きょうは「日本人は後出しジャンケンでも負ける」という話です。
 日本という摩訶不思議な国に住む人の行動のすべてをうまく例えることができないか,と私の知人と考えて出てきた結論が,このお話なのです。
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 たとえば,ふたりでジャンケンをするとします。ジャンケンの目的は勝つことです。
 ジャンケンをするためにまずいろいろ準備をします。それは,過去のデータを調べたり,練習をしたりといったことです。そういった準備の途中で,こう考えるのです。
 ジャンケンをすることによって,耐えることが身につくだとか,ジャンケンは忍耐力を養えるだとか。そしてどんどんエスカレートしていくのです。協調性を養うためにみんなで練習をすることが大切だとか,ジャンケンで一番大切なのはチームワークだとか…。そういうことを言い出すわけです。
 そして,大きなのぼりを掲げるのです。
 「一団となって戦おう!」
 残業や休日出勤までした入念な準備と調査の結果,当日,チョキを出すと一番勝つ確率が高いという結論が導き出されるのです。そして,長々と事細かな文書を作って上司の決裁を取るのです。日本では,こうした決裁をとるのも大変なのです。まして,前例のないことを発議すると,それを説明するだけでも骨が折れます。
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 で,いよいよ当日が来ます。勝負の開始です。
 「ジャンケンポ~イ」
 でも,相手の出す手がちょっぴり先に見えちゃったんですね。それがグーだったんです。だから,チョキを出したら負けるのです。
 でどうしたかって?
 それでも,チョキを出すのです。
 それは入念な準備の末にチョキを出すという決裁をもらっているからです。守らないとあとで何を言われるかわからないからです。
 その場で機転を利かせて,独自の判断をしてパーを出してはいけないのです。たとえその目的が勝つことであっても,それよりも集団の「和」が大切なのです。

 これが日本人のやっていることだ,というお話です。このたとえで,日本人のやっていることはすべて説明できる,というお話でした。
 この話を,きわめて考え方が「日本人」である,ある人にしてみたところ,私の予想したとおりの反応が返ってきました。
 彼が言ったのは,「後出しは卑怯だ」という言葉でした。

janken