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●アメリカの巨大な洞窟●
 私はモンティチェロの売店で昼食にするエッグサンドを買って,それを食べながらインターステイツ64を走って,シェーナンド国立公園を縦断するスカイラインドライブにアクセスするロックフィッシュギャップ(Rockfish Gap)ジャンクションに着いた。
 このジャンクションの位置は非常にわかりにくいと書かれてあったから,注意して運転した。スカイラインドライブはインターステイツ64を高架で越えているから,この道路にアクセスするには,高架を越えたあとにあるジャンクションでインターステイツを出て一旦国道250に入り,そのまま少し南下してUターンをする形で国道250に接続するスカイラインドライブに入らなくてはならなかった。
 しかし,想像とは違って道路標示がしっかりしていたから,その道路標示さえ見失わなければ簡単にスカイラインドライブに入ることができるのだった。
 
 シェーナンド国立公園も,国立公園のゲート自体は他の国立公園と同じで入園料を支払って入るのだが,他の国立公園との違いは,車がまったく並んでいなくて閑散としていたことだ。
 ゲートを越えて,そのまま道路を走っていっても単に山道が続いているだけで,大した景色が広がっているわけでもなく,遠くに雪山が見えるわけでもなく,シェーナンド国立公園は私が予想した通り,何も見どころのない国立公園であった。
 それでも,この道路を縦断して北の出口まで行くにはこれから3時間も走る必要がある。国立公園内の道路は制限速度が35マイルなので,時間がかかるのだ。
 途中で,昨日の4番目の写真にあるバードビジターセンター(Byrd Visitor Center)に着いた。ここにはレストランやなんとスーパーマーケットさえあって,およそ国立公園らしくなかった。ここだけは多くの観光客がいた。

 私は,それよりも,この先,この道路が交差する国道211を左折して一度国立公園を出て,30分ほど西へ走ったところにある「ルーレイ洞窟」(Luray Caverns)のほうに興味があった。インターネット上の書き込みにも,シェーナンド国立公園よりもルーレイ洞窟のほうがずっとよかた,というものが多かった。
 来るまでは,一旦国立公園を出て,往復に1時間もかかる洞窟にわざわざ行く時間の余裕があるかなあ,と思っていたが,国立公園がたいしたことがなかったから,私はこの洞窟に行くことにした。

 私はこれまでにアメリカでは3箇所の「洞窟」に行ったことがある。
 アイダホ州のアイスケイブ(Ice Cave),ニューメキシコ州のカールズバッド洞窟群国立公園(Carlsbad Caverns National Park),ケンタッキー州のマンモス・ケーブ国立公園(Mammoth Cave National Park)である。アイスケイブはそれほどでもなかったが,それでも3箇所とも日本ではありえないすごいところで,まるで地底探検であった。
 私は山口県の秋吉台も岩手県の龍泉洞も行ったことはあるが,残念ながら日本の鍾乳洞など比較する対象にすらならない。象とネズミほど規模が違いすぎるのだ。
 さまざまなところに行けば行くほど,こうしてゴムが伸びるみたいにどんどんと感覚がマヒしてくるのが,旅をし過ぎた最大の悲しみなのかもしれない。そんなわけで,この洞窟にもほとんど期待をしていなかった。

 この洞窟は,私のこれまでに行ったふたつ国立公園の洞窟とは違って,アイスケイブ同様,国立公園ではなく民間の観光施設であった。広い駐車場には土産物屋やらが並んでいて,まるで日本の観光地のようであった。それに,人口の多い東海岸らしく(なにせここからワシントンDCはもう目と鼻の先なのである),非常に混雑していた。並んでチケットを買ってから,30分ごとに行われているツアーにまた並ぶ必要があった。
 ところが私の予想とは違って,それがまあ,入ってみると,ここもまたすごい洞窟であった。
 この洞窟の最大の魅力は地下水のたまったところに鍾乳石が鏡のように反射した姿であった。また,洞窟の一番奥深いところには,まるで台座に鎮座するかのように本物のパイプオルガンが置かれていた。これは金属パイプの代わりに鍾乳洞そのものを使って音を出すという壮大な仕掛けで,長さの異なる鍾乳石にマレットを設置することで異なるトーンを生み出すようになっていた。3.5エーカーの鍾乳洞内に点在する37の異なる鍾乳石を含めてパイプオルガンという巨大な楽器を作り上げていたわけだ。
 私は洞窟に行くといつも思うのはその広さの感覚がよくわからない,ということである。要するに暗いことが大きさの感覚をよくわからなくするのである。ここは3.5エーカーというから小学校のグランドが4つぐらいが入っているということか。

 いずれにしても,アメリカ大陸の地面の下にはこんな巨大な穴ぼこが一杯あるのだろう。
 アメリカに限らず,世界には,こうした雄大な大自然が山ほどある。しかし,海外に出かけた経験のない日本人の最大の弱点は,そうした雄大な風景を知らないということに尽きる。あるいは,海外に出かけても,大都市しか行かないのもまた,同じである。
 日本という国には悲劇的といってよいほどそうした大自然がないので,人は自然のなかで共存しているという意識が欠如している。おまけに,日本では地震や台風がたえず脅威となって襲いかかるから,自然を尊厳するのではなく,敵視さえしてるように思える。そして,そこから身を守るために,盛んに工事をし国をコンクリートで固めてそれから守ろうとするのだが,それが逆効果となって,さらに自然が破壊され,地盤の沈下などの自然災害を呼び込んでいるわけだ。
 このことは,病気に対して自然治癒に任せずに薬漬けにすることで結局は体力を奪っている姿にとてもよく似ている。また,何事もにも手を出しすぎ,結局は成長できない子育てとも同じようなものである。

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2014春アメリカ旅行記-カールズバッド④
2015春アメリカ旅行記-ケンタッキー州マンモスケイブ③