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ルートは,インターステイツ90を西に引き返し,ラピッドシティを越え,ホワイトウッドまで行って,州道34に入り,ベル・フォーシェイという町で国道85に乗ってどんどんと北上して,そのままノースダコタ州に入るというものだ。
だが,これ以上の情報がない。サウスダコタ州の公式ガイドブックにも何も書いていない。事前に調べたところでは,どうやら泊まる施設がありそうな町は,途中の,スピアフィッシュとベル・フォーシェイ。この町を過ぎたら,サウスダコタ州にはもう町はないので,覚悟を決めてノースダコタ州まで走らなければならず,ノースダコタ州に入ってからも,しばらくしてボーマンという町に達したときにホテルが数件あるくらいらしい。
地図を見ても,南北に,定規で引かれたかのような,ひたすらまっすぐに伸びる道があるだけだ。
インターステイツ90を西にスピアフィッシュまで行って,その町で北に進路を変えて国道85に入るのではなく,予定通りにスピアフィッシュの手前のホワイトウッドという町で北西に走る州道34に入って,ショートカット,つまり近道をしてベル・フォーシェイという町まで来たので,スピアフィッシュという町は通らなかった。
したがって,宿泊先の第一候補はベル・フォーシェイだ。この町には確かにモーテルは存在した。予想よりも広い町だった。まず,そこではじめてガソリンを入れた。7.18ガロンで26ドル(約1リットル96円)だった。
まだ午後4時。ラピッドシティを過ぎたあたりで一度雨になった天気はすっかり回復しているし,早いので,ここで宿泊する気にはならず,ノースダコタ州までひたすら走って,ノースダコタ州のボーマンまで行くことにする。
こういう決断が,ときに墓穴を掘ることになるかもしれない。以前,カナディアンロッキーを走ったとき,夜遅くまでホテルが見つからなかったことを思い出して,きょうは大丈夫かな? と思った。
ところが,このあとに走った国道85が,とにかくすごかった。というか,すばらしかった。
とにかく,想像を絶していた。
目に入る景色は,まっすぐにつながる道と遠くに見えるビュート(小高い山)。それ以外は牧草地帯。他に何もないというものだったのだ。すれ違う車もほとんどないのだ。ときおりすれ違うのは,巨大なトレーラーや農作業用の車だけだった。これが1時間以上にわたって続いていたのだ。
まだ,サウスダコタ州である。この先にノースダコタ州があると考えるだけでも,これはいったいなんだという気持ちになった。
遠くに地平線が延々と横たわる。道は,少し起伏があって坂を上ることがあると,上りきったあとで再び下り坂になったとき,眼下に,先ほどのような風景が,延々と果てしなく続いて見える。
この景色を見ただけでも,本当に,「何もない」ということがどういうことか実感できる。
「何もない」というのは,とても神秘的な,そして,感動的な風景だった。
そして,やがて,果てしなく続く,こうした道を,いつまでもいつまでも進んでいくと,やっと,ノースダコタの州境になった。
ついに,念願のノースダコタ州に到達した。