●「おはよう700」と「カントリーロード」●
この旅に出発する前はモンティチェロへは行く予定はなかったが,「シェーナンド国立公園」(Shenandoah National Park)には行こうと思っていた。
私は,こんな場所に国立公園があるとは思っていたなかったし,これまでロッキー山脈のある西部山岳地帯の極めつけの国立公園のそのほとんどには行ったことがある。この春にはハワイ島のキラウエア火山国立公園(Hawaii Volcanoes National Park=HAVO)にも行ったし,この旅の1か月ほど前にはモンタナ州のグレイシャー国立公園(Glacier National Park)に行くためだけにわざわざアメリカまで太平洋を渡ってきたばかりだ。
「シェーナンド国立公園」はそれに比べればまったく大したことはないだろうと思ったし,実際,大したことはなかった。どうして国立公園になっているのかさえ私にはわからなかったし,今でもわざわざ行く価値があるとも思えない。
しかし,どうして行こうと思っていたかというと,それはひとえに「カントリーロード」(Take Me Home, Country Roads)という歌にある。
この歌は今では「魔女の宅急便」で有名になったが,我々の世代ではジョン・デンバー(John Denver)の歌である。そして,さらには,当時TBSのアナウンサーだった見城美恵子(「ケンケン」)さんが「おはよう700」というテレビ番組で「キャラバンⅡ」というコーナーを担当して,北アメリカ最北端のアラスカから南アメリカ最南端のフェゴまで旅をしたときに流れたテーマソングなのである。
この番組が放送されたのは私が20歳のころだから,アメリカにあこがれていた私にはずいぶんと思い出深い番組であった。この番組はトヨタ・カローラがキャラバンを組み,アメリカ大陸を北から南に縦断したものだが,当時走ったところを地図で見ると,私は,その後,そのなかのアメリカ合衆国のルートはほとんどを走ったことになるわけで,なにか,それもまた不思議な気持ちになる。想いは遂げられたのだ。そして,若いころのこうした想いが私の旅の原点となっているということを,改めて感じるのだ。
有名な歌詞の一節に
・・・・・・
Almost heaven, West Virginia
Blue ridge mountains,
Shenandoah river
Life is old there,
older than the trees
Younger than the mountains,
growin’ like a breeze
・・・・・・
とあり,その「Blue ridge mountains」と「Shenandoah river」が何ものなのか私には謎であった。これが地名であるということをずっと知らなかったわけだ。
だから,この川の名前をとったこの国立公園に,私は,この若い頃からの想いを懐かしく感じたのだった。旅は心でするものである。
ここに行きたかったのはそれだけの理由であった。
しかし,この国立公園は地図で探してもなかなか見つからなかった。その程度のところ,といえなくもない。
モンティチェロからさらにインターステイツ64を西に走っていくとインターステイツ81にぶつかるのだが,その16マイルほど手前で右折すると「スカイラインドライブ」(Skyline Dr.)という片側1車線の道路があって,そこがシェーナンド国立公園を縦断する道路なのである。そこから80マイルほどの一本道が山に沿って北向きに走っていて,そこから景色が見渡せるというのであった。