西の空にある沈みゆく3個の彗星を写し終えたので,今度は天頂付近に望遠鏡の視野を移し,別の3個の彗星をねらいました。
新たな3個の彗星は,アトラス彗星(C/2019L3 ATLAS),フェイ彗星(4P Faye),そして,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)という,これまでに何度も写してきた彗星です。
こちらはこれから高度が高くなるので時間に追われることもなく,いささかのんびりムードでした。この中で,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が明るくなって,長いダストの尾を見せているという情報だったので期待しました。
まず,最も探しやすいアトラス彗星からです。場所はふたご座α星「カストル」の近くです。
●アトラス彗星(C/2019L3 ATLAS)
これまでに何度も書きましたが,アトラスというのは小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS=Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)のことです。この観測プロジェックはハワイ・マウイ島のハレアカラ (ATLAS-HKO)とハワイ島のマウナロア (ATLAS-MLO)に設置した口径0.5メートルのふたつの望遠鏡を使って,地球近傍小天体が地球に衝突する数週間から数日前に検出するために最適化されたロボット掃天観測システムで,これによって発見された彗星です。
今回も簡単に写すことができました。
次がフェイ彗星です。場所はふたご座の隣のいっかくじゅう座です。この時期,このあたりに見られるオリオン座やおおいぬ座などの冬の星座がきれいです。
●フェイ彗星(4P Faye)
フェイ彗星は1843年にエルヴェ・フェイ(Hervé Auguste Étienne Albans Faye)によってパリ王立天文台で発見された周期7.54年の周期彗星です。
この彗星,何度写しても私は苦手で,なかなかうまく写ってくれません。今回は楽勝モードだったのですが,写した写真を何度確認しても,彗星が特定できません。また,このあたりは天の川銀河で,ものすごく星が多いのです。自宅に帰ってから確認すると,どうやら9等星の恒星とほぼ重なってしまっていたようです。いずれにしても,この10等星から12等星という明るさの彗星は,等級と写り方が彗星によってまちまちで,写してみなければわからないものです。
さあ,最後が,今日最も期待していたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星だったのですが,少しでも高度が高くなるまでと最後にしてありました。この晩は天気が回復基調だったのですっかり安心していたのですが,天気予報に反して,次第に東の空低いところから雲が出てきて,焦りました。
それでも,なんとか写すことができました。長い尾があって,みごとでした。
●チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P Churyumov-Gerasimenko)
これも何度も書いているのですが,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は,1969年にクリム・チュリュモフ(Klim Ivanovich Churyumov)とスヴェトラナ・ゲラシメンコ(Svetlana Ivanovna Gerasimenko)によって発見された周期6.57年の周期彗星です。
2014年,ヨーロッパ宇宙気候が探査機「ロゼッタ」を送り込んだこの彗星は,撮影した画像から,ふたつの彗星がゆっくりとぶつかってそのまま結合したような2重の構造を持つアヒルのオモチャのような奇妙な形状をしていることがわかりました。この彗星がそれなのか,と思うと,特別な感慨があります。
これで終了です。
2021年12月28日が終わるころ帰宅したら,すでに空一面雲で覆われていました。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは