清少納言は「枕草子」で,
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夏は夜 月の頃はさらなり
闇もなほ 蛍の多く飛びちがひたる
まただだひとつふたつなど
仄かに光りてゆくもおかし
雨など降るもおかし
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と詠んだけれども,私は,初夏はあけぼの,つまり,早朝が一番素敵だと思うわ。
この季節,実は,ものすごく夜明けが早くて,もう,午前3時を過ぎると東の空は明るくなってくるの。そんなに早いの? ってびっくりする人も多いけど,そんなに早いのよ。
それに,天気も悪いことが多いから,星空を見るには向いていないわ。
けれど,早起きすると,晴れていなくても,それほど蒸し暑くもないし,とても気持ちがいいわよ。少しくらいな雨が降っていても,それもまた味わい深いしね。
そんな初夏に,特に素敵だって思うは,この季節によく似合うアジサイとカキツバタの花ね。
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この季節に開花するアジサイは,白,青,紫または赤色の萼が大きく発達した装飾花をもっているの。特にガクアジサイはこれが花序の周辺部を縁取るように並んでいてとてもきれい。
アジサイっていう名前は,藍色の花が集まるという意味の「集真藍」(あづさあい)が変化したものといわれているんだけれど,学名のハイドランジアっていうのは,ギリシア語のハイドロ(水)とアンジェイオン(容器)からなっていて,つまり,「水の器」っていうことなのね。それは,アジサイが根から非常に水をよく吸うからなんだって。
シーボルトがアジサイにハイドランジア・オタクサという学名をつけことは有名な話よね。 オタクサっていうのはシーボルトの愛人・楠本滝,つまりお滝さんの名前から付けられたんだと,植物学者の牧野富太郎は推測しているの。
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カキツバタは湿地に群生して,やはり,この季節に花を付けるの。内花被片が細く直立して,前面に垂れ下がった花びらの中央部に白ないし淡黄色の斑紋があることなどが特徴なんですって。
カキツバタは愛知県の県花で,三河国八橋,今の知立市八橋というところが,在原業平が「伊勢物語」でカキツバタの歌を詠った場所とされることに由来しているそうよ。
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から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬるたびをしぞ思ふ
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そんなわけで,この季節は,いろいろなところに,アジサイやカキツバタの花を見ることができるので,まだ,人のいない早朝にのんびりと散歩してみると,とてもすてきよ。
きっと,心から幸せを感じることができると思うわ。