中央道が伊那谷を通るようになってから,国道19号は,岐阜県と長野県の県境を越えたあたりから,めっきり地方道になってしまって,逆に,旅情を感じさせます。 そうした国道19号線を北上すると,やがて,奈良井の宿にたどり着きます。
奈良井宿は、中山道34番目の宿場です。 ここの宿場町は,江戸時代の雰囲気が今も大切に保存されているので,時折,ドラマのロケやテレビのCMで見かけるのですが,そこが奈良井であるということが結構控えめにされているようで,なんだか,それを知っている人は,ホッとしたりもします。
そんな奈良井宿の木曽大橋の近くに,「カフェ深山」という古民家カフェテラスがあります。
大正時代の製材工場の事務所を移築復元した太い柱や梁が特徴の古民家で,「100年前のライスカレー」が看板メニューです。これは「家庭之友」1903年(明治36年)1巻5号に掲載されたレシピを再現したものなのだそうです。
鳥のさえずりを聞きながら,そして,木立のさわやかな風を感じながら,ここでのんびりと過ごすのは,考えてみれば,ものすごい贅沢なのかもしれません。
奈良井宿といえば,NHKの朝ドラ「おひさま」のロケ地でもありました。
岡田惠和さんが脚本を書いた朝ドラは「ちゅらさん」「おひさま」。ともに見ている人を元気にするドラマでした。「女性たちよ,よき人生を」というのがテーマであったように思います。
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長野県安曇野でそば店を営んでいる主人公の須藤陽子。彼女が,様々な喜びや悲しみと,そして人の心の温かさに支えられた自分の人生を語ります。
いつも彼女を支えたのは、若くして亡くなった陽子の母が残した
「つらいときも,笑うのを忘れないで。女の子は太陽なのよ」
という言葉でした。
「おひさまはね、誰の力も借りないで自分の力で輝いているでしょ?だからね,陽子,どんな辛いことがあっても笑うの。笑うのを忘れないで」
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最終回,自分とかかわりのあった人たちについて,陽子は次のように語ります。
「みんなそれぞれに幸せだったんじゃないかしら」
人の幸せは,自分らしく生きぬいた人のそれぞれの心の中に,平等に宿るのです。