カニ星雲チコの星ケプラーの星

 超新星は,古くは2世紀に中国で記録されていて,ティコ・ブラーエやヨハネス・ケプラーも観測記録を残していますが,実態が知られるようになったのは19世紀後半になってからです。
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 「超新星」という名称は「新星」(nova)に由来します。新星とは,夜空に明るい星が突如輝き出しまるで星が新しく生まれたように見えるものです。ルネサンス期には既に認識されていたのですが,1885年にアンドロメダ銀河の中にそれまで知られていた新星よりはるかに明るく輝く星が現れ,これが新星を超える天体の存在が確認されたために「超新星」(supernova)の語が生まれました。
 爆発で発する光は明るく輝き,この明るさは新星を格段に凌駕します。爆発によって星の本体は四散しますが,爆発後に中心部に中性子星やブラックホールが残る場合もあります。
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 初期の宇宙はほとんどが水素とヘリウムの同位体でした。次に,ホウ素,炭素,窒素,酸素,ケイ素や鉄などの元素が恒星内部での核融合反応で生成され,超新星爆発により恒星間空間にばらまかれました。さらに,鉄よりも重い元素も超新星爆発時に生成したと考えられています。
 また,炭素の同位体比から超新星爆発時に合成されたと考えられるダイヤモンドなどの粒子も隕石の中から発見されています。
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 ひとつの銀河に超新星が発生する頻度は数十年に1回と考えられています。
 我々の銀河系では,185年のケンタウルス座に現れたのが最古の観測記録で,その後,393年のさそり座に,1006年のおおかみ座に,1054年のおうし座「かに星雲」(=1番目の写真),その後は1181年のカシオペヤ座に,1572年のカシオペヤ座「チコの星」(=2番目の写真),1604年のへびつかい座「ケプラーの星」(=3番目の写真)で現れ,それ以降は発見されていません。
 また,われわれの銀河系以外の銀河(かつては「系外星雲」といいました)に出現するものは遠すぎて通常は肉眼では見えないのですが,1987年に大マゼラン銀河に出現した超新星は肉眼でも見える明るさになりました。

 「超新星」は,Ⅰ型とⅡ型とに分類されます。
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●Ⅰ型超新星
 そのスペクトルに水素の吸収線が見られないものをⅠ型といいますが,Ⅰ型には「Ⅰa」型と「.Ⅰa」(ドットいちエー)型があります。
 ケイ素の吸収線が見られるものが「Ⅰa」型で,これはあらゆる型の銀河に出現します。「Ⅰa」型は,連星系を作る一方の白色矮星が,もう一方の恒星から来たガスが降り積もることで質量を増加させて,ついには自らの重力による収縮を支えきれなくなって核融合反応が暴走し,大爆発を起こしたものです。2014年1月21日に発見された,おおぐま座の銀河M82 の超新星は,極大1,2週間前の「Ⅰa」型とみられています。「Ⅰa」型の超新星はピーク時の絶対等級がほぼ一定となるので,見かけ上の明るさを測定することで超新星爆発の起こった銀河までの距離を求めることができます。つまり,天体までの距離がわかるのです。
 爆発時の明るさとその持続時間が「Ⅰa」型の数値とくらべて小数点以下くらいしかないものを「.Ⅰa」型と呼びます。「.Ⅰa」型の超新星は,連星系を作っているのが質量の異なったふたつの白色矮星のときに起こります。ふたつの白色矮星はお互いに相手の周りを回る軌道を描いていて,質量の大きい主星のほうが炭素および酸素で,質量の小さい伴星のほうがヘリウムを主な物質として組成されているとき,主星の重力の影響で伴星から組成主成分であるヘリウムが主星側へ少しずつ引き寄せられていき,やがて,主星の周囲に蓄積し主星を包み込むようになって,蓄積されたヘリウムが一定質量を超えると,非常に明るく短時間で終息する爆発が起きます。爆発後,2個の白色矮星はそのまま軌道を維持し,再び同じ爆発サイクルを繰り返します。
 また,Ⅰ型の中でヘリウムの吸収線が見られるものを「Ⅰb」型、水素とヘリウムのどちらの吸収線も見られないものを「Ⅰc」型とよびますが,これらについては機構がよく分かっていません。
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●Ⅱ型超新星
 水素の吸収線が見られるものをⅡ型と分類します。Ⅱ型の超新星は少なくとも太陽の8倍より重い星の場合に起こります。Ⅱ型には,「ⅡP」型と「ⅡL」型があって,光度の変化によって,光度がほとんど一定になる時期があるものを「ⅡP」型,最大光度の後単調に光度が減少するものを「ⅡL」型と呼びます。
 太陽の8倍より重い星の場合,中心核が縮退しながら核融合が進み,核融合反応を繰り返すことによって赤色超巨星に進化した段階ではネオンやマグネシウムからなる中心核が作られて,その周囲の殻状の領域で炭素の核融合が進むようになります。やがて,中心核の質量が増えると陽子の電子捕獲反応が起きて中心核内部に中性子過剰核が増え,これによって電子の縮退圧が弱まるため,重力収縮が打ち勝って一気に崩壊します。
 さらに,太陽の10倍程度よりも重い星では,中心核が縮退せず中心核の核融合が進み,最後に鉄の中心核ができます。鉄の中心核は重力収縮しながら温度を上げていき,華氏1,010度に達すると,高エネルギーのガンマ線を吸収してヘリウムと中性子に分解し,これによって一気に重力崩壊を起こします。この爆縮的崩壊の反動による衝撃波で外層部は猛烈な核融合反応を起こし,Ⅱ型の超新星となります。
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