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 今日は,8月10日「AERA dot.」の記事の話題です 。
 大井美紗子さんの連載「帰国ママのバイリンガル子育て奮闘記」に「"Please" でなんでも要求できるわけではない- 新幹線のアナウンスに帰国ママが違和感」という文章が載っていました。大井美紗子さんはライター・翻訳家で,アメリカで約5年暮らし,最近,日本に帰国した人だそうです。
 文章を引用してみます。
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 新幹線の車中,おや,と耳を疑うようなアナウンスが流れてきました。
  "Please keep a face mask on and refrain from talking."
 日本語にすればなんのことはない「マスク着用のうえ,会話はお控えください」という,今では耳にしない日はないくらい当たり前の注意喚起です。しかし,アメリカでこう言ったらムッとする人もいるんではないかと感じました。
 というのも "Please" ではじまる要求には,決定事項を一方的に通達するようなニュアンスが漂うことがあるからです。もちろん文脈や言い方によりますよ。よるんですが,「あなたがた,もちろんマスクつけますよね。会話も控えますよね。じゃ,よろしくお願いしますよっ」と有無を言わさず要求している感じ。
  (中略)
  "Please refrain from talking."
といわれたら……?
 言論の自由や他者との対話を何よりも愛するアメリカ人,おもしろくない人もいるかもなと感じたのです。
 アメリカで同じことを要求するとしたら,たとえばこんなふうになる気がします。
  "Conversing on the train may cause the spread of virus."
 または
  "We appreciate you refraining from conversation."
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とありました。
 記事では,そのあと,次のように "please" について内容が膨らみます。
  ・・・・・・
 "please" があればどんな要求も丁寧になるのかというと,否。大人の世界には "please" をつけるより丁寧な,間接的な要求方法が多々存在します。
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 つまり,英語の "please" は,多くの日本人が普通思っている意味の「お願いします」ではないのです。
 しかし,新幹線の車内放送の誤訳? 名訳? から図らずとも明白にその本音がみえてしまったように,日本語の「お願いします」というのは,実は,丁寧にみせかけただけの,「お願いします」の言葉がない命令以上の念押しの強い命令の言葉なのです。つまり,「お願い」という名の強制です。腹黒いのです。
 ネット上に,「お願いします」といわれても法律上は従わなくてもよい,といった弁護士さんのお話が載っているのですが,そんなものは建前だけで,従わなければ法的な処罰こそ免れてもそれ以上に陰湿ないじめに遭います。従わなければ名前を公表するといった行政の制裁がそれを端的に物語っています。日本は権力からして,古のころの村八分にはじまる,庶民をいじめることが正当化されている忖度国家なのです。

 ところで,私がずっと気になっているのが「ご理解ご協力をお願いします」という文章です。
 先日,病院に行ったとき,さまざなお知らせの掲示が張ってあるのですが,そうした掲示の最後に,決まって「ご理解とご協力をお願いします」と書かれていて,私はそれをうざったいと思いました。それは「お願いします」なんかじゃなくて,この言葉の裏には「そう決まっているから必ず守れ」と念押しで書かれた上から目線の偉そうな言葉としか思えないからです。
 ビジネス業界では,文章の最後に「ご理解とご協力をお願いします」と書くようにと習うそうです。きわめて日本らしい話です。甘い砂糖につつまれた毒まんじゅうです。
 しかし,ビジネス英語でよく紹介されているこの言葉の正しい英訳は
  "We appreciate your understanding and cooperation."
であって,
  "Please your understand and cooperate."
ではないわけです。つまり,日本語では「ご理解ご協力をお願いします」であっても,英語では「ご理解ご協力をいただいて感謝します」なのです。
 「おもてなし」という日本人の大好きな言葉があります。この「おもてなし」も,その多くの場合,下心満載の言葉です。つまり,「おもてなし」は決して無報酬のものではなく,何かの見返りを期待しているわけです。しかし,それを表立って言わないというのが日本人の謙虚さと美徳,いや,腹黒さなのです。「お願いします」もまた「おもてなし」という言葉と同様に,言葉の裏に潜む日本人のあざとさを私は感じます。
 日本は「お願い」という名の強制国家なのです。
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 ちなみに,余談ですが,私は,新幹線に乗ったときに流れる車掌さんのへたくそな英語にいつもイライラします。

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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは

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