●自己嫌悪に陥るのであった。●
私は再びパイアの町にやって来た。パイアの町は通り抜けてはいたものの車を停めて散策したことがなかったからであった。この町を通る州道36だけがマウイ島の東側の北の海岸線をハナまで行く唯一の道路なのであるが,この道路はパイアで必ず渋滞に巻き込まれる。それは,車を駐車するスペースや駐車場が少ないからである。
アメリカは広いから日本と違っていくらでも土地があるような気がするだろうが,実は,こうした小さな町では道路のまわり一帯がショッピング街になっていて,そうした町は日本とは違って路上駐車が可能なように道幅があるのだが,そこはいつもほぼ車が一杯で駐車スペースを探すのが容易でないのだ。
ここパイアの町もまた同様であった。探してみると,パイアでは町のはずれに駐車場があって,そこなら車を停めるスペースが若干はあった。しかしこの駐車場から出るにはひっきりなしに車道に車が走っていてしかも信号がないからとても大変なのであった。そんな状況で車が駐車場から出入りするから今度は車道がふさがれるのでこの道路は車が一日中滞るのである。
こうした町は,このマウイ島のパイアやワイルク,ハワイ島のカハルウ(Kahaluu),カウアイ島のカパア(Kapaa)といったハワイの町だけでなく,オーストラリアやニュージーランドにも多くある。私はここ数年,そうした町にずいぶんと行ったので,今思い出すとそれらの町がこんがらがってしまっていて,どの町がどうだったのがさっぱり思い出せないのだ。
とはいえ,こうした町にあるのはレストランやら土産物屋やらブティックやらであるが,そのどれも私が興味をそそられるようなところではないのである。強いて言えば私に用があるのは食堂くらいのものだが,とはいえ,こうした町にある食堂はどこも高いだけなのである。
パイアの町もまた同様であった。
やっと車を停めた私はさほど広くもないパイアの町の南側の歩道を歩いて町はずれまで行って,そこで道路を渡って今度は北側の道路を引き返してきただけであった。
こうした町の楽しみ方を覚えない限り,私は今後,海外旅行をしても暇を持て余すだけでないのかと,正直心配をしているわけだ。
この日の夜はハレアカラの天体観察ツアーに参加することになっていたので,3時50分にそのピックアップがホテルに来るからその時間までにホテルに戻ることにした。
夕食はツアーに含まれていたから,お昼は軽くおやつ代わりに何かを食べることにして,いつものホテルの近くのマウイモールのフードコートに寄ってハンバーガーを注文した。
結局これではわざわざハワイに行かずとも,自宅にいて気が向いたときに家の近くの(我が家の近くには3つもショッピングモールがあるのだが)モールに行ってマクドナルドでコーヒーでも飲んでいるようなものではないか。私は自己嫌悪に陥るのであった。