今日は,冥王星の衛星の発見についてです。
現在,冥王星には五つの衛星が発見されていますが,最大なものはカロン(Chron)です。カロンは冥王星の7分の1もの質量をもつ巨大な衛星です。
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●カロンの発見
カロンは,1978年6月22日,ジェームズ・クリスティ(James Walter Christy)さんが,フラグスタッフ郊外のアメリカ海軍天文台にある口径61インチ(1.5メートル)の反射望遠鏡で写した冥王星の写真から発見しました。
発見したジェームズ・クリスティさんは,この衛星の名前に,妻の名前 Charlene のニックネーム Char に当時元素の名前などの語尾に on をつけるのが流行していたことから,Chron とすることを思いつきました。Chron という言葉を調べてみると,それは,ギリシア神話の冥府の川・アケローンの渡し守カローンのことだったのです。偶然にも,冥王星が冥府の王プルート(Pluto)の名にちなむことから,この名前は冥王星の衛星にふさわしい命名だったわけです。
この名前の由来を知っている人たちは,いまでもカロンをジェームズ・クリスティさんの奥さんの名前であるシャーロンとよんでいるのだそうです。
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カロンは衛星にしては惑星に対する質量があまりにも大きく,また,冥王星とカロンの共通重心が冥王星とカロンの間の宇宙空間にあるため,冥王星とカロンは主従関係でなく,二重惑星であるとの解釈もされています。
また,冥王星とカロンは互いに同期回転しているため,カロンは常に冥王星に同じ面を向け,冥王星もカロンに対して常に同じ面を向けています。よって,冥王星およびカロンから互いを見たら,空の1点から動かないように見えるそうです。
なお,カロンの発見ののち,冥王星には,ハッブル宇宙望遠鏡によって,さらに四つの小さな衛星が発見されましたが,それらはカロンが生じるきっかけとなった冥王星への天体の大衝突で飛び散った氷の溶岩が、冥王星を公転する軌道に乗っかったものが起源であると考えられています。
まず,2005年10月31日に発見されたのが「S/2005P1」と「S/2005P2」です。「S/2005P1」は後にヒドラ(Hydra),「S/2005P2」はニクス(Nix)と命名されました。ヒドラはギリシア神話の地下を守る怪物ヒュドラからつけられたもの,ニクス名はギリシャ神話の夜の女神ニュクスよりつけられたものです。これらの名前は冥王星探査衛星ニュー・ホライズンズの頭文字N・Hにも因んでいます。
次に,2011年7月20日「S/2011P1」が発見され,のちに冥界の番犬であるケルベロス(Kerberos)と命名されました。さらに,2012年7月11日「S/2012P1」が発見され,冥界と現世の間を流れる川および女神であるステュクス(Styx)と命名されました。