●最も美しい湖●
国立公園のゲートを越えてもまだまだクレーターレイクははるか南で,依然,クレーターレイクハイウエイという名前の道路が穏やかに広がる草原と木立の中を延々と続いて行くだけであった。
遠くに煙が立ち上っていたが,それは山火事であった。アメリカでもオーストラリアでも,山火事が頻繁に起き,日本でも時折ニュースになる。2019年の年末,オーストラリアでは大規模な山火事が起き,多くのコアラが死んでしまったというニュースは記憶に新しい。私が2019年春エアーズロックに行ったときも,そうした山火事を防止するために,わざと火を起し,大平原を焼き尽くしているのを見たが,せっかくの青空が灰色に濁ってしまっていた。
大自然というのは雄大で美しいだけのものではない。
やがて,大平原から景色が変わってきて,次第に道路も標高が高くなってきた。その先には多くの車が停車しているのが見られた。そこは駐車場で,どうやらクレーターレイクに到着したらしいことがわかった。まだ湖の姿は見えないが,その向こうに世界で7番目に深い湖クレーターレイクがあると思うと興奮してきた。
とうとうクレーターレイク国立公園に到着したのだ。ポートランドからはインターステイツ5を南に3時間走りオレゴン州南部まで行って,さらにそこから東へ2時間山の方へ行ったところにあった。遠い道のりだった。
クレーターレイクの北側から私はやってきたが,湖の入口辺りには,湖のクルーズ船のチケット売り場があった。しかし,残念ながら,チケットはすべて売り切れであった。それにしても,いつも不思議に思うのは,アメリカの観光地というのはどこも遠く来るのがたいへんで,途中はほとんど車の姿も見えないのに,どこへ行っても,到着すると,結構な観光客がいるということだ。いったい,どこからこれだけの人がやってくるのだろう。そしてまた,どこの国立公園も,きちんと整備され,ゴミひとつなく,こわれたようなガードレールもなく,道路もきちんと線が引かれていて,意味のない看板ひとつなく,ものすごく美しいのだ。
日本だと,どこに行っても,さびたガードレールやら,意味のない看板やら,廃墟やら,廃道が無残な姿をさらしているし,ゴミがすてられているし,まったくもってなさけないのだが,そうした安っぽさはみじんもないのである。
まず,湖の外周道路リムドライブ(Rim Drive)を走りながら,景色のよい場所に車を停めて,湖を見ることにした。その湖の美しさは筆舌に尽くし難いものであった。それは私がそれまでに見た中で最も美しい湖であった。




