●オーロラを見る夢はどんどんと遠くに●
宿泊先のチェックイを終えて,私はフェアバンクスのダウンタウンへ車で出かけた。
このとき私がアラスカに来た理由はふたつあった。
そのひとつはアメリカ合衆国50州制覇のけじめをつけるためであった。それまで50州を制覇したと公言していても,実際はアラスカはトランジットでアンカレッジの空港に降り立っただけだったからである。
ふたつめは夏でもオーロラが見られると知ったからであった。チェックインをするときまで,私はアラスカの地では当たり前にオーロラを見ることができると思っていた。しかし,B&Bでチェックインをしたとき,オーロラについて尋ねたらまったくもっていい返事が聞けなかった。オーロラ? それなあに? みたいな反応であった。私はその反応で落胆したのだった。それ以来,オーロラを見にきたと言うこと自体恥ずかしい気がしてきた。
しかし,オーロラが見られないのなら,この地で他にしたいことがない,というか,他に何があるのか全く調べていなかったので,3日間をどうやって過ごそうかと思った。
フェアバンクスのダウンタウンは閑散としていた。道路は広く駐車帯もあるから車なんてどこにでも停められるし,歩道を歩いている人もほどんどいなかった。ただし,年配の日本人らしき女性がふたり,地図を見ながら歩いているのを見つけてたときはびっくりした。いったい彼女たちは何をしにきたのだろうと思った。あれは幻想だったのだろうか?
少しだけ町を走り回ってから適当なところに車を停めてダウタウンを歩いてみたが,寂れた田舎町にすぎなかった。レストランもあるにはあったけれど,特に食べたいというものもなかった。土産物を買う気もないというのはハワイに行ったときと同様であった。しかも,行く前に私が予測していたような「日帰りオーロラツアー」なる看板を掲げた旅行社の1件も見つけられなかった。
そこで,ともかく,ビジターセンターがあるのでそこに行ってみることにした。
先に書いたオーロラの件だが,私は,フェアバンクスのダウンタウンにも,ハワイのように旅行者用の現地ツアーを扱うような店舗がどこにでもごろごろあって,そこでオーロラツアーを申し込んでそれに参加すればいいや,くらいに思っていたから,オーロラがどこで見られるか,ということすらまったく知らなかった。そこで,ビジターセンターに行けば手がかりくらいは掴めるかもしれないと思った。
ビジターセンターにも広い駐車場があって,私は車を停めてなかに入った。ビジターセンターは充実していて,アラスカに関する展示や,さまざまなパンフレットが並んでいた。私はまずフェアバンクスの見どころを教えてもらって地図も手に入れた。しかし,オーロラツアーのパンフレットもかろうじてあるにはあったのだが,実施時期が9月からということであった。私はすっかり落胆した。オーロラを見る夢はどんどん遠くなっていくのであった。
そんなこんなでビジターセンターの展示を見学をしていたら,雨が降ってきた。この時期のフェアバンクスは天気が悪く,これではオーロラどころではないということも行ってみてわかった。
私のテンションは限りなく低くなっていくのだった。