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 NHKBSプレミアムで放送されていた「京都人の密かな愉しみ」の書籍が出版されていることを,うかつにも私は知りませんでした。この本が出版されたのは2018年3月ということなので,それはすでに2年近く前のことだったのです。
 私はこれまでずいぶんこの番組についてはブログに書いてきたので,この書籍のことを書かずして,この番組についての私の記事は終結しないのです。
 この本の内容は「京都人の密かな愉しみ」のバイブルのようなものであり,この番組のすべてが詰まっています。私は,この番組で紹介された京都のすてきな場所のほとんどに行ったこともあり,とても懐かしいのですが,それがこうして一冊の本になったことに「密かな愉しみ」を感じてとてもうれしく思います。

 その後,「京都人の密かな愉しみ」は新シリーズ「Blue 修行中」になりましたが,何事も続編は「やらなきゃよかった」というもので,私には新シリーズは「ないもの」です。
 番組のタイトルにある「密かな愉しみ」というのは実は不倫だったというのがこの番組のオチで,主人公である「理想の京女」沢藤三八子さんは好きな男とともにパリに旅立ち,番組が終わりますが,この三八子さんを演じたわれらの常盤貴子さんも,沢藤三八子さん同様に「旅するフランス語」という語学番組だか旅番組だかわからぬ楽しい番組に出演するために実際パリに行くのです。つまり,以前このブログに書いたように,「京都人の密かな愉しみ」のホンマモンの続編は「旅するフランス語」なのですが,その「旅するフランス語」のロケをまとめた「旅するフランス語~常盤貴子の旅の手帖」という美しい書籍もまた,存在します。いわば,この2冊の本がそろったことで完璧だといえるのです。
 こうした「大人が夢を見ることができる番組」はなかなか存在しないものなので,私にはいつまでもこの番組を心に留めておくことができる貴重な蔵書となりました。

 これもまた,このごろ何度も書いていますが,世界中の観光地はどこも「オーバーツーリズム」に毒されています。私は何も,多くの観光客が来るのがいけないといっているわけではないのです。それはたとえば,クラシック音楽のコンサートに来て,ロクに曲もきかずに居眠りをし,終わった途端に「ブラボー」とさけぶ,とか,星空の美しいという場所に大挙して押しかけて懐中電灯を振り回す,とか,立ち入り禁止の場所に入り込んで三脚を立てて写真をとる,とかいうような,およびでないことが起きていることが嘆かわしいのです。その「オーバーツーリズム」の最も顕著な日本の観光地が京都です。また,ウエディングフォトで世界中の観光地が迷惑をこうむっていますが,京都では京都府立植物園がそのターゲットとなっているそうです。
 そうしたことが理由で,私は,あれだけ通っていた京都にはまったく足を運ばなくなりました。そんなこともあって,私が好きだった京都は,もう,私の心のなかにだけに存在しているんだなあ,そんな寂しさを感じていました。しかし,この本には,私の大好きだった昔の京都の魅力がいっぱいつまっています。これを手元においておくだけで,昔の京都の魅力がよみがえります。そうした意味で,この本は,私が大切にしていた京都に封印をするために生まれてきたようなものなのです。

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