しない・させない・させられない

Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.

USA50州・MLB30球場を制覇し,南天・皆既日食・オーロラの3大願望を達成した不良老人の日記

タグ:NGC246

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☆☆☆☆☆☆
 以前書いたことがありますが,日本は空が明るく水蒸気が多く,満足な星空は望めません。そこで,多くの愛好家はお金と時間をかけて,高級な機材を使いコンピュータを駆使して写真を仕上げます。
 私は,所詮,趣味というのは自己満足と割り切って,お金をかけて高い機材を買う気にもならず,30年前に買った古い望遠鏡で満足しています。そのお金でオーストラリアに出かけて美しい星空を見るほうがいいと思っているからです。コンピュータを使った画像処理も凝ったことがあるのですが,時間ばかりがかかるので,そんなことに手間暇かけるなら,旅行をしたほうがいいと思っているので,それもしません。
 晴れた晩に,往復約2時間,そして現地で2時間ほど,つまり合計4時間ほどかけて出かけて,10等星より明るい彗星を2分の露出で写したり,満天の星空とはいえなくても,双眼鏡で星雲や星団を眺めることに楽しみを絞っています。

 しかし,そんな明るい夜空でも,私が思っているよりも暗い彗星が写せるようです。便利な時代になったものです。
 今日の1番目の写真はこの日試しに写した散開星団「プレアデス」(Open cluster ”Pleiades” M45)ですが,この写真でも14等星くらいまで写っています。そこで,これからはどのくらい暗い彗星まで写せるかを試してみようかなと思うようになりました。
 そんなわけで,この晩は,アフリカーノ彗星以外に,10等星よりも少し暗い彗星がいくつか地平線上にあったので,それらを順に写してみることにしました。
 2番目写真がアサシン彗星(C/2018N2 ASASSN)です。アサシン彗星は,2018年7月11日,ASASSN(All-Sky Automated Survey for Supernovae)プロジェクトで,南アメリカ・チリのセロロ・トロロ(Cerro Tololo)天文台にあるカシアス(Cassius)14センチメートルの探査ユニット=3番目の写真 で発見したものです。
 4番目の写真がシュワッスマン・ワハマン第1彗星(29P Schwassman-Wachmann)です。シュワスマン・ワハマン第1彗星は1927年11月15日にドイツ・ベルゲドルフ(Bergedorf)のハンブルク天文台(Hamburger Sternwarte)のアルノルト・シュヴァスマン(Arnold Schwassmann) とアルノ・ヴァハマン (Arno Arthur Wachmann)が発見した公転周期14.7年の周期彗星です。 シュワスマン・ワハマン第1彗星は,ふだんは16等星ほどの暗い彗星ですが,突然アウトバーストを起こして12等星くらいまで明るくなることで知られています。アウトバーストは頻繁に起きて,1,2週間で16等星に戻ります。これまで,最大で19等級から9等級まで変化したことがあるといいます。アウトバーストは揮発性物質が爆発的に蒸発して起こると推測されていますが詳しいことは不明です。
 そして,5番目の写真がパンスターズ彗星(C/2017T2 PanSTARRS)です。パンスターズ彗星は2017年10月2日,ハワイ・マウイ島のハレアカラ(Haleakala)にある1.8メートルPan-STARRS1望遠鏡で写したCCDの画像から発見されたものです。

 パンスターズ彗星はおうし座にあるので昇ってくるのが遅く,写すことができるまで少し時間があったので,その時間を利用して,みずがめ座とくじら座のふたつの惑星状星雲 NGC7293=6番目の写真 と NGC246=7番目の写真 を写しました。
 惑星状星雲は美しいのですが,小さいので,私の持っているような小さな望遠鏡ではなかなかうまく写りませんが,この写真のように,けっこうマシに写すことができました。
 NGC7293 通称らせん星雲(The Helix Nebula)は,みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。距離は約700光年で,太陽系に最も近い惑星状星雲のひとつです。猫のような目の形をしている中心部が「らせん」の名前の由来ですが,最近の研究ではその周囲に淡い環状のガスが広がっていることがわかっています。全体の大きさは満月の約半分くらいまで広がっているという大きなもので,中心部に白色矮星が存在します。
 NGC246は,くじら座にある淡い惑星状星雲です。こちらは地球から約1,600光年離れています。星雲の中心の恒星は12等級の白色矮星です。中心の恒星とその周囲の配置から,この星雲はカシオペヤ座にある NGC 281 とともに,「パックマン星雲」( Pac-Man Nebula) というニックネームがあります。
 「パックマン」(Pac-Man)というのは,ナムコ(後のバンダイナムコ)より1980年に発表されたアーケードゲームのタイトルでキャラクターのことです。

  ・・・・・・
 ずっと天気がよくなくて,半年以上,日本では満足のいく星空を見る機会がなかったのですが,この晩はめずらしくずっと晴れていて,しかも,寒くも暑くもなく,最高の晩になりました。
 それにしても,こんな晩も1日だけ,また次の日からは曇り空,しかも,10月だというのに台風が接近するとあっては,またしばらく星空を見ることもできません。そのうちに冬になってしまうことでしょう。冬もまた,以前は太平洋岸は快晴の日が続いたものですが,今は,日本海側のような天候が多く,満足のいく星空を見る機会が少なくなってしまいました。

DSC_1296s (2)_NGC7293DSC_1302s (2)_NGC246DSC_1304_NGC247t (1280x848)DSC_1323s (3)_NGC253 NGC288 秋の南の夜空はまことに寂しいものです。やがて来る冬にはオリオン座をはじめとして明るい星々がたくさんあるのに,その数か月前の空には星がほとんど見られないのです。空の明るい都会ではみなみのうお座の1等星であるフォーマルハウトだけがかろうじて見えるありさまです。
 秋の星座になじみがないのは,明るい星がないということに加えて,秋の星座が深夜に南中してよく見えるのがちょうど夏至のころという理由もあります。つまり,夏至のころは夜の時間が短く,空が暗い時間は冬に比べて半分ほどしかないのです。
 そこで,私は,秋の星座といわれるみずがめ座,みなみのうお座,うお座,くじら座,ちょうこくしつ座にある星雲や星団を写す機会もこれまでほとんどありませんでした。
 今回出かけた木曽は空が暗いので,夜遅くならなくても満天の星空がみられます。あれほど都会では何も星が見えないと思われるところにも,たくさんの星々が輝いています。みずがめ座の星のつながりがわかるなんて,私には夢のようです。そこで,秋の星座にある多くの星雲や星団を写すことにしました。それが今日の写真です。
 順に紹介しましょう。
 
 まず,ふたつの惑星状星雲です。
 1番目の写真の天体が「らせん状星雲」(The Helix Nebula)と呼ばれるNGC7293,みずがめ座にある有名な惑星状星雲です。距離はおよそ700光年というからオリオン座のべテルギウス(Betelgeuse)ほどの近さで,太陽系に最も近い惑星状星雲です。猫のような目の形をしている中心部が「らせん」の名前の由来になっています。中心部に白色矮星が存在するようです。私はこの惑星状星雲をずっと写したかったのですが,やっとかないました。
 2番目の写真の天体はNGC246です。NGC246はくじら座の方角にある惑星状星雲で,距離は約1,600光年です。星雲の中心には12等級の白色矮星があります。中心の恒星とその周囲の配置から「Pac-Man Nebula」として知られています。
 こちらのほうはNGC7293に比べればずっと暗く,この空が暗くないと写すのも難しい天体です。

 次にふたつの銀河です。
 3番目の写真の銀河がNGC247です。NGC247はくじら座にあって,距離は約1,110万光年。ちなみにアンドロメダ銀河は240万光年です。
 最後の4番目の写真に写っている銀河がNG253で,その下にある球状星団がNGC288です。
 NGC 253はちょうこくしつ座にあるスターバースト銀河で,急激な星形成の過程にあります。距離はNGC247とほぼ同じで約1,110万光年です。
 NGC247はNGC253と重力的に結びついていて,NGC253は銀河系から最も近い銀河群のひとつであるちょうこくしつ座銀河群の中心に位置しています。NGC253 はその中で最も明るく,NGC247,PGC2881,PGC2933,UGCA15などと重力で結びついています。
 
 このように,このあたりにはおもしろい天体があるのですが,メシエ番号もついていないので,知名度も低く,はじめに書いたように,夜の短い時期に空にあるので,なかかな写真に撮る機会もありません。
 今回,こうした天体を写すことができたのものまた,うれしいことでした。

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