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これまで走ってきた国道232号線は,天塩町で内陸部に入って国道40号線と合流して稚内市に向かいます。私がサロベツ原野に来たのはネオワイズ彗星を見るためだったので,ともかく,サロベツ原野のどこで彗星を見ることができるかを調べるために,天塩町からは,国道232号線を進まず,サロベツ原野を通っていく道道106号線を走ることにしていました。
しかし,ここでもまた,道路標示がいい加減で,道道106号線に入る交差点を見過ごしました。
しばらく天塩町の町中を走っていって,どうやら行き過ぎたと思い,引き返すことにしました。
道道106号線はもっと狭い道路かと思ったのですが,大平原を片側1車線の2車線道路がまっすぐにずっと続いていて,すごく雄大でした。右手にはものすごい数の風力発電の風車が設置されていました。この道路はほとんど車が通らなかったのですが,時折走る車は,速度制限などお構いなしに,ものすごいスピードで私の車を追い越していきました。
時間はまだ,午後6時少し前でした。
私はサロベツ原野を観光に来たわけではなく,星を見る場所探しに専念していましたが,それでも,美しい風景に魅了されていました。途中,内陸部に行く道路との交差点があって,そこを進むとにビジターセンターに行くことができるとあったので行ってみたのですが,時間が遅く,すでに閉まっていたので,引き返しました。
アメリカの国立公園なら,数キロメートルごとに展望台が設けられていて,そこには広い駐車スペースがあります。サロベツ原野もそんな駐車スペースがあって,どこでも気軽に車を停めて星が見られると思っていたのですが,いくら進んでも,駐車スペースなどどこにもなく,ちょっと焦りました。道路には路肩もなく,道路わきに車を停めることもできません。あきらめかけたころ,やっと展望台があって,そこには車が4,5台停められる駐車スぺースがありました。そこからは海を臨むことができて,遠くには利尻富士も見えました。空が暗くなったら,ここで彗星を見ることに決めました。

まだ,空が暗くなるには2時間以上ありました。どこかで夕食をとってきてから,ここに戻って彗星を見ることにしました。しかし,サロベツ原野にはレストランの1軒もありません。こうなったら稚内まで行こうと,さらに車を走らせました。ここから稚内まではさらに30分以上かかります。
そのうち,どうせ稚内市まで行くのなら,もっと先の宗谷岬まで行って,そこで夕日が沈むのをを見ながら夕食をと思って,「Hey Siri」で尋ねてみましたが,宗谷岬は,稚内市からさらに50分ほどかかるということでした。これでは遅くなってしまいます。残念でしたが,断念しました。無計画な私は,まさか,この旅で稚内市に行くとは夢にも思ってもいませんでした。もしはじめからその予定なら,もっと早く宗谷岬まで行って,そこで夕食をとり,夕日を眺め,それから,サロベツ原野に行って彗星を見るという計画を立てることもできたのでしょうが,晴れるかどうかという次元で行動していたので,そんな考えが及ばなかったのが残念でした。
ともかく,稚内駅まで来ました。稚内の駅前あたりは,数年前に行ったアイスランドのレイキャビックの港あたりにどことなく似ていて,いい感じでした。駐車場があったので車を停めて,駅周辺を歩きました。ところが,稚内の駅前にもほとんど食事ができる店がみつかりません。駅の構内にさえ,何もありませんでした。なんとか駅前に閉店間際の店を見つけたので入りました。お客さんは私だけでした。そこでカニ飯を食べました。

食事を終え,サロベツ原野に戻りました。来るとき見つけたパーキングには,幸いなことに無粋な灯りはひとつもなく,彗星を見るにはとてもよい場所でした。問題は時折道道106号線を通る車のヘッドライトでしたが,車が通るのは10分に1台程度だったので,問題はありませんでした。
車を停めて,空が暗くなるのを待っていると,隣に1台の車が停まり,人が降りて,三脚とカメラを設置しました。どうやらその人も彗星を写しにきたようです。声をかけると,地元に住むカメラマンでした。仲よくなって,一緒に彗星を見ました。おかげで,楽しい時間になりました。
彗星は,2日前にこの場所で肉眼で見ることができたということだったので,期待が膨らみました。そもそも,この時点で私は彗星がどのくらいの明るさで見えるかもわかっていませんでした。
実際は,空が暗くなるにしたがって,あざやかな尾を引いた明るい彗星が空に浮かび上がってきました。北海道は緯度が高いので,彗星はほとんど沈ます,長い時間楽しめました。はじめのうち低い場所に雲が出てきたので心配したのですが,強い風が雲を吹き飛ばし,やがて快晴になりました。
なんとなく,国際宇宙ステーション(ISS)が通過するのを見たことがありますか,というような話をしていたら,偶然,国際宇宙ステーションが通過したのには驚きました。そんなことを知っていたら,国際宇宙ステーションと彗星を同じ画面に写すことができたのに,それだけがこころ残りとなりました。
どうやら,日本国内で,明るいネオワイズ彗星を見ることができたのは,北海道と東北の一部,そして,沖縄くらいだったようです。そして,そんな数少ない彗星の見られた場所には多くの人が訪れていたようです。しかし,さすがにサロベツ原野に来たのは,私とそのカメラマンだけでした。どうやってここを見つけたの,と聞かれましたが,それは単なる偶然でした。
  ・・
10時過ぎまで彗星を見て,留萌市のホテルに戻ることにしました。幸せな時間でした。来てよかったと思いました。それに,この日は,私が来る1週間前より若干彗星の光度は下がりましたが,見ることのできる高度が高くなったので,彗星が最も美しい時期でした。
深夜の北海道を走って,午前1時過ぎに留萌市のホテルに戻りました。深夜の人影のない北海道を走っていると,数年前,深夜のオーストラリア大陸を走ったときのことをを思い出しました。

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