Happy New Year 2022.
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2022年になりました。
私の手元にある山川出版社の高等学校教科書「詳説日本史B」は2013年に発行されたものですが,その50ページに次のようにあります。
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飢饉・疫病などの社会的不安のもと,仏教を厚く信仰した聖武天皇は,仏教のもつ鎮護国家の思想によって国家の安定をはかろうとし…
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そしてまた,57ページの欄外に小さな活字で次のようにかかれています。
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光明皇后が平城京に悲田院を設けて孤児・病人を収容し,施薬院を設けて医療に当たらせたことも仏教信仰と関係している。
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光明皇后というのは,聖武天皇の皇后です。
同じく,私の手元にある山川出版社の高等学校教科書「詳説世界史B」も2013年に発行されたものですが,その142ページに
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14世紀にはいると気候が寒冷化し,凶作や飢饉,黒死病(ペスト)の流行,あいつぐ戦乱などで農業人口が減少した。
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とありますが,第1次世界大戦のころに流行したといわれるスペイン風邪についてはまったく記述がありあません。
おそらくこの時代,庶民にとっての大問題は,教科書に大きなスペースをとって記載されているような政権争いやら戦争よりも,むしろ疫病だったのでしょう。しかし,教科書のこれだけの記述では何もわかりません。
2020年から今までの世界を体験したとき,「未曾有のパンデミック」といわれる新型コロナウィルスのような「疫病」は,これまでに,何度も人類が経験したことなのに,いざ,それが起きると,あたふたするだけで,上に書いたように,歴史からは何も学んでいないので,同じことを繰り返しているのです。そして,いざ,現実になると,そのときはじめて,実は過去には同じようなことが… といわれだすのです。
リーマンショックのときもそうでした。
このときは,1929年からはじまった世界恐慌を引き合いに出し,その対策として1932年にアメリカの大統領に就任したフランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策が話題になりましたが,そのうちに,ニューディール政策は必ずしも成功していなかったなどとの論評があったりと手のひら返しをして,私は,人間は歴史から何も学んでいないのかと落胆したことを思い出します。
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450ページ近くある分厚い歴史の教科書に事細かに記述してある内容は,受験生を苦しめますが,それを学んだところで,歴史から何の教訓も学べないのなら,意味がありません。邪馬台国がどこにあったかよりも,人の生死にかかわる出来事にどう対処したかということのほうがずっと重要です。
経験したことのない出来事だから,政治家がうまくできなくてもやむを得ないという人もいますが,それでは政治家は素人であって,プロではありません。政治家は,自分の権力を花見をすることで誇るものではないのです。
平時ならだれがやってもうまくいきます。むしろ,教員免許更新のような害しか生まれなかった政策のように,何もしてくれなかったほうがよかったことも少なくありません。そうではなく,何か予想外の出来事が起きたときに,それに対処できるように,普段から投資をしたり準備をして,万一,そうしたまさかのことが起きたときにはできる限り的確に判断を下し,それを実行することができるように準備を怠らないのが政治家の仕事でしょう。
昨年私が感じたのは,そんなことだけでした。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは