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「2015夏アメリカ旅行記3」をはじめたが,8月18日の朝日新聞に,「デスバレーで最高気温54.4度の新記録」という次のような記事があったので,今日は「2015夏アメリカ旅行記3」を中断して,代わりにデスバレーの思い出を。
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89年ぶりの世界記録か?
カリフォルニア州の国立公園デスバレーで16日午後,気温54.4度(華氏130度)を記録した。世界気象機関(World Meteorological Organization=WMO)によると,専門家の検証を経て,公式記録として認証されれば,1931年以来の記録的な気温となる。
アメリカ米西海岸では熱波の影響で記録的な暑さが続いている。
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私がデスバレーに行ったのは2018年6月27日のことだった。
デスバレーは私がアメリカ旅行をはじめたころから行ってみたかった場所だった。
今考えるに,私には,ぜひ行きたかったという場所と行ってみたかった場所というのがあったようだ。ぜひ行きたかった場所というは,ニューヨークだったり,ボストンだったりだが,何としてでも行きたいと願い,そして,実際にまず行った場所であった。そして,行ってみたかった場所というのは,興味はあるが,行けるとは思えないからあきらめよう,という場所であった。
幸い,私は,どちらの場所もそのほとんどすべてに行くことができた。これは奇跡で,自分の幸運に感謝する。もし,今のようなコロナ禍の状況になって海外旅行に行くことが不可能になったのがあと数年早かったら,私はそうした場所の多くに今も行くことできずにいて,後悔だらけであっただろう。
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すでに「2018夏アメリカ旅行記」に書いたように,デスバレーに行った2018年,私はアメリカ国内の天文台を見てみよう計画の一環としてウィルソン山天文台とパロマ天文台をめざして,ほんとうに久しぶりにロサンゼルス国際空港に降り立った。そして,その旅の「ついで」に,ロサンゼルスからならなんとか行くことができるデスバレー国立公園とセコイア国立公園に寄り道をしようと思ったのだった。
このふたつの国立公園では,セコイア国立公園のほうが,デスバレー国立公園よりも,より行ってみたかった場所であったが,いずれの国立公園も,ロサンゼルスから決して近くはなく,この旅に出るまでは,できれば行ってみたい,という程度であった。
このブログには,旅の話題と星見の話題が多いので,私が始終そういう行動をしているように思われるだろうが,実際は,そのどちらも,家を出るまでは,結構気が重いのである。面倒だなあ,と思うのである。特に,星見のほうは,曇ってほしい,そうすれば行かなくて済むからあきらめもつく,などと祈ってしまうのだから,かなりの重症である。これを果たして本当の楽しみといえるのだろうか?
それに対して,旅のほうは,実際に出かけるときには,やはり,気が重く面倒だなあといった気持ちになっても,旅行に行く計画を立てチケットやホテルの予約をする段階が嫌いでないので,ついつい軽率に予約をしてしまうのだ。そこで,出かけざるをえない状況になっているから,なんとか重い腰をあげることができる。しかし,旅で出かけた先で具体的に何をするのか,ということを事前に調べる気にならないので,到着してから,やっと,何をしよう? と考えるといった無謀なことになる。
この旅もまた,同様であった。
ロサンゼルス到着後,ともかく,セコイア国立公園とデスバレー国立公園のある北西の方向に走っていった。今でも覚えているのは,その途中で,行けるかな,でも,遠いしなあ… と思いながら,6月にもかかわらずものすごく暑かったロサンゼルス郊外の田舎町のモーテルで散々迷っていたことである。このときの記憶は鮮明によみがえる。なにせ,ロサンゼルスから400キロメートル以上,5時間もかかるのだ。その間,ほとんどの場所は見渡す限りの荒れ地の中を道路だけが続いているのである。
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それでも,セコイア国立公園は到着さえすればいいのだが,デスバレー国立公園に行くのに心配だったのは,その遠さ以上に,気温であった。それも,自分の身体が持つか,ではなく,車が持つか,ということであった。私はメカに興味がないので,実際,車がどのくらいの気温まで異常なく動くのか,どういった設計になっているのか全く知らない。気温が摂氏60度を越すような炎天下でも問題なく動くように車は設計されているのだろうか? 調べてみても,室内の温度がどれだけ高くなるかというようなことは書かれているが,車自体の耐熱性がわからない。
しかし,ラジエーターがオーバービートするだの,炎天下でパンクしただのといった恐ろしい話はたくさん書いてある。いずれにしても,気温が摂氏50度になるような場所で車が動かなくなったり,パンクでもしたら,命が危険である。結局,私は,水を一杯買って詰め込んで,しかも,早朝に出発して,気温が50度にはならない午前10時までに観光を終えるという条件を決めて,デスバレー国立公園に出かけた。
幸い,私が行ったときの気温は午前10時で華氏109度であった。華氏109度ということは,摂氏42.7度。これが私が経験した最高気温であった。車も身体も特に何ということもなかった。
軟弱な私はこれで引き揚げたが,そのあとも,デスバレー国立公園を目指してぞくぞくと車がやって来たのには驚いた。アメリカ人はタフだ。この日の最高気温は,確か,華氏120度,摂氏48.9度程度であったらしい。それでも何の事故も起きていないから,華氏120度は問題ないらしい。
そんなわけで,私は華氏109度について語ることはできるが,この記事にあったおそるべき華氏130度という温度について語る資格はない。
私の住む近くにある名古屋市科学館に極寒ラボというのがあって,そこではマイナス30度が経験できる。寒いほうは,実際私はフィンランドのロヴァニエミでマイナス30度程度は経験したが,着こめば大したことはないのでなんとかなる。これは断言する。しかし,極暑ラボというのはない。それは,こちらのほうが身の危険があるのからだろうか?
ともかく,デスバレーは湿度が低いので,日本の夏の猛暑とは暑さの質が違う。私が経験した,たかが華氏109度の経験からいえば,この温度はフライパンの上の目玉焼き状態のようなものであった。しかし,寒さは服を着こめばなんとかなるが,暑さは服を脱いだところで直接体が暑くなるだけだから,どうしようもない。
いずれにしても,たとえ気温が華氏109度止まりだったとしても,この暑さを味わうことができたのはいい体験であった。一度の人生,暑さも寒さも経験するに限る。
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なお,私がデスバレー国立公園に出かけたときの顛末はこのブログの「2018夏アメリカ旅行記」をお読みください。