大雑把に言って,オーストラリアには3つくらいのタイプの町があります。ひとつ目はシドニーとかブリスベンのような大都会です。ふたつ目はもう少し規模の小さな都会です。こうした都会,というか街は,中央に片側2車線から3車線ほどの道路が走っていて,そのまわりにレストランや商店があります。街の中央に教会や役所,そして公園があります。さらに,モールがあります。
そして,それより小さないわゆる町ですが,こうした町は,片側1車線ほどの道路の両端に商店が並んでいて,町の中央は大概スクランブル交差点となっています。道路の端は駐車帯です。町の端から端まで歩いてもさほどの距離があるわけでもなく,そうした町の商店には生きるのに必要なものが最低限あるだけです。
クーナバラブランもまた,そうした町のひとつです。
こうした町に生まれた人がどういう生活をしているのか,私にはイメージがわきません。お店の営業時間は午前9時から午後5時までとかで,休日はお休み。仕事をしていないとき,そうしたお店で働いている人は何を楽しみに生きているのでしょう。テレビ番組だって,おもしろそうなものがあるわけでないし,プロスポーツもそれほど盛んということもない。
逆に言えば,そういった,時間がゆったりと流れる世界で毎日をおくることこそが,人が生きるということであって,日本のように,早朝から深夜まで働いて,満員電車で通勤して,帰りに酒を飲む,などというのは異常なことなのでしょう。学生も,毎日課題やらテストに追われ,休日となれば「ブカツ」。だからといって,暇な時間があればゲームをするかアニメを見るかくらいで,本を読むわけでもなく,何かを作るでもなく,そうした日常からは「学歴」というメッキの「ブランド」を手に入れるだけで,実際は何もできず,何も知らず,人とコミュニケーションすら満足にできない…。
こうした場所に来ると,私は,生きるという根本的なことがわからなくなります。
お昼は,クーナバラブランの端にあるレストランにしました。ここは前回来たときにも入りました。というより,このお店しかない,というべきでしょうか。ここは気持ちの落ち着くいいお店です。
午後は,クーナバラブランから少しドライブしてバランディン(Barandine)というところまで行ってみました。バランディンなんて,ほんとうに小さな町だったのですが,そこにはなぜか無料の立派な博物館がありました。中に入ると,学芸員のような女性がいたので,話をしました。こんなところに来る日本人はいない,と言っていました。
クーナバラブランでも十分に時間を持て余すのに,この町に住んだら,いったいどうやって時間を費やすのでしょう? クーナバラブランに戻って,この日の夕食もモーテルのレストランにしました。
私のクーナバラブランでの日々はこうして過ぎました。