急に思い立った無計画な3泊4日の北海道旅行でしたが,この旅では,思いのほかいろんな経験ができました。ここ数年,私は,世界中のさまざなところに出かけ,そのいずれの旅もまた,このごろは事前にほとんど何の準備をしないで出発しているのに,帰ってくるときは,非常に充実した旅になっていたのですが,今回もまた,それと同様でした。旅慣れて,コツがわかってきたのがその理由でしょう。
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この旅の目的は,史上最大級のネオワイズ彗星を何とかこの目で見たいというだけだったので,それ以外には,どこに行くかとか何をするかということはまったく考えていませんでした。
ただし,彗星を見るための機材だけはしっかり準備して持っていきました。とはいえ,それもまた,ここ数年,毎年のように星を見に出かけたオーストラリアに持っていったものと同じなので,特に事前に改めて支度をするという必要もなく,新たに何かを購入するということもなく,何年も使い続けているいつもの機材が入ったカバンをそのまま持ってきただけでした。ただし,今回は,彗星がどのくらいの視野に広がって見えるのかということが想像できなかったので,焦点距離が55ミリから200ミリのズームレンズを1本加えて余分に持っていきました。欲をいえば,さらに,広角のズームも持参すべきでした。それは,彗星の尾が思った以上に広がっていたからです。
留萌市について,この日の晩宿泊する場所に到着したのは午後5時過ぎでした。彗星は空の暗くなる午後8時以降に見えはじめるので,それまでに夕食をとって,それから彗星を見る場所を探すことにしました。
一番心配だったのは天気でした。天気予報では,この晩から日曜日までは快晴,ということだったのですが,空を見上げても,雲がたくさん出ていて,星が見えそうにはありませんでした。
まず,留萌市の中心街に行って,食事をすることにしました。駐車場のある店を見つけたので車を停めて中に入りました。せっかく北海道にきたのだから海鮮料理を食べようと思いました。入った店はまだ夕食には時間が早かったせいか,お客さんは私ひとりでした。
行ってみて知ったのは,この時期の北海道はウニが旬だったことです。
ずいぶん昔,稚内に行って旬のウニ丼を食べたことを思い出しました。しかし,いくら旬とはいえ,ウニ丼はおどろくほど高価でびっくりしました。昔,今よりお金がなかったのに,ウニ丼を高いと驚いた記憶もないから,あれから値上がりしてしまったのでしょうか? 旬のウニ丼は確かにおいしいけれど,そんな高いお金を出すほど好きなものでもなかったので,ウニ丼を食べるのはやめました。
食事を終えて,いよいよ彗星を見にいくことにしました。
留萌市には,夕日の絶景が見れらるという黄金岬があります。まず,そこで行ってみたのですが,海岸にあった街灯が明るくて,夕日を見るにはよくても,星空を見るような場所ではありませんでした。次に千望台という展望台に行ってみました。ずいぶんと坂を上っていくので期待していたのですが,ここもまた,展望台の駐車場の街灯が明るくて,星を見るようなところではありませんでした。
そこで,海岸線に沿って,国道239号線を北上して行くことにしました。しかし,どこまで行ってもけっこう明るく,また,駐車場もほとんどなく,海岸に降りることができるようなところが見あたりませんでした。時折,海水浴場があるにはあったのですが,すべて閉鎖されていました。もし閉鎖されていなくても,やはり,海岸には街灯が設置してあってその灯りが邪魔をするので,星を見るのに適した場所ではありませんでした。
このように,北海道の海岸ならどこでも簡単に満天の星が見られるだろうというのは甘い考えでした。目論見がはずれ,ずいぶんがっかりしました。
さらに進んで,小平町というところを過ぎたあたりに広い空き地を見つけました。そこには車が2,3台停まっていました。この空き地から川に降りることができて,川にかかる国道の橋の下をくぐると海岸に出られることがわかりました。停まっている車は,海岸で釣を楽しんでいる人たちのものでした。海岸は北西に面していて,海岸には街灯はありませんでした。国道を車が通りますが,国道は彗星の見られる方角とは反対側なので影響はなさそうでした。ここなら,晴れてさえいれば,彗星は容易に見られそうだったので,この日はそこで写真を写すことにしました。