######
先日,2022年4月27日,NHKBSPで「ヨーロッパ発駅ロマン-フィンランド・ヘルシンキ」が放送されました。フィンランドの首都ヘルシンキの中央駅を舞台としたさまざまな物語です。私は,2018年2月と2019年8月にフィンランドに行きました。2018年の2月に行ったのは,北極圏近くのロヴァニエミでしたが,2019年8月は,この番組に出てきたヘルシンキ中央駅近くのホテルに宿泊したので,とても懐かしく番組をみることができました。ただし,私がヘルシンキに行ったのは夏で,番組で出てきたヘルシンキは冬でした。
フィンランド中央駅が作られたのは1919年なので,今から100年以上も前のことです。私が子供のころの名古屋駅などとよく似た感じで,懐かしい気持ちがしたものです。その後,日本の駅舎はどこも近代的な外観となりました。しかし,その内部も最新かといえば,疑問符がつきます。それに比べて,ヘルシンキ中央駅は,駅の外観は古くても,チケットの販売機などは完全に自動化され,最新設備となっていたのは,ウィーンの国立歌劇場同様でした。こうしたことが,ヨーロッパの文化の豊かさと奥深さで,伝統を大切にしながらも,日本よりもずっと先進性をとり入れ利便性を兼ね備えたヨーロッパというところの優秀性を私は感じました。また,改札口がないので,だれでもホームに行くことができます。
この駅から,フィンランドの各地に多くの列車が発着しています。
番組でも紹介していましたが,ヘルシンキのヴァンター国際空港にも,ヘルシンキ中央駅から直接行くことができて,とても便利です。
私がこの駅で特に印象に残っているのは,フィンランドの北,北極圏の町ロヴァニエミまで行く寝台列車サンタクロースエクスプレスの出発シーンですが,もうひとつが,この番組でも紹介されたロシアのサンクトペテルブルグまで通じている国際列車です。私は,ヘルシンキ中央駅の電光掲示板でこの列車の表示は見ましたが,発着シーンは見損ねました。このことを今では残念に思いますが,それは,この当時は,次に来たときに乗るからいいや,と思っていたことによります。
ヘルシンキからサンクトペテルブルグまでは,東京から大阪に行くよりも近く,わずか300キロメートルほどしかないのですが,国境を隔てているので,車内で検札があるということでした。私は,2020年の夏に三度目のフィンランドに行って,そのときにこの列車に乗ってサンクトペテルブルグまで行く予定をしていただけに,コロナ禍でその旅が実現できなかったことが数少ないこころ残りのひとつとなっています。
フィンランドの東はロシアです。長い国境線がふたつの国を遮断しています。また,フィンランドの歴史は,ロシアとの戦争の歴史でもあり,植民地化されたこともあります。この番組が,現在のロシアのウクライナ侵略を意識して放送されたのかどうかは知りませんが,このご時世ともなると,こうした事実がかなり深刻な問題として浮かび上がります。果たして,今もサンクトペテルブルグ行きの列車は運行されているのでしょうか?
フィンランドは,世界で最も幸せな国といわれています。また,教育が充実して学力世界一だともいわれています。実際,この国を旅すると,治安もよく,旅もしやすく,自然も魅力に富み,豊かな国であることを実感します。しかし,未だに徴兵制度があるということを聞いて,平和ボケした日本に住む私は,当時,とても意外な気がしたものです。
私がヘルシンキに着いたちょうどその日,ロシアからプーチン大統領が来ていて,その車列を見ました。私のわずか数メートル前を,この,面積だけが巨大な国の元首が車に乗って通り過ぎて行ったのです。それは今からわずか3年前のことだったのに,当時は,その国の恐ろしさへの実感は程遠いもので,フィンランドがロシアと陸続きであることを痛感しただけでした。フィンランドの置かれた地理的なリスクが何を意味しているのか,私にはまったく理解できませんでした。
それが,今や,フィンランドは,隣国の脅威に懸念を抱かざるを得ない状況となっています。
この番組を見ながら,どうか,将来にわたって,私の大好きな,そして,すばらしい北欧の国の平和がこれからも続くようにと願わずにはいられませんでした。
◆◆◆
「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは