やがて,出発が間近になったころ,入院した父は持ち直し,旅行に出かけても,急に帰国をしなけらばならないという心配はないように思えた。
もっとも,急に帰国ができるようなところでもないが…。
私は,旅行に行くことに決めて,旅行保険をネットで契約した。旅行保険の特約に,家族に何かがあったときの急な帰国の保障というものがあったが,すでに入院している場合はその契約ができないとあったので,そうか,そんな状況で旅行に出かけるなんていうのは非常識なんだなあ,とそのとき思った。
・・
この年の冬,アメリカは異常気象であった。
アメリカのほとんどの地域は大寒波で,積雪がすごく,温暖なカリフォルニアでは,豪雨があった。さすがに,テキサス州やニューメキシコ州,アリゾナ州といったところはそうでもないように思ったが,飛行機がデトロイトに予定通り飛ぶのかな,と心配になった。
持って行く服もよくわからなかった。まあ,適当に,非常用の防寒具を持っていくことにして,もし,だめなら,現地で購入しようと思った。そんなこんなで,持って行くものを選別し,できるだ少なくなるように適当に準備をしたら,3泊程度の小さなカバンひとつで十分になった。
今回は,MLBを見るわけでもなく,コンサートに行くわけでもないので,なんらチケットの予約もなく,飛行機と3日間のホテルの予約だけだったから書類もない。あとは,現地でiPod-tough1台だけあればなんとかなるであろう,と思った。便利な時代である。
ついに,出発日の前日になった。私が確信していたように,この日,突然,サンアントニオの友人から,到着する便と時間を教えてくれという連絡があった。そんなものはすでに連絡がしてあるではないか,と思ったが,改めて連絡をした。確証はなかったが,空港に迎えに来てくれるのであろう,と思った。
私が,出発前に,それ以外にやったことといえば,「地球の歩き方」で,サンアントニオとニューメキシコ州の観光地を調べたくらいのものであった。
夏に行った東海岸は,きちんと調べておかないと見どころがたくさんあって,うまく旅行ができないが,このあたりは,特にたくさんの見どころもなく,この程度の準備でどうにでもなるだろうと思った。アメリカは広く,地域によって,本当に状況がちがう。
・・
それにしても,地図を見ていただくとよいと思うが,テキサス州の中央部にあるサンアントニオからニューメキシコ州まで,なんと距離があることだろうか。しかも,その間,な~んもないじゃないか。