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●ここは「石化の森」だった。●
 何の知識も持たずこの国立公園にやって来た私は,ここは動物の「化石」(fossil)がいっぱい出てくる「森」深い場所だと名前から想像していたが,実際は,動物の化石も出るがそれよりも木の化石がごろごろと横たわる悠久の大地であった。
 調べてみると,この国立公園の名前は「Petrified Forest National Park」 なのだった。「petrified」というのは「化石」ではなく「石化」。つまり,この国立公園の名前は「化石の森国立公園」ではなく「石化した森の国立公園」なのだ。そもそも「化石の森」などという和訳(誤訳?)がいけない。「化石の森」と「石化した森」ではずいぶんとイメージがちがうではないか。私は「化石の森」には興味を抱かないが「石化した森」なら行ってみたいと思うが,それは私だけだろうか?

 私は,ここに来るまで「化石」なぞほとんど興味がなかったから,帰ってからさらに調べてみることにした。が,調べるうちにだんだんと謎が深まってきた。
 そもそも「石」とは何だろう? 考えてみれば「植物の死骸」と「石」の明確な相違さえ知らないではないか。いったい,生物の死骸」と「石」の明確な区別とはなんだろう? などという,これまでは当たり前のように思ってきたことすらわからなくなってきた。
 暇になった私はこのごろ学問に飢えてきたが,若いころにこうしたこだわりをもって勉強していたら,まったく別の人生になっていたかもしれない。何事も調べれば調べるほど興味が増して,謎が深まってくる。
 私が痛切に感じるのは,専門用語におかしな日本語を当てはめるから余計にわからなくなるということだ。原語のまま教えたほうがずっと役に立つ。こんなことをしているから,学生が原書を読むのにも苦労するのだ。
 学生のころ,地学で「デボン紀」やら「ベルム紀」などはカタカナなのに「三畳紀」「白亜紀」などが漢字なのかが気になって,好きになれなかった。なにかうさん臭いのである。「デボン紀」(Devonian),「ぺルム紀」(Permian),「ジュラ紀」(Jurassic),「石炭紀」(Carbon-iferous),「三畳紀」(triassic),「白亜紀」(Cretaceous)である。
 それは,天文学でも「dwarf planet」(「小人惑星」の意)を「準惑星」などという紛らわしい名前にしているのも同様である。
 余談だが,世界史でも「捕囚」(Captivity),「三位一体」(Trinity),「寄進」(Donation),「黒太子」(Black Prince),「未回収」(Irredentism)のように,日本語にされてもなんのこっちゃというものが少なくない。

 さて,「化石」(fossil)というのは「地質時代に生息していた生物が死骸となって永く残っていたもの,もしくはその活動の痕跡を指す」のだそうだ。ここで,「地質時代」(geological age)というは,地球の誕生(46億年前)から有史時代以前の地質学的な手法でしか研究できない時代のことだ。遺骸が地層にとじ込められたのち,肉などの軟質部は通常化学変化により失われるが,骨や殻,歯などの固い組織の部分が鉱物に置換されて残っている。また,「化石」は生物学上の分類にしたがって「動物化石」「植物化石」などのように分類される。

 この「石化の森」は,2億2,500万年前の「三畳紀」(恐竜の繁栄した「ジュラ紀」のひとつ前)のころは緑豊かな土地だったらしい。ゆったりと流れる川には魚の先祖が泳ぎ,森にはマツやスギが繁茂していた。これらの木が,嵐などで倒れ洪水で砂と泥に埋もれた。普通はこの段階で腐敗するのだが,上流からどんどん運ばれてくる泥が丸太の上に何百メートルも堆積したために腐敗を免れた。また,当時,この近くには火山があって泥の中に大量の火山灰が含まれていたために,水の中に溶け出したケイ素(ケイ素は火山灰に含まれている)が木の細胞と反応して石英の結晶を作り出した。やがて結晶は少しずつ成長して丸太全体を包み,ついには木を石に変えてしまった。
 その後,大地は浸食され石化した木「珪化木」だけが残ったのが,現在の化石の森である。ここでは,長かった丸太はたいてい輪切りになっているが,それは大地が隆起したときの圧力や地震によってひびが入り,その割れ目に入った水が凍り膨張して割れ目を広げ,やがて自然に裂けたのだ。いずれはもっと細かく粉砕され砂に戻る運命にあるという。