この国は老人ばかりなので,本も雑誌も,はたまた,得体のしれない健康食品も,そのほとんどが老人向けのものばかりです。町にも老人が溢れています。
そんななか,ひときわ目につくのが,この「80歳の壁」という本です。
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人生100年時代だが,健康寿命の平均は男性72歳,女性75歳。80歳を目前に寝たきりや要介護になる人は多い。
「80歳の壁」は高く厚いが,壁を超える最強の方法がある。それは,嫌なことを我慢せず,好きなことだけすること。
「食べたいものを食べる」「血圧・血糖値は下げなくていい」「ガンは切らない」「おむつを味方にする」「ボケることは怖くない」等々,思わず膝を打つヒントが満載。
70代とはまるで違って,ひとつひとつの選択が命に直結する80歳からの人生。ラクして壁を超えて寿命をのばす「正解」を教えます!
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というのが,本の紹介です。
私がこのブログでいろいろ書いても話題にもならないけれど,というか,話題になっても困るけど,著名な和田秀樹さんが書けばベストセラーになるのです。
和田秀樹さんは1960年大阪府生まれなので,私より若干お若い。東京大学医学部を卒業した精神科医です。
それにしても,80歳過ぎて,この本を読んでまだ元気に生きようという意欲がある人はすごいです。
私の両親はともに90歳前後まで生きたので,80歳以降の10年余りの時間をどう過ごしていたかはおおよそわかります。それを見てきて思うのは,その齢になれば,日々,過去も未来も考えず,そのときそのときをこころ静かに楽しく生活することだ,ということに尽きます。そして,何が起きても,それは神様の思し召しと思って受け入れることです。
結局それに尽きるのです。こうした本は,どれも「それだけのこと」を,延々と書き連ねているだけのものです。
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そもそも,いつも書いているように,地球上に生命が存在する意義などまったくありません。
偶然に偶然を重ねた化学反応の結果できてしまった,「それだけのこと」です。これを宗教家は「生かされている」などと大げさにいいます。しかし,そこに生を受けて,自分がやどってしまった以上は,それが存在する限り,楽しく時間を過ごすこと,「それだけのこと」なのです。
まあ,「80歳の壁」などと題すれば,それを乗り越えることがたいへんだと感じてしまうでしょう。確かに前回書いたように,「35歳の壁」「50歳の壁」「65歳の壁」はあります。しかし,80歳は壁ではなく,出口。その先は,いたるところ,得体の知れない生物の住む沼地やらどこに野獣が潜んでいるかわからない荒れ地だらけの悠久なる大平原が広がっている,「それだけのこと」だと私は思いますけれど…。で,どこかで足を取られて,それで終わりです。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは