●「モロカイ島の日々」●
こうして,私は,滞在2日目にして,モロカイ島を隅々まで走ることができた。レンタカーを借りるとき,島を1周してもガソリンは半分も使わない,と言われた意味がよくわかった。
それにしても,この島についてはあまりに情報がないのに驚いた。また,情報があってもそれは古い情報で,今はなくなってしまったリゾートだったり,営業をしていないレストランだったりした。
そんなとき,「モロカイ島の日々 サンダルウッドの丘の家より」という1冊の本を見つけた。この本が出版されたのは2020年10月ということなので,私がモロカイ島に行ったあとのことだ。
著者は山崎美弥子さんという人だ。
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山崎美弥子さんは,1969年東京生まれで,多摩美術大学を卒業後,東京を拠点にアーティストとして活動していたが,一転して,2004年より船上生活をはじめる。そののち,モロカイ島のサンダルウッドの丘に家を建てる。
現在はそこから東に数マイル移動し,「島の天国131番地」とよぶその家で,心理学者の夫とふたりの娘,馬や犬たちと海と空や花を絵描きながら暮らしている。
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と紹介されていた。
こういう人を知ると,すごいなあと思ってしまう。私とは生活力が違い過ぎるのだ。
サンダルウッドの丘というのがどこにあるのかよくわからなかった。おそらくサンダルウッドとはSandalwood のことなのだろう。Sandalwood というのは白檀のことだが,白檀は,ハワイでは1790年代から貿易の対象となっていたということだ。さらに調べてみると,サンダルウッドピット(Sandalwood Pit)というものが見つかった。Pit は穴のことだ。森の中に作られたサンダルウッドピットは,船倉に収まる量を測定するために使用された。収穫したサンダルウッドをピットに入れていき,ピットいっぱいになると,サンダルウッドの丸太は山を下って待っている船に運ばれた。
そのサンダルウッドピットのあったあたりがサンダルウッドの丘なのだろう。場所は,モロカイ島の東側の山の中である。
林民子さんという山崎美弥子さんの友人が「モロカイ島の日々 サンダルウッドの丘の家より」を読んだ感想として,次のように書いていたので,引用してみる。
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ジェシーは歯がなく,白髪のロン毛というまるで仙人のような愛らしいおじいさんだった。私たちはジェシーおじいさんとモロカイの聖地のひとつである森を歩こう!
ということになった。森の一番聖なる場所に連れて行ってくれたとき,「持参した法螺貝を吹くから みんな目を閉じているように」とジェシーがいう。輪になり座ってジェシーの法螺貝を静かに聴き入っていると,ある方向から視線を感じ,無性に目を開きたくなった。瞼を上にあげ 周りの木々を眺めると,ある木と木と間からオレンジ色の光がまるで私たちを見つめているかのように輝いていた。法螺貝の演奏が終わった途端,その光は消えた。
ハワイの島の森の精は「メネフネ」とよぶ。ひょっとしたらその光は森の精「メネフネ」だったのかもねと嬉々として話をした。山崎美弥子さんは,森の精「メネフネ」からお役目を授かり,モロカイ島のネイティブ・ハワイアンの守り継がれてきた文化や精神性を日本に伝える役割を果たす人なんだろうな。
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なんともすてきな話だ。