大相撲も将棋も,一時いろんな問題が起きてファンが見放したのですが,昨年は,大相撲は稀勢の里関が横綱に昇進したりと明るい話題が続き,将棋もまた同様に明るい話題が起きて,同じようにV字回復をしました。ところが大相撲は再び様々な問題が起き,世間の話題もそればかりとなりました。おそらく,今年はその影響がじわりじわりと出てくることでしょう。
 それに対して将棋はずっと明るい話題続きです。
 藤井四段のひふみん(加藤一二三九段)とのデビュー戦での勝利からはじまり,その後29連勝。そしてひふみんの引退,羽生永世七冠の誕生と,佐藤康光九段が会長になって以来,いいこと続きです。ちょうどそんな時期にAmebaTVが放送を開始したことがまたタイミングがよく,それまでは観戦する方法があまりなかった将棋がずっと身近なものになりました。
 
 将棋の竜王戦といえば,「あの」三浦九段の事件が起きたのがちょうど1年前の竜王戦だったのを思い出しました。昨年の竜王戦七番勝負は惨憺たる結果でした。それがわずか1年前のことだとは,とても信じられません。もう,遠い昔のような気がします。それを考えると,1年という月日は長いのか短いのか…? とても不思議な気がします。
 私も公開対局で観戦をしたり,AmebaTVで対局を見たりしているのですが,まあ,何と将棋というのはおもしろいものだろうとはじめて思いました。それに気づかなかったのは,これまで,新聞の将棋欄とNHKEテレの将棋対局でしか見る機会がなかったことが原因なのでしょう。このように,何ごとも,上手な見せ方というのが大切だということです。旅と同様,自分で体験することが大切なのです。また,聞き手を務めている女流プロもこれほど人材がいたとは。これまで,こうした人たちの才能を眠らせていたことが残念でなりません。

 先日の朝日杯将棋オープン戦のニュースがさまざまな番組で流れました。そのなかで,テレビ朝日の「サンデーステーション」という番組での取り上げ方はひどいものでした。この番組では「(藤井四段が)デビュー以来29連勝をしたあとで,その後わずか半年あまりで11敗するなどプロの壁にもがいていました」というナレーションが流れました。それは間違いではないのですが,あれではその後11連敗したかのような印象を与えます。
 実際の成績は,○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○●○○●○○○●○○○○●●○●○○○○○○○○○○○●○●○●○○●○●○○○
というわけで,通算58勝11敗,29連勝後は29勝11敗で,決して悪い成績ではないし,もがいているわけでもないのです。
 報道というのは,概してそんなものです。結局,はじめにどういうふうに話題にするかを決めておいて,都合のよい面だけを取り上げていくわけです。取材も,多くの人にインタビューをして,話題になる部分だけを切り取って報道しているのです。
 また,竜王戦の就位式を伝える日刊スポーツの記事は次のようでした。
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-羽生竜王は本気「手ごわい」藤井四段に視線合わせず-
 将棋の第30期竜王戦を制し,同時に「永世7冠」の称号も得た羽生善治竜王(47)の就位式が16日,都内のホテルで行われた。就位式の前には,史上最年少プロ,藤井聡太四段(15)とそろって会見。両者は2月17日に行われる第11回朝日杯オープン戦の準決勝で公式戦初対決するが,羽生は「手ごわい存在」と早くも警戒していた。
 羽生が視線を合わせない。右隣に座った32歳下の最年少棋士に対し,終始,体を左に30度ほど傾けていた。撮影で握手を求められても,右手を差し出しただけ。目線はカメラマンの方に向け続けた。
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 この就位式の様子はYouTubeで見ることができますが,それを見ると,この記事とはまるで違う印象を持つと思います。実際は,羽生竜王が先輩棋士らしく気配りをして,藤井四段をエスコートしていました。この記事は,なんか,ボクシングやプロレスの見出しみたいです。
 今は,いろんな映像を直に見ることができるからこういうことがわかります。
 私は,今年もまた,そうした報道に泳がされずに,自分の目で見,耳で聞いて,自分で判断していきたいものだと改めて思うことでした。

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