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●CAのお仕事●
 離陸してからずっと外を見ていた。眼下に広大なアメリカの大地が見えた。ヨーロッパと違って,アメリカからの帰国便は飛行機が西に向かって飛ぶ。つまり,地球の自転と反対方向なのである。
 地球は半径が6,380キロメートル余りなので,地球の1周は,40,000キロメートルほどである。1日に1回転するから24で割ると,時速1,500キロメートルとなる。これが赤道にいるときの自転速度である。
 ロサンゼルスから東京に帰る飛行経路は円周がもっと短いから,時速はおよそ1,000キロメートルといったところである。飛行機の時速は800キロメートルから1,000キロメートルだから,自転よりほんの少しだけ遅い。ロサンゼルスからの帰国便では,地球の自転と飛行機の進む方向が反対だから,飛行機は飛びながらほんの少しずつうしろに下がっているということになるわけだが,およそほぼ同じ速さと考えることができる。したがって,機内ではずっと同じ時間のままということになる。
 だから,窓から見た太陽はずっと同じ場所にある。窓を閉め切っているからわからないだけで,要するに,乗っている間中ずっと昼間なのである。そして,太平洋の真ん中にある日付変更線を越えるときに,日にちだけが1日進み,行きに得した分を返還する,ということになるわけだ。

 その昔は飛行機に乗ると,客室の中央に大きなスクリーンがあって,乗客はみな同じ映画を見た。そんなのどかな時代だった。それが今はそれぞれの座席にモニターがあって,自分の好きなものを見ることができるようになった。これだけハードウェアが凝っているのに,ソフトウェア,つまり,コンテンツが固定されていたりして,なかなか好きなものがない。
 現在では,家にいても Amazon Prime などで映画が見られ,音楽を聴くことができるが,Amazon Prime の方がマシなプログラムが並んでいる。
 やろうと思えば何でもできる時代になったのに,そして,機内で10時間も時間を過ごすのに,ハードウェアは進化してもソフトウェアのほうは工夫がなさすぎるというわけだ。

 考えてみれば,日本で夜行の高速バスなどを利用して旅行をするときだって,6時間以上の長い時間を狭いバスの中で過ごすのだが,こちらの方は寝ていれば到着してしまうから,退屈する,ということはない。ところが,どうして飛行機の機内で同じようにくつろげないのかと考えると,それは,食事のせいだと思い当たった。機内では,食事が運ばれたり片づけられたりとあわただしく,そのために,ゆっくりと過ごせないのだ。そんなもの,乗るときに弁当とペットボトルでも配ってしまえばそれでいいように感じる。そうすれば,食べたいときに食べて,寝たいときに寝ればいいわけでわずらわしくないのだ。それぞれに,牛肉がいいか鶏肉がいいかなどと聞きながら食事を配っているから,時間もかかるし,煩わしい。
 飛行機に乗ると,非常時以外,客室乗務員の仕事は,食事を配って片づけることだけのような気がしてならない。かつてはスチュワーデスといった,それは憧れの花形職業だったように思うのだが,今日,それが CA とよばれるように変わったけれど,その仕事にさほど魅力があるとは私には思えない。ちなみにCAというのは cabin attendant の略称であるが,これはジャパニーズイングリッシュ。英語では cabin crew,もしくは flight attendant という。

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