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シアトルからソルトレイクシティまでは1時間30分くらいのフライトである。ソルトレイクシティに近づくにつれて,眼下にグレイトソルト湖がひろがり,その圧倒的な景色に感動する。かなり広い塩湖だ。湖畔は塩の塊だらけだと,隣の女性に話しかけられる。
機内のアナウンスでは,当地ソルトレイクシティの気温は華氏99度(摂氏37度),天候は雨ということだった。隣の女性が「99度!」といってため息をついた。この人,ソルトレイクシティ到着後は,レンタカーで北上して,ワイオミング州からモンタナ州を越え -ソルトレイクシティはイエローストーン国立公園のアクセスポイントだ- カナダ国境を越えてサスカチュワン州を東に行きノースダコタ州の国境からからアメリカに戻ると言っていた。ひとり旅か? と思ったが,そうではないようだった。いずれにせよ,ノースダコタ州を目指すのは,自分だけではないのだな,と思った。
急に,ノースダコタ州が身近に思えた。
ソルトレイクシティの空港に到着した。ここには,一度,フロリダからの帰りに降りたことがあるが,ソルトレイクシティはグレイトソルト湖のほとりに広がり,モルモン教徒が作った大きな都会だ。いろいろと観光名所があるので一度は時間をとって訪ねてみたいものだと思うのだが,まだ,果たしていない。すでに雨はあがっていて,空から見た景色は雄大で,空港から眺める景色もすばらしかった。
ソルトレイクシティからラピッドシティに向かう飛行機は40人くらいが乗る小さなもので,搭乗口も空港の一番端にあった。
ここでは,まず,搭乗のチェックインが必要だと言われていたので,自動チェックイン機を操作して,搭乗券を入手する。
自動チェックイン機はなかなか便利だが,アメリカ旅行は,旅なれていない人には,ESTAにせよ,自動チェックインにせよ,なにがなんだかわからないだろう。さらに,今回の旅行で感じたのは,空港やホテルのテレビはサムソンやLG,この旅行で乗ったレンタカーはヒュンダイと,どこもかしこも韓国製だということ。空港では,みんな iPad や iPhone を使い,新聞を広げる人は誰もいない。
世界は変わった。そして,日本の影は薄い。内弁慶で威張り散らすだけの日本の老人男性も,外国に興味のなく平和ぼけの日本の若者も,意味のない教育 -教育でなくただのクイズ合戦だ- をしている日本の教育界も,あれはいったい何なんだろう。もう,日本は終わった。しみじみそう思った。
ソルトレイクシティの空港で,サンドイッチとフルーツジュースを買って,窓から外の景色を眺めながら夕食のつもりをした。到着のたびに時差で時間が変わり,体内時計がどうなっているのかもよくわからないが,ともかく,ラピッドシティに到着すれば,深夜になるから,夕食をとらなくてはならない。
ソルトレイクシティからのフライトは,座席がまた一番前で,今回はさらに窓際の席だったこともあり,夕方の景色がとても美しかった。カメラを片手にずっと窓から外を見ていた。客室乗務員の女性がひとりだけ乗っていて,とても忙しそうだったけれども,私がカメラを構えていると「いい写真が撮れるといいね」と話しかけ,他の客にも愛想がよく,素敵な人だった。機内のアナウンスの発音がとてもきれいだった。
快晴だったこともあり,夕日に映えるロッキー山脈がすばらしかった。
1時間と少し,窓からの景色が変わり,眼下は雲だらけとなり,雲の下が時々光っているように感じられた。やがて,機体が着陸態勢となり,雲の中に入ると,光っていたもの,それは稲光であった。いたるところで稲妻が走り,まるで,実験室のようだった。あのような稲光をはじめて見た。恐ろしい景色だった。まさに,地球全体が放電実験をしているかのようだった。