今から50年くらい前の1970年代なら満天の星空が見えた,と思うのは誤解です。そのころはすでに都会の夜空は明るくて,当然すでに天の川などまったく見えませんでした。私の年代ではもう忘れている人も多いでしょうが,バブルのころの環境は最悪で,パチンコ店のサーチライトなるものが,何を考えているのか夜空に光をぐるぐる回していました。もう,めちゃくちゃな状態でした。今考えてもこれは異常です。狂気です。どうして暗い夜空をサーチライトなどで光り輝かせる必要があったのでしょう?
 要するに,この国は昔も今もまったく節操というものがないのです。何事も金儲けがすべて,まわりがどう迷惑しようと,環境がどうなろうと,そんなことはど~でもいいのです。

 それでも,少し都会を離れれば,今よりはまだ,星空は輝いていいました。しかし私は都会の生まれなので,満天の星空など見たことがありませんでした。
 中学校1年の夏,学校から2泊3日で山に行ったときに見たのが,生まれて初めての「満天の」星空だったような気がしますが,そうした経験をすることができるのは本当にまれなことでした。それ以降,いつかは満天の星空を見たいものだとずっと思っていました。
 どこかへ行くたびに,ここなら夜になればさぞかし素晴らしい星空が見られるだろう,と想像しました。しかし,実際にそういった場所に出かけることができるようになってみると,それはすべて誤りであることがわかりました。今,テレビでは星の美しいところといって紹介される場所がいくつかありますが,テレビの画面をよく見ていると,そういった暗い場所でも遠くに街の灯りが輝いています。地平線付近が暗い場所など日本では見たこともありません。しかも,そういったどうにかまがりなりにも星の見られる場所には多くの人が殺到して,無秩序状態になっています。

 今の子供たちの中で天の川を見たことがある人がどれほどいることでしょうか。街中では1等星すら満足にみえなくなってしまいました。でありながら,私が最も不思議に思うのは,今晩はふたご座流星群が見られるだとか,彗星が明るくなるだとか,そういったニュースが流れることです。それらのニュースは,都会に住んでいても空を見上げればだれでも見られるような,そんな説明がされています。しかし,そんなもの,見られやしないのです。実際に流星群や明るい彗星を見たことのある人なんてまれなのです。
 この国のどこに満天の星空があるというのでしょう? そういう状態にしてしまったのは一体だれなのでしょう。

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