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今年もあとわずか。新聞の読書欄には,毎週の書評にかわって,「この1年に出会った本」という特集が載っていて,書評委員さんたちが3冊ずつ本をあげています。
毎年思うのですが,これらの本の題名をみても,まず,私が読んだものは存在しないし,おもしろそうなものはないし,何を目的にこうした特集をするのだろうといつも思います。それぞれの書評委員さんのプライドをひけらかすだけのようなものなのでしょうか。
常々思うのですが,新聞の読書欄というのは,どういう読者を想定して本を選んでいるのか,私にはよくわかりません。専門書の紹介は一般紙にはそぐわないし…。それとは逆に,近所の本屋さんに行くと,置いてあるのは啓蒙書や新書,そして,雑誌ばかりで,私にはおもしろそうな本などほとんどありません。
新書の類はすでに知っている内容ばかりだし,雑誌に至っては,いまやネットの方が情報が早く,時間つぶし以外に何の役にもたたず,お金を出してまで買いたいと思うものはほとんど見つかりません。雑誌というのは広告料で儲けているだけのカタログ誌なのでしょう。
啓蒙書は,近年のNHKEテレと同じような,庶民をバカにしたような程度のものばかりです。本来,啓蒙書に書かれているような知識は,日本では中学校や高等学校といった中等教育が担うものなのでしょうが,この国の中等教育は,受験術と人間のランク付け以外には何もしていないから,まったく知識は身につかず,知的好奇心は育っていないので,こういう本があふれることになってしまうのでしょう。
とまあ,年寄りの愚痴はともかく,自分への記録という意味で,私のこの1年に出会った本から3冊,ここに書いておくことにします。
1冊目は,講談社ブルーバックスの「宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト」。
私は,この本を真剣に3回も読み直しました。ガンマ線バーストの正体は,残念ながら,結局,極超新星,つまり,超大質量の恒星が一生を終える時に極超新星となって爆発してブラックホールが形成されるときに起きるものである,というくらいのことしかわかっていなくて,それを1冊にするために,変に推理小説のように書かれていて説明が回りくどかったりしたのが,この本を3回も読むことになってしまった理由です。でも,おもしろい本でした。
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2冊目は,技術評論社の知の扉シリーズから「素粒子論はなぜわかりにくいのか」。
きっと,この本に書かれた解釈は,専門的に言えばかなり大胆なのでしょう。つまり,厳密さに欠け,危ういのです。であるからこそ,これまで専門書に書かれていたことが腑に落ちない人にはよくわかるのです。私にとって最も収穫だったのは,朝永振一郎さんの繰り込み理論というものがやっとどういうことか納得できた,という点にありました。それにしても,理論物理学というのは,結局のところ,何も語ってはくれない,というのが,私が長年勉強しての結論です。自然界には4つの力がある,といわれても,では,力ってそもそも何か? という疑問になっていくので,最後はわかるというより,より疑問が増えてくる,つまり,人間のもっている認識そのものが理解の限界になってしまうのです。
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そして,3冊目は,東京書籍の「はるかなる野球大国をたずねて」。
この本のことはすでに書きましたが,読みごたえあるすてきな本でした。
今年は,読書をしたこと以外にも,随分と星も見たし,旅行もしたし,そんなわけで,昔から疑問に思っていたことが解決できたり,できなかったことがいろいろと達成できたりした実り多き1年になりました。