●古きよきヒストリック・ルート66●
ヒストリック・ルート66は,イリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結んでいた全長3,755キロメートルにわたる大陸横断をする旧国道で,1926年に指定された。
インターステイツ網の発達によってその役目を終えて1985年に廃線となったが,今なお,映画や小説,音楽などに多く登場し,古きよきアメリカの「マザーロード」となっている。
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廃線後は場所によって道路は様々な形に転用された。
沿道の多くの都市では,道路はインターステイツを補完する通勤道路となったり,州道,郡道,市町村道あるいは私道となった。
また,道路としては完全に使われなくなった部分や,橋で寸断されてしまったところ,インターステイツに吸収されてしまったところもある。
その一方,ミズーリ州スプリングフィールドとオクラホマ州タルサ間のように,そのままの形で保存されている部分も数多く存在する。
現在でも,80パーセント以上は車でたどることができるし,各地で保存運動もあって,古きよきアメリカをたどるために,多くの観光客がやってくるのだ。
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この「66」という数字が,州道に同じ番号で引き継がれている場合もある。特に,ここオクラホマ州では,州道66がヒストリック・ルート66であったり,あるいは,それに近いところを通っている。それに並走するインターステイツ44がターンパイク(有料道路)なので,今でも,州道66は,そのバイパスとしての役割を果たしている。
いわば,日本の旧東海道が現在の国道1号に吸収されたり,あるいは,並走して走っているのと同じである。
日本で旧東海道を歩くことが流行しているように,アメリカを旅する人たちには,このヒストリック・ルート66はあこがれの対象である。
そして,私も含めて,66歳になったら,この道路を走破しようと決めている人も数多い。
特に,オクラホマ州は,このヒストリック・ルート66を南西のテキサス州との州境から北東のカンザス州の州境まで,今もなお,ほぼ,昔と同じ経路で走破できるのだ。
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オクラホマシティの市街地には,私が目にしたようにヒストリック・ルート66の道路標示があったから,予習もせず,詳しい地図も持たない私でも,容易にその道がたどれるものだと思っていたのだが,さに非ず,私は,すぐに道に迷ってしまった。
幸い,簡単な経路が書かれた小冊子を手に入れることができたので,それを手がかりに,なんとかそれらしき道を見つけることができたので,ともかく,オクラホマシティのひとつ西の町 -いわば「宿場町」- であるエル・リーノ(El Reno)まで走ってみることにした。
私は,迷いながらも,オクラホマ州議会議事堂から放射線状に走る道路を西に走って,どうにかオクラホマシティの市街地を抜けた。
すると,インターステイツ40に添うようにして,現代の州道66が走っていたが,このときの私は,まだ,この「66」という数字が,ヒストリック・ルート66と関係があるのかないのかさえ知らなかった。もし,関係があるのなら,それは粋な計らいだと思った。
片側2車線もある広い州道66をそのまま走っていくと,その途中に「ヒストリック・ルート66はこちら」という矢印のある道路標示を見つけることができたので,私はそれが指し示す方向に進路を変えた。
そこは片側1車線の古い道路で,これこそ,正真正銘のヒストリック・ルート66であった。
やがて,その先に古い橋がかかっていた。これこそ,当時のままの橋だろうと感慨深くなった。それを車で渡ってさらに走って行くと,やがて,その古い道路は,再び,先ほどの州道66と合流した。
そのままさらに走っていくと,今度は,アメリカの小さな町の特徴である給水塔がその先に見られた。給水塔には「ELRENO」と書かれていた。
ここがエル・リーノ(El Reno)という町であった。広くもない町に入っていくと,道路が分かれて,その1本は現在の州道66のメインロードで,もう一本がヒストリック・ルート66のメインロードであった。そして,ヒストリック・ルート66のメイン・ロードに沿って,古き良きアメリカの街並みが続いていたのだった。
私は,この旅のカンザス州とオクラホマ州の記憶がごっちゃになってしまっていたのだが,この文章を書きながら,オクラホマ州のことをはっきりと思い出すことができた。
オクラホマ州で思い出したのは,さほど見どころのなかったダウンタウンとさびれた州議会議事堂の周辺,そして,次回触れることになる夕食にも事欠いた出来事だったのだが,それと共に思い出したのが,古き良き哀愁に包まれた,このヒストリック・ルート66なのであった。
このふたつの異なったイメージが同じオクラホマ州のものであるとは,今でもなかなか結びつかないのだが,将来,きっと,私は,カンザス州にはもう自分の意志で行くことはないと思うけれど,このヒストリック・ルート66という魅力のために,オクラホマ州には,再び,足を運ぶことになるであろう。
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I wish you are a Happy Halloween 2015.