●どうやら運気が変わってしまったようだ。●
洞窟探検を終えて,私は再びシェーナンド国立公園に戻ってきた。
話を少し戻す。
私は国道211を走ってルーレイ洞窟に行き,再び戻ってくるのだが,私の走った国道211だと思っていたのは片側1車線の旧道で,どうやら,この道路に平行に片側2車線のバイパス道路ができていたようなのだ。
道理で私が洞窟に向けて走っていた道路は日本の道路のように狭く混雑して時間がかかったはずだった。したがって,洞窟からの帰りは行きとは同じ道路を通らずとも,短い時間でスカイラインドライブに戻ることができた。
再びスカイラインドライブを北に向かって,シェーナンド国立公園の後半を走ることになった。
この国立公園には野生の動物が見られるかもしれないと書かれてあった。しかし,ロッキー山脈にある多くの国立公園ならシカは山ほどいるし,野生の馬もバッファローもいくらでもいる。
私は春に行ったグレイシャー国立公園の帰り道でシカに激突されたばかりだし,バッファローだって,道路の真ん中に居座って動かず恐怖を感じたこともあるから,別段,珍しくもない。そんなわけで,そんなことには魅力も感じなかったし,山の上からの景色といったって,ワシントン州のオリンピック国立公園やサウスダコタ州のバッドランド国立公園のほうがずっとずっと雄大なのだった。
などと思いながら走っていたら,道路に面した森のなかから子熊がぬっと出てきた。さすがに野生の熊には本当にびっくりしたが,そのとき車を停めて熊の写真を写すべきであった。
私の後ろを走っていた車は熊を観察するために道路わきに車を停めた。私もそうしなったことを,帰国した今でも後悔しているのだが,どうやら,この後悔による精神状態がその後の「事件」の伏線となっているようなのだ。
私は走りながら,止まればよかったとそのことをずっと後悔していたが,そのことに加えてもうひとつ心配のたねがあった。それは,タイヤの空気圧の警告表示であった。
実はその表示は空気圧が減ったという警告ではなく,単に車の表示変更ボタンを意識せずに押してしまったために。デジタルで速度が表示されていたディスプレイが空気圧の表示に変わってしまっていただけだったのだが,日本の車にはこんな表示はないから,私は焦っていたのだった。
このときから,どうやら,私の運気が変わってしまったようなのだ。長い期間にわたる旅というのは,どこかでリズムが狂うものだ。
私はこの旅で50州制覇を達成するために,これまでもずいぶんと無茶をした。50州を制覇した今となっては,もう,こんな旅をしようとは思わないが,やはり,この旅をしていたころは何かにとりつかれれていたような気がする。それとともに,この旅の長距離ドライブもほとんど終わりに近づいて,かなりホットしていたこともある。
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2012アメリカ旅行記-素晴らしきノースダコタ⑤