ドアトレイルの次は,はしごを登るトレイルを行くといいと高木さんから聞いていた。
途中にはしごのあるのはノッチトレイルという名のトレイルだということがわかったので,そのトレイルを行く。少し進むと,考えが甘かったことに気がついた。ノッチトレイルはえらく大変だった。
はしごがあるとのことだったが,そこまでの道のりも簡単なものではなかった。第一,ドアトレイルの華やかさに比べて,歩いている人がほとんどいない。次第に,トレイルは,道なき道になる。初めてすれ違った若者に,この先どのくらいあるのかと聞くと,1.5マイルくらいかな,この先クライミングもあるし,エキサイティングだ,でも,楽しいトレイルだ,と言ったので,本当にどうしようかとも思ったけれど,ここまで来て引き返しても後悔するだろうし,そのまま道があるようなないような,時折,行き先の表示だけがある断崖絶壁のような道を,慎重に進む。やたらと暑いし,足場は悪いし,たいへんだった。
やっとあったはしごを延々と登って,でも,登った後も結構長かった。
すると,山の迫った平原のような異様な景色が広がった。
不思議な気持ちがした。
ここの景色は,いつか見たことあるぞ。それは,映画にでてきた火星の1シーンだったか? あるいは,いつか見た夢の中の景色か?
デジャブー,妙な気持ちだ。
ともかく,これは地球の景色じゃない。すごい。この景色に比べたらグランドキャニオンなんて,ほんとにたしたことないぞ,と思った。
そうして,30分も歩いただろうか。やっと終点についたら,眼下には,延々とサウスダコタ州の大地が広がっていた。絶景だった。
来た道を引き返して,やっとのことで車に戻って,汗まみれの体を冷やして,先を急ぐ。
途中のビジネスセンターのあるシーダーパスからは屏風状の岩山がそそり立っているのが見えた。その次は,フォッスルトレイル,つまり,化石の道を歩いた。
イエローマウンズのあたりから,道路が工事中となり,片側一車線の交互通行で,展望台も閉鎖されてしまっていたのは残念だったけれども,最後のピナクルズでは,どうにか展望台で車を駐車することができて,360度広がる地球創世期のような景観を味わうことができた。
公園はこれでおしまい。西側のゲートを出て北上する。やがて,ウォールに着き,ウォールドラッグをめざした。昼時ということもあり,ウォールドラッグは車を止めるのもたいへんなくらいの混雑だった。
このドラッグストアは,ウォールという小さな町のメインストリートの片側全てをこの店が占めていて,ウェスタンブーツからカーボーイハット,先住民アート,書籍,アウトドア用品と何もかもを扱っている。また,裏手には子供用の遊戯施設やら喫茶店やらがあって,昔の写真を集めた展覧会もやっていて,非常に興味深かった。
この店のことは,「語るに足る,ささやかな人生」という本に取り上げられていて,以前,読んだことがあるが,まさか,そこに本当に来るとは,そのときは思ってもみなかった。
有名なバッファローハンバーガーの食べられる食堂は満員だった。バッファローバーガーを注文するところは列ができていて ―なぜか,アーミッシュもいた― やっと自分の番になって,注文したら,中国から留学中の学生だという店員が親しげに話しかけてきた。ひとりでここのバーガーを食べにわざわざ日本から来たといったら,本当にびっくりしていた。
気のせいか少し臭みがあるような感じがしたバッファローバーガーを食べてから,ドラッグの中や周りを少し散策して,車に戻った。
さあ,いよいよノースダコタ州を目指すことにする。