●アメリカ天文学の聖地●
ローウェル天文台では広く一般に公開されているので,だれもが宇宙の歴史や現代科学の研究に接することができる。街の中にこうした施設があるので,私はフラグスタッフに住む人をうらやましく思う。また,フラグスタッフは夜空の暗さを守るためにさまざまな規則が設けられている。
私はチケットを購入して,まず,はじまったばかりのレクチャーを聴いた。その後,ガイド付きウォーキングツアーに参加して,構内を見学することになった。
まず,レクチャーでは,ローウェル天文台の過去と現在の研究活動に関する説明があった。そしてウォーキングツアーで,天文台の施設を見学した。24インチ屈折望遠鏡は圧巻だった。また,ドームの外では太陽望遠鏡が設置されていて,黒点を見ることができた。ただし,この時期,というか,近年,太陽には目立った黒点が見られず,この日も太陽面にはまったく黒点がなかった。
このウォーキングツアーでは冥王星を発見した13インチ天体写真儀の見学は含まれていなかったので,がっかりしたが,調べてみると,13インチ天体写真儀は時間を指定して公開されていることがわかったので,指定された時間にドームに行ってみた。
時間が近づいても私のほかにだれも来なかったので心配になってきたころ,スタッフが現れた。結局,私がこれを見るためにわざわざ日本からやって来たといっても誇張でない13インチの美しい天体写真儀は,私ひとりの独占となった。スタッフの人にいろいろ質問したり,記念写真を写したりと,思っていた以上の体験ができて,大いに満足した。
夕方になったので,ひとまず天文台を出て,夕食をとってから,ふたたび,天文台に来ることにして,近くあったファミリーレストラン「IHOP」で夕食をとった。
「IHOP」というのは「International House of Pancakes」の頭文字が店名になっているファミリーレストランで, アイホップといえばパンケーキ,フレンチトースト,ワッフル,卵料理とベーコンというアメリカンフードが食べられるお店である。
再び天文台に来てみると,先ほどとは違い,非常の多くの人が天文台に来ていて,車を停めるのも苦労するほどであった。
この天文台では,天気がよければ,毎晩,ローウェルが火星を観測した望遠鏡で天体を見ることができるのだ。ドームには,多くの人が望遠鏡をのぞくために長い列ができていた。また,ロタンダ 博物館では,一般を対象にして,天文学のレクチャーを行っていた。館内はびっしりと人で埋まっていて,かなり難しい内容のレクチャーなのに,関心をもって聞き入っていた。
この天文台にかぎらず,アメリカのこうした施設は,どこも,こうした一般を対象としたさまざまな企画が行われていて,平日であっても多くの人が参加しているのにいつも驚く。これもいつも書いていることだが,日本の,テストで点をとるだけが目的の勉強とは本質的に文化に取り組む姿勢が違うように感じる。
こうして,私は,おおいに満足して天文台の見学を終えた。
天文台から宿泊先のモーテルの戻る途中,フラグスタッフのダウンタウンを散策することにした。このダウンタウン,駐車場はどこも有料で,しかも,なかなか停めるスペースがないのだが,夜になると無料で開放される。私はある駐車場にスペースを見つけて車を停め,駐車場の説明書きを読んでいると,通りかかった人が「無料だぞ」と私に話しかけてきた。アメリカ人というのは,いつもこうして親切だったりするのだ。
この,かつてルート66が通っていたのどかな町は,夕方,星空を守るために薄暗い電灯がともり,なかなかすてきな雰囲気になっていた。私は,ずっとこの町に来たかった,その願いがかなって,しかも,この日はやりたかったことをみんなすることができたことも併せて,こころからうれしくなったことだった。




