エアーズロックに登ることができるということすら知らなかったのですが,数年前,将来エアーズロックに登ることができなくなるというニュースで,逆に登ることができるということを知りました。それでも,私はあんなところに登る気もなく,この旅を計画していたときにはすでに登るのは禁止されたものだとばかり思いこんでいました。
そんなわけで,私はエアーズロックを見にいこうとは思ってもまさか登るなどということは考えてもいなかったのです。それが旅に出かける数か月前に,登頂ができなくなるのは2019年10月26日からで,まだ登頂は禁止されていないということを知って,登れるんだと思いました。しかし,登頂が禁止されていないといっても,いろんな条件で登ることができない日のほうが多いということだったので,本当に登ることができるとは思えませんでした。
せっかく来たのだからと,ともかく登頂口に行ってみました。
聞いた話では,ここ10日くらいは条件が悪く登頂禁止だったそうです。その条件というのは,雨が降ったり前日に降ったりしたときは岩が滑るから禁止,風が強いときは禁止,35度を越す暑いときは禁止,さらに,アボリジニの人たちの儀式がある日は禁止,というもので,ネットで調べたところでは,年間で登ることができるのはわずか60日程度なのだそうです。
そんなエアーズロックの登頂なのですが,それでもぜひ登りたいという人向けのツアー旅行があるそうで,そのツアーでは登るチャンスが3回用意されていると書かれてありました。そんなツアーに参加して,それでも登頂できなかったらショックでしょうが,これでは登れない可能性のほうが高そうです。登れる確率はオーロラ以下です。
私は「モッテいる」人間なので,これまでも数多い幸運に恵まれて,オーロラは何度も見たし,皆既日食も2回見にいって2回とも見ることができたし,たまたまメジャーリーグを見にいっても偶然日本人投手が登板するということが少なくなかったのですが,さすがにこのエアーズロックには登れると思ってもいませんでした。
日の出を見終えて,そのままエアーズロックの登頂口に向かいました。
エアーズロックに登頂する道のある入口は一か所だけで,そこがどこなのかは昨日下見がしてありました。午前7時,まだ気温は30度程度でした。駐車場に着くと,すでにほぼ一杯の車が停まっていたので,ひょっとしたら登頂できるのでは? という希望が起きました。駐車スペースをやっとみつけて車を停め,登頂口を見ると,登っているではないですか! 本当にびっくりしました。こうなれば私も登るしかありません。
服装はそれほど大仰なものでなくてもいいのですが,忘れてならないのはとにかく水,そして日焼けしないように帽子や日焼け止めクリームです。コバエは地上付近にはたくさんいても,さすがにエアーズロックの上にはいません。
さあ,必要最小限の荷物を持って出発です。
オーストラリアの国立公園の多くは単なる岩山で,私は以前,別のよく似た岩山に登ったことがあるからそれと同じようなものだろうと思っていましたが,さにあらず,比べものにならない非常に険しいものでした。山頂までの距離のはじめの半分はかなりの急坂で,登頂コースには鎖がつながれていてこれを支えに登ります。手を離せば墜落します。これが非常に辛いものでした。途中で断念して下山するおばさんがいました。せっかく登ることができる日に来たというのにそれはそれで残念なことです。登山というのはあきらめるという決断も大切ですが,人にはそれが難しいのです。
ようやく鎖のある急坂を登りきると,それで距離にするとコースの半分,高さにすると3分の2が過ぎたのだそうです。その後は比較的なだらかで,白い破線が引かれたところに沿って歩きます。時折かなり急な場所があって,そこを過ぎるのに苦労しながら奮闘すること1時間,なんとか登頂することができました。