●上空から見るハワイの島々●
オアフ島が見えてきた。
一般の人が簡単に行くことができるハワイ6島で,オアフ島から西に飛ぶのはカウアイ島だけで,残りのマウイ島,ハワイ島,モロカイ島,ラナイ島は東に飛ぶが,マウイ島やハワイ島に行く途中で機内から見ることができるのがモロカイ島とラナイ島である。
はじめてハワイに行ったときは何もわからず,オアフ島から飛び立った後,興味深く眼下の島々を見ては,これがどの島なのだろうと思った。それが今では島の形を見るだけでどの島かわかるようになった。
いずれにしても,最も遠いハワイ島でさえ,1時間程度の飛行で着いてしまうから,通勤電車と変わらない。今回行ったモロカイ島はもっとも近いから,わずか30分程度,しかも,プロペラ機だったから,高度も低く,地上がよく見えたし,上空に昇ったと思ったら,着陸態勢に変わってしまった。
もう,ホノルルの上空は,何度見たことだろうか。海にへばりつくように家々が見えはじめて,その東の端にはダイヤモンドヘッドがその姿が美しい。
滑走路に向かって旋回をし,やがて,飛行機は着陸した。
プロペラ機は機体が低いので,ゲートに横づけできないから,タラップを降りることになる。
このときはまだ,この後1年以上にもわたって海外旅行ができなくなるなんて夢にも思わなかったが,再び,こんな気軽な旅ができる日が訪れるのだろうか。
とはいえ,第1次世界大戦のころに流行ったといわれるスペイン風邪も2年の流行だったし,あと数年もすれば,今回のコロナ禍も歴史となるのだろう。また,第2次世界大戦は4年も続いたが,それでも世界は復興した。
しかし,そうした数年は歴史の教科書の年表を眺めればわずかな期間であっても,その時代に生きている人にはすごく長い期間であり,貴重な時間の浪費であっただろう。特に,多くの体験ができるはずの大学生やこれから旅を楽しもうと思っていた退職したばかりの人たちには,これほど不幸なことはないに違いない。
私は,この旅で念願だったモロカイ島に行くことができて,本当に幸運だった。これをもって,一度は行ってみたいと思っていたすべてのところに行くことができたからだ。
さて,空港の建物に入って,通路を歩いて,デルタスカイクラブのラウンジに急いだ。あとは,帰国便に乗るだけだが,空港の雑踏がきらいだから,時間まで,ラウンジでゆっくり過ごすのだ。ラウンジでは朝食もとらなければならない。
空港の建物の通路を歩いていると,眼下には,パーキングエリアにずらりと並んだリムジンカーが見えた。きっと,ハネムーンなのだろう。こうした商業ベースのハワイもまた,ハワイである。というより,多くの人にとってのハワイは,むしろ,この世界なのである。
しかし,私はそんな見せかけの虚栄を見て,すっかり現実に戻されて嫌になった。