一般道や高速道路を走っているとき,少しでも渋滞しているとすぐに車線を変更する車があります。そうして縫うように走っていくわけです。
一般道では,車の間を縫うようにして追い越しながら先に走っていった車なのに,その先の信号や踏切で停車していてまた追いつくと,一体あの車は結局何をやっていたんだ,とあきれます。また,高速道路では,少しでも空いた車線,車線に頻繁に車線変更して走っていった車が,その先で変更した車線が混みはじめて,結局,変更する前の車線のほうが早かったりすることも多々あります。
さらには,少しでも早く早くと追い抜いたり車線を変更してたとえ少しくらい早く目的地に到着しても,そこで何をするでもなく暇つぶしをしているくらいなら,危ない目をしてまで追い越したり,車線変更をする必要などないんじゃないか,と思います。
これと同じことが,現在のキャッシュレス社会です。
ポイント還元やらなにやらとやたらと,それぞれの会社が取り込み競争をしています。しかし,このくだらない競争によってお互いの足を引っ張り,結局は不便になっているだけです。日本では何事もこんなことをしているから,この国は世界からどんどんと遅れていくのです。損して得とれ,わずかばかりの利益を得るために同業者との協調をせずに足の引っ張り合いをしていても,そのすべてがだめになるだけです。これこそが,順位争いに明け暮れるだけが価値観のすぐれた教育の成果でしょう。
少し以前には,Tポイント,dポイント,Rポイント,ポンタなどのポイント競争がありました。その結果,買い物をするときに,その店が対応しているポイントカードを持っていないと何か損した気になるので,結局,その店で買うのを辞めてしまうという弊害のほうがずっと多いような気がします。しかも,実際,1ポイント,1ポイントと貯めたところでどれだけ得になることでしょう?
私は,ポイントを貯めることなどどうでもいいのですが,支払いでレジでポイントカードを持っていますかと聞かれるのがうざったいので,以前はすべてのポイントカードを持参していました。今は,アプリを iPhone に入れています。しかし,こんなことをしても,1年で溜まるポイントなんてせいぜい100円相当くらいのもので,そんなことなら,コンビニで買えば1本150円もするコカ・コーラをスーパーマーケットで1本78円で買う方がずっと得なのです。
私は今では現金をほとんど持ち歩きません。万一のときのためにと,免許証入れに運転免許証とETCカードと一緒に1,000円札を2枚入れて持ち歩いているだけです。支払いのほとんどは iPhone で済ませます。現金,特に小銭を持つとかさばるし,現金で支払うことが煩わしいし,さらに現在は,コロナ禍で危険だと思っているからです。
このご時世で,未だにレジで現金で支払っている人を私は信じられません。そのなかでも特に,何でも10,000円札を出しておつりをもらっている人や,その反対に,おつりがないようにやたらと細かい小銭を時間をかけて探して出している人,その両方がとても迷惑に思えます。
未だに現金で支払っている人と,未だに図書館で紙媒体の新聞をぐちゃぐちゃとうるさく音を立ててめくっている人,そして,禁煙の職場の外で隠れてタバコを吸っている人など,私にはありえない世界です。
ここ数年キャッシュレスを実行してみて,私は,ようやく iPhone だけでおおよその支払いが事足りるようになりました。どのお店では何が便利なのか,だから,何を iPhone に入れておけばいいのかがわかってきました。そして,簡単に支払いができるようになりましたが,それまでにずいぶんと時間がかかりました。
暇な私でもこれだけ大変だったわけだから,多くの多忙な人はまだ使いこなせていないように思います。便利になるはずのキャッシュレスなのに,日本では,その方法が多すぎ複雑すぎで混乱していて戸惑うので,これでは現金で支払うほうが手っ取り早く便利になってしまっているのです。
数年前まで,この国は,今でも,ちょんまげを結って刀を差して着物姿で歩いているように見られていたといいます。さすがに今は,街の外観や姿こそ世界並みとなったのですが,その内実は今もまだ,江戸時代のようです。何事も世界から遅れてしまったこの国はなんと滑稽な社会なのでしょう。