●カナダヅル●
この日は日曜日。アメリカでは週末だけファーマーズマーケットが開催されている,ということが珍しくなく,そういうチャンスはぜひマーケットに足を運びたいものだ。とにかく旅というのはその土地に住んでいる人がどういう生活をしているかということを実感するものだからである。また,こういう体験はツアー旅行では絶対に味わえない。
フェアバンクスでもタナナバレーでファーマーズマーケットをやっているというので行ってみた。しかし,予想に反して,2,3件のお店が出ていただけで閑散としていた。売っているものも花とか野菜とか,そういったものが少しだけであった。アラスカという地は,決定的に何かをするには人が少ないのだろう。
アラスカをはじめ,フィンランドでもそうだったが,私はこうした極北の地がなぜか懐かしい。こういう土地に住んでゆっくり室内で学問をしたり音楽を聴くという生活は悪くない。そしてまた,幼年期よりアウトドアに慣れ親しんでいたら,無限の楽しみが生れるに違いないと思うのである。
しかし,実際にそういう生活をしてみると,信じられないほどの困難が待ち受けているかもしれない。それはともかく,歳をとるにつけて,私は,この,異常に人が多く,何を求めているのかわからねどみんなで崖をよじ登っているだけの日本という国の姿にやりきれなくなる。
予想に反して何もなかったマーケットを後に,クリーマーズフィールドという野鳥公園へ行った。幸運にもちょうどこの時期だけカナダヅルが渡ってきているということだった。また,その期間を利用してこの3日間だけフェスティバルが行われているということなのだが,ここもまた,数件の屋台があるだけで静まり返っていた。
カナダヅル(Grus canadensis)はツル目ツル科に分類される鳥類の一種である。北アメリカとシベリア北東部極地で繁殖し,冬季はアメリカ南西部に渡る。日本でも稀な冬鳥としてほぼ毎年数羽が記録されているという。
成鳥は灰色で,翼には褐色みを帯びた羽が混ざっている。前頭部は赤く頬が白く暗色の長く尖った口ばしをもつ。足は暗色で長く飛行の際には後に長く延びた足とまっすぐ保った長い首が特徴的である。
繁殖地ではツンドラや草原地帯の沼や湿地に生息し,つがいで広い縄張りを持っている。枯れ草を積み上げて巣を作り,2卵を産む。
カナダヅルの繁殖地はカナダ中部及び北部,アラスカ,アメリカ合衆国中西部と南東部,シベリア,キューバなどの沼地及び湿原である。浅い水場や湿原で歩き回り,時折その嘴も使って餌を探す。雑食性で昆虫類や水辺の動植物,齧歯類,植物の種や実を食べる。