●運気が変わって起きたこと●
私の運気が変わって,まず起きたのは,スピード違反で捕まってしまったことである。
国立公園は,制限時速が35マイル(56キロメートル)なのである。私は前を走っていた車が40マイル(64キロメートル)で走っていたから,その後ろをついて走っていたら,なんとレインジャーにスピード違反で捕まったのだ。なんで後ろを走っていた方が捕まるのか納得がいかず文句をいったら,他人がやっていたからといってやっていいということではないと教師のような話し方で諭された。アホか!
私は無知なことに国立公園のレンジャーに警官と同様の権限があることを知らなかった。この私を捕まえたレインジャーは自分に息子がいればこのくらいの歳だと思われるくらいの男だった。彼は捕まえてみたら日本人だったので「国際免許か,レンタカーか」などとぶつぶつ言いながらトランシーバーで連絡をしているのが見ていてなぜかおかしかった。私はバカバカしくなって,罰金払えばいいんだろ,これもブログのいいネタだ,と思っていたら,しばらくして,今回は許してあげよう,次回は許さないよと言って無罪放免となった。
今回,レンタカー会社の免許証明書でなく国際免許証を持ってきたので面倒なことにならなくてよかった。証明書だけでも違法ではないが,こうしたときの効力違うのだ。
私には,このような幸運がこれまでにも山ほどある。
その次はホテルであった。
私は,国立公園を出てすぐの町フロントロイヤル(Front Royal)に宿泊した。フロントロイヤルはとても美しい町だったので,私はすっかり油断をしていたようだ。こうした町には予約などしていなくてもいくらでも泊まるところはある。以前の私なら,その町のそこらのマクドナルドに入ればさまざまなクーポンのついたタウン誌が置いてあるからとりあえずそれをチェックして適当なホテルを探したものだったが,近頃は遅く着いたときにホテルを探すのも面倒なので,事前にエクスぺディアで適当なところを予約しておく。
そこで今晩予約したのが「クールハーバーモーテル」(Cool Harbor Motel)という名のホテルであった。安価なことにつられた。
しかし,到着してみると,それはそれは街はずれの絶対治安がいいとは思えないような薄汚いところにある古びたモーテルであった。プールもあると書いてあったが古びていて水も入っていなかった。部屋はまともだったし,風呂のお湯の出も一流ホテル以上にいいのにバスタブには栓がないし,コーヒーメーカーはあるのにコップがないし,というあんばいだった。
しかし,Wifiの繋がりがいいし,ホテルのスタッフの愛想もよかった。
夕食は近くにあった古びたモールのなかの中華料理屋に行ったのだが,そこの雰囲気も同じようなものであった。
アメリカには,こうした中華料理屋が結構ある。店内で食事をすることもできるのだが誰も食べておらず,客のほとんどはお持ち帰りなのある。
そして,そのひとり分という量が並大抵の量ではない。チャーハンなど頼めばひと家族分くらいある。この中華料理屋の焼きそばはまだ少ないほうであった。
私は,いくら食べても一向に量が減らないニューメキシコ州ロズウェルの中華料理屋のことと思い出していた。
そして,最後がタイヤの空気圧であった。車に表示されたタイヤの空気圧表示を警告表示だと勘違いした私は,ガソリンスタンドに行って空気を入れることにした。
こんなことは日本でもやったことがない。アメリカでは空気を入れるには自分で機械を操作して,お金を入れて空気圧の調節をするのである。
機械の使い方がわからないので,ガソリンスタンドのおじさんに助けを求めた。
アメリカでそんなことを頼んでも,大概は相手にされないのだが,幸いだったのは,私が行ったガソリンスタンドで店番していたおじさんはどうやら隠居で暇を持て余していた老人であった。彼はものすごく親切で代わりに空気を入れてくれた。
その後,私はこの空気圧表示の本当の意味を知って,それを便利に利用するようになった。
それにしてもエンジンオイルの表示といい,この空気圧の表示といい,日本で走る車とアメリカで走る車はたとてどちらも日本車であってもこうも異なるのはいかがなものであろうか?
このように,私は,旅の運気が変わってかなり落ちているなあ,とこのとき思ったが,結局,すべて事なきをえたから,あとはまた,よいことが待っているだろう,と楽観することにした。