2日目。もったいないほどの快晴になりました。この天気,後までとっておいてほしいくらいですが,予報ではこの先も晴れです。
日本でいうなら今は9月です。お昼間の気温が30度くらいになるのですがちょうど過ごしやすい陽気です。
今日は天文台巡りです。まずは滞在しているナラブライ(Narrabr)にあるポールワイルド電波天文台(Paul Wild Observatory)からです。町から25分ほど行ったところにあります。
ホテルの近くのマクドナルドで朝食をすませて出発しました。道路案内にしたがって走って行くとすぐに郊外になりました。やがて天文台の入口があったので入って行くと,まあ,いるではないですか。カンガルーの群れです。そっと車を走らせると飛び跳ねて去って行くのですが,マヌケなヤツは車の前を横切って行きました。しかし,見れば見るほど奇妙な姿をした生き物です。合理的とは思えませんけれど。今日はこのあと走った道路でずいぶん多くのカンガルーの死体を見ました。車に激突するんです。アラスカやフィンランドではトナカイを,ニュージーランドではウサギを,アメリカや日本ではシカを道路で見かけますが,オーストラリアではそれと同じくらいカンガルーを見かけます。電波天文台,予想したよりずっと広くしかも巨大でした。日本の野辺山の比ではありません。広いというのはすごいことです。次に行くのはクーナバラブラン(Coonabarabran)にある有名なサイデンスプリング天文台(Siding Spring Observatory)です。クーナバラブランはナラブライから120キロなので1時間ちょっとです。オーストラリアの地方の道路はハイウェイといっても片側1車線で,制限時速が100キロから110キロです。時々追越車線があるのもニュージーランドと同じですが,オーストラリアの追い越し車線の面白いのは2車線になったときは車線に引かれた破線が左側に誘導するようになっているのに,追い越し車線がなくなるところでは追い越し車線のほうが優先になるように引かれていることです。
やがてクーナバラブランに着きました。小さなすてきな町でした。
まず観光案内所で地図やパンフレットをもらって係りの人とお話しをしました。この町は星見の里で多くのモーテルに天文台が設置されています。観望会もやっていますが,どこからでも満天の星空が見られそうです。今度来るときはここに泊まろうと思いました。
町から小高い山を登ること20分で天文台に着きました。ここにあるにはオーストラリア最大の4メートル反射望遠鏡です。ガラス越しに見ることができました。さすがに今となっては旧式ですが,この時代の望遠鏡は風格があります。こうしたオーストラリアの小さな町というのは最高です。ゆっくりくつろげます。まず食事がいい。お肉と野菜とパンがパランスよくとれます。物価は高くなくて,というか,オーストラリアドルのレート次第なのですが,1豪ドル80円くらいならずいぶんと安く感じられるものです。私はこのクーナバラブランという町のカーディアンズというレストランで昼食のステーキアンドサラダサンドウィッチなるものを食べました。朝はマクドナルドでパンケーキとコーヒーだったので,野菜が胃にこごち良いです。天気がいいこともあって,窓から外の景色を眺めていると幸せを感じました。
この町も住みたいところになりました。なにせ気候がいいのと星がきれいです。
蒸し暑い夏に寒い冬。黄砂とPM2.5で汚染された霞んだ春。自然が破壊されて人里にクマやらシカがさまよい出てくる秋。渋滞だらけでわかりにくいゴミだらけの道路に狭い公園。休むことも知らず趣味もなく仕事と酒だけの大人と,休みの日まで部活に補習に明け暮れるまるで軍隊のような学校に通う子供たち。真っ黒なリクルートスーツに身を包んで就活をする個性のかけらもない大学生。人だらけ渋滞だらけの観光地。汚れた川やゴミだらけの海岸と灰色の腐ったような夜空。そして狭い国土を痛めつけてどこもかもコンクリートで固めることを国土開発と名付ける政治家たち。そうした日本なんて,さらにどうでもよくなってきました。かつては美しかった,そして私の好きだったこの国をどうかこれ以上壊さないで欲しいものです。
今の日本が素晴らしいという人は,その前にハワイの美しい海岸とオーストラリアの星空とフィンランドの美しいオーロラとカナディアンロッキーの景観とゴミひとつないアメリカの国立公園,そして,人々が自分たちの生活を楽しんで知る姿,そうしたものを見て体験して,それでも本当にそう思うのか判断して欲しいものです。