2日目,2022年5月18日水曜日。
若いころ,スキーに夢中になったことがあって,長野県や新潟県では飽き足らず,北海道にも何度か行きました。
そのころに知ったのが「蔵王の樹氷」で,一度は行ってみたいと思っていたのですが,果たして蔵王は遠く,しかも,蔵王という漠然としたところがどこなのかあまりよくわかりませんでした。知っていたのは,宮城蔵王と山形蔵王があるということくらいでした。で,これまで行くことはありませんでした。
今回山形に行くことになっても,やはり,蔵王は遠い世界で,まさか蔵王まで足をのばすとは思っていませんでした。
昨日,山形駅の観光案内所で,「蔵王,近いですよ」と言われて驚きました。山形市からは30分程度で行くことができるのです。そして,蔵王というのはひとつの山ではなく,蔵王連峰全体のことだと知りました。
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さて,2日目と3日目,どちらの日に南と北,どちらに行こうかずっと迷っていました。
明日2日目の予報では,とても天気がよいということと,帰りの「おいしい山形空港」が山形市より北にあることで,2日目は蔵王を含めて南に行って,3日目は空港に近いから北に行くことに決定しました。
ということで,2日目の早朝6時前にホテルを出て,まず,蔵王に向かいました。
ところで,私が宿泊している東横インですが,サービスで朝食がついています。今回のホテルでは朝6時30分からでした。
これまでにも数多く日本各地の東横インに泊まっていますが,概して,この朝食,混み合うのです。そして,まったくもって楽しくなく,むしろストレスが溜まるのです。
東横インの欠点は,エレベータが1基しかないので急いでいる朝に限ってなかなか階下に降りられないことと,決して広くない食堂での朝食です。私はかねてから,東横インの朝食は有料にして,必要のない人は安価にすべきだと思うのですが,それはそれとして,たかが数百円…。
そんなわけで,このごろは,東横インで朝食は食べないことにしました。それくらいなら近くの吉野家にでも寄って朝食を食べたほうがずっと快適なのです。
今回は,ホテルを出発する時間が午前6時前なので,昨晩買っておいた朝食を部屋で食べました。
私は,まだほとんど車の走っていない早朝,山形市から国道13号線を南に走って,まもなく蔵王エコーラインに入りました。
蔵王エコーラインは山形県と宮城県を結ぶ道路で,昭和37年に開通。全長40キロメートルで,この道が蔵王連峰最高峰にあるお釜を通るということでした。また,お釜を見るには,蔵王刈田リフトに登るか,蔵王エコーラインから蔵王ハイラインという有料道路に入る必要があることをパンフレットで知りました。
まあ,行ってみればどんなところかわかるでしょう。その程度のいい加減さでした。
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蔵王連峰は,東北地方の中央を南北に連なる奥羽山脈の中にあって,宮城県と山形県の両県南部の県境に位置する連峰で,奥羽山脈で繰り返された火山活動によって形成された複合火山群です。
蔵王連峰は山々の集まりの総称で,蔵王山という単独峰があるわけではありません。
蔵王連峰の中で,宮城県側の部分が「宮城蔵王」,山形県側の部分が「山形蔵王」ともよばれます。また,お釜などがある部分を中央蔵王とし,ここに1,841メートルの熊野岳と1,758メートルの刈田岳があります。
蔵王山の名称は蔵王権現がこの山に祀られた事に由来します。
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道路は次第に標高を高くしていって,走りながら,私はこれまでに行ったアメリカのいくつかの国立公園を思い出していました。モンタナ州のグレーシャー国立公園もこんな感じだったなあ,コロラド州のロッキー山脈国立公園はもっと雄大だったなあ,などと…。
しかし,根本的に何かが違う。
それが何なのか考えていました。そして,思いあたりました。
アメリカには国立公園法があって,こうした場所はどこも厳格に自然が守られていて,民間の売店やら食堂やらはまったくないのです。ゴミを捨てることもゆるされません。それに比べて,日本では,民間のレストランやら何やらがあって,それもまた,あるだけならともなく,潰れて廃墟になっていたりして,日夜,自然破壊にいとまがありません。
まったくもって,こうしたことが日本の自然に汚点を残しているんだなあ,と痛感しました。
それはそれとして,雄大な景色は,日本の景観としてはそれなりにすばらしく,一応,私は満足しました。というか,このご時世,満足せざるをえません。
お釜に接続するリフトの乗り場あたりは,まだ雪がたくさんありました。まだ時間が早く,リフトは動いていなかったので,お釜を見ることをほぼあきらめました。
リフト乗り場を通り過ぎたところからが宮城県です。
このあたりで引き返そうと思ったころ,有料道路の蔵王ハイラインの入口がありました。
まだ朝早く,有料道路のゲートは無人で,でも,閉鎖されていることもなく,結局,お金は払おうにも払えず,つまり,必要ありませんでした。ここから蔵王ハイラインを走ると,お釜まで行くことができるらしいのです。
やがて駐車場に到着しました。
私ひとりかと思ったら,すでに結構な車が停まっていました。これから登山とか縦走をする人たちのようでした。この景色,なんとなく,ハワイ・マウイ島のハレアカラ山頂に至るビジターセンターの駐車場を思い出しました。蔵王の方が標高が1,200メートルも低いですが…。
車から出ると,とても寒く,防寒具を必要としました。昨日登った立石寺は暑くて大変だったし,今日は寒くて大変です。昨日とは気温差30度もありました。寒さの中を少し歩くと,お釜を見ることができるビュースポットに到着しました。
お昼間ならすごい人なのだろうと思いました。大自然と親しくするには,ほとんど人のいない早朝6時までが勝負です。
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お釜は,蔵王連峰の刈田岳,熊野岳,五色岳に囲まれた火口湖で,周囲が約1キロメートル,直径が325メートル,水深が27メートルです。エメラルドグリーンの湖面は季節や気候,太陽光線の角度によって色を変えるので「五色湖」とよばれています。
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ということで,長年の夢だった蔵王も,お釜も,期せずして,この旅で来ることができたのでした。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは