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 ほとんど情報のない州ノースダコタを一度訪れて見たいという気持ちは以前からあった。でも,わざわざ行くべきかどうかずいぶんと迷いもあった。
 歳をとって,今行かないともう行く機会がないのではないか,という思いが強くなって,いよいよ行く決心をした。
 ノースダコタ州だけではと思い,調べるうちに,サウスダコタ州も含めれば素敵な旅行ができるようなので ―とはいっても,計画を立て始めた頃は,ノースダコタ州はもちろんのこと,サウスダコタ州のこともほとんど知らなかったのだけれど― 今回は,このコースで旅行をすることにした。
 実際に体験したノースダコタ州は,とてもすばらしいところだった。
 何より,雄大な景色がいい。のどかさがいい。人の少なさがいい。ツアー客がいないのがいい。
 この地にあったのは,本当の大自然と,西部開拓時代から続く本当のアメリカ人の生活だった。そして,観光客がいないので,自分が,そんな姿を独り占めにできる喜びや,この地を知らないほとんどの人たちに対して自分がそれを知った優越感だった。
 いずれにしても,本当に,行ってよかった。

 こんな経験をしてしまうと,日本国内は無論のこと,他の国のどこの景色も観光地も ―グランドキャ二オンすら― 「ちんけ」に思える。この夏,信州や北海道へ行く人も,海外旅行で観光客だらけの香港だの韓国だのと出かける人たちも哀れにしか思えない。申し訳ないけれど。
 これは,喜ぶべきか悲しむべきか。
 いずれにせよ,今回の,このひとり旅は,これまでの自分の人生最大の思い出となった。
 こうして,思い出してみると,この地を,もっと多くの人に知ってほしいという気持ちと,その反面,知ってほしくない,自分だけのものにしておきたいという気持ちが入り混じり,複雑な心境になる。