
 ミラーレス一眼というのは,車でいえば,これまでのガソリンエンジンの車から電気自動車に変わるようなものと同じでしょう。しかし,車の場合は車という存在自体は今はまだ脅かされていません。

 そんな折,ニコンから新しいミラーレス一眼カメラ「ニコンZ50」が発表されました。ニコンZ6,ニコンZ7といったミラーレス一眼を発売したころにはまだ定かでなかったこの会社の将来展望が,この製品で明らかになってきました。おそらくは,フィルムからディジタルに変わったときと同じように,この会社は,これまでの一眼レフカメラを,プロ用の高級機以外は潔く切り捨てて,製品のほとんどをミラーレス一眼に切り変えようとしているのでしょう。しかし,カメラ本体もレンズも一眼レフカメラと比べるとかなり割高な価格設定ですし,価格の割に期待したほどでもないようです。こんなんで,果たしてうまくいくでしょうか? 
 私は,あと10歳若かったら,この状況に熱くなって,新しい製品に買い替えることを考えたかもしれません。しかし,今は,これまでに手に入れた機材を売り払ってまで新しいカメラに買い変える気持ちにはまったくならないのです。それは,歳をとったせいもありますが,そうまでして価格の高いミラーレス一眼カメラのシステムに変えるほどの魅力を感じないからです。
 そもそも,これまでの一眼レフカメラも新しいミラーレス一眼カメラも,旅行に持っていくには大きく重すぎます。性能の進化した現在のスマホで十分なのです。その一方,従来のように,写真を楽しむ目的で外出したり小旅行をするのなら,今使っているカメラで何の不満もないからです。特に,星の写真を写すには,どんな高性能のカメラであっても,私が使っている天体用にIR改造されたカメラに比べたら使いモノにならないから,食指が動きません。

 私は,ニコンZ50が発表された奇しくもその日に,新しいカメラを手に入れました。それは,天体撮影用にIR改造されたキヤノンの小型一眼レフカメラキヤノンEOSkissX9です。これまでに使っていた天体撮影用にIR改造されたキヤノンEOSkissX8i が古くなったのでその後継として購入したものです。
 通常,ディジタルカメラは撮像センサーのカラーバランスを調整するために色調整フィルターを内蔵させていますが,この色調整フィルターを赤外域まで透過するクリアフィルターに交換することで,赤く輝く散光星雲などから放たれるスペクトル領域(Hα領域)の感度がアップし,色彩豊かな美しい天体写真が撮れるようになります。これがIR改造です。改造カメラといっても,ホワイトバランスを調整すれば一般の撮影にも十分に使えます。EOSkissX9なら小さく軽いので海外に持っていくにも小型の赤道儀に載せるにも便利だし,それに安価だし,私には,このカメラのほうがニコンZ50よりずっと魅力的です。
 ニコンZ50の発表された次の日,ニコンのサービスセンターに立ち寄ったので,はやばやとニコンZ50に触れる機会がありました。ニコンZ50は,私の求める[モバイルバッテリーで充電しながら使用できて(とサービスセンターで言われたのですが,どうやらそれは間違いでした),Bluetoothで簡単にスマホと連動できる]といった機能がついた魅力的なカメラではありました。しかし,これだけでは使えません。こうした機能に加えて,さらに[三脚座のない現行よりも小さなマウントアダプターnewFTZ]と,発表されたレンズのロードマップにも記載されている[18ミリから140ミリのズームレンズ]ができるだけ小さくて軽いものであること,そして,これがもっとも私には重要ですが,[天体撮影用にIR改造されたもの]が条件です。そうした条件を満たす,いわゆる「ニコンZ50A」が発売されるなら,そのときにやっと,私はこのカメラを欲しいと思うのになあと残念に思ったことでした。

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