地上に駅がある地下鉄4番ラインの161ストリート駅を降りて,チケットを手に入れて,地下鉄の駅の階段を降りた。目の前は,ヤンキースタジアムの6番ゲートであった。
セキュリティで荷物をチェックして,先ほど買ったチケットを係に見せた。バーコードを機械に当てると何の問題もなく,中に入ることができて,ほっとした。
事前にネットでしらべたところ,ここヤンキースタジアムは,セキュリティが厳しく,大きなカメラなどを持っていると中に入れないとか書かれてあった。もし,そういう事態になっても,カメラを預けるところもないということであった。
私が持っていたのは,ニコン1J3というミラーレスの一眼レフと10から100ミリのズームレンズであった。35ミリカメラに換算すると,27ミリの広角から270ミリの望遠までのズームで,この日のために購入したものであった。このカメラなら小さいので問題はないと思っていた。しかし,私の予想に反して,結構大きなバッグを持った観客でも何の問題もなくゲートをくぐっていた。私の心配は取り越し苦労であった。
こういう情報は,結構いい加減なものが多く,ヤンキースタジアムのセキュリティも他のボールパークより厳しいというものでもなく,同じであった。
2009年4月,総工費15億ドルを投じて,旧ヤンキースタジアムの隣にオープンしたこの新球場は,とてつもなく豪華なものであった。同じころに作られた他の球場の3倍の費用をかけただけのことはある。
「グレートホール」と呼ばれる巨大なコンコースが迎えてくれた。私は何度足を運んでも,アメリカのボールパークの客席の仕組みがどうもよくわからない。というか知る気もなかった。持っていたチケットには,「テラスセクション313・ROW3・SEAT16」とあったが,これで1塁側の4階席だとはわからないであろう。とにかく,この球場は,チケットが異常に高価なのである。
MLBは1990年代から新球場が続々と誕生して,チケットがどんどんと高くなった。それ以前は,1,000円も出せば,上席で見ることができた。今はその10倍はするようになった。係員がいたので,チケットを見せて,席はどこかと聞いたら,横のエスカレータに乗れと言った。「グレートホール」にあったエスカレータに乗る。3階まで上がって,また,係に聞いたら,もう1階上だと言った。70ドルもするチケットが,こんなにスタジアムの上の方の席なのである。
やっとのことで,席を見つけた。席につくと,眼下にはテレビでよく見るヤンキースタジアムのフィールドがあった。
この球場は,外野も客席に囲まれて,外の景色が見られない。
他の多くの球場のように,外野の後方に摩天楼が見えたり,ナイトゲームターのときには夜景が見られたりするようにデザインされていれば,ここはニューヨークなのだから,どんなにすてきであろうか,と思っていたので,私は,このスタジアムは今ひとつ好きになれなかった。しかし,こうして実際に来てみると,これはこれですごい威厳なのであった。
さすがに興奮した。
試合はすでに4回裏がはじまっていた。すごい盛り上がりであった。
打席には,何と,イチローが立っていた。