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 朝日新聞の朝刊に連載していた多和田葉子の小説「白鶴亮翅」がよくわからないまま終わり,今村翔吾さんの小説「人よ,花よ,」がはじまりました。
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 「人よ,花よ,」は南北朝時代の武将・楠木正成の長男・楠木正行を主人公に,若者たちの生き様を描く歴史小説です。
 湊川の戦いで討ち死にした楠木正成と,四條畷の戦いに挑んだ楠木正行は,ともに大軍を相手に最期を迎えました。「楠木正成は自分の意思で戦に身を投じたけれど,楠木正行は幼いときから戦の渦中にいて,ある程度は自分の未来や人生が決定づけられていた」といいます。この小説では,できるかぎり楠木正行の気持ちをひもといて,葛藤も含めて描いてみたい。
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といった紹介がありました。

 歴史小説は,その時代のことを知らないとわからないので,ここで復習をしてみました。
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 1333年(元弘3年),鎌倉幕府が滅亡し,1334年(建武元年)に,御醍醐天皇による建武の新政がはじまります。しかし,1335年(建武2年)に起きた中先代の乱を機に足利尊氏が新政権に反旗をひるがえし,その翌年,京都を制圧し,北朝の光明天皇を立てます。御醍醐天皇は南朝として吉野に逃れ,ここに南北朝の動乱がはじまります。この際,摂津国湊川で,九州から東上して来た足利尊氏・足利直義兄弟らの軍とこれを迎え撃った後醍醐天皇方の新田義貞・楠木正成の軍との間で行われた合戦が湊川の戦いです。
 楠木正行は生年や幼少期の実態は不明で,後村上天皇が即位した翌年の1340年(延元5年/暦応3年)から史上に現れ,南朝の河内守護として河内国を統治しました。
 1344年(興国5年/康永3年),北畠親房が吉野行宮に帰還し、准大臣として南朝運営の実権を握ると,楠木正行は,好むと好まざるとに関わらず幕府との戦いの矢面に立つことになります。1347年(正平2年/貞和3年)に兵を起こした楠木正行は,北朝・室町幕府の細川顕氏や山名時氏らの大軍を立て続けに破るなど,すべての合戦に完勝しますが,1348年(正平3年/貞和4年),四條畷の戦いにおいて,幕府の総力に近い兵を動員した高師直と戦い,北四条で力尽き,26人の将校と共に戦死しました。この後,高師直と足利直義との間の政治権力の均衡が崩れ,室町幕府最大の内部抗争である観応の擾乱が発生することになるのです。
 「人よ,花よ,」はこの時代を描こうとするもののようです。

 NHKの大河ドラマ「太平記」は,1991年(平成3年)に放送されました。鎌倉時代末期から南北朝時代の動乱期を,足利尊氏を主人公に描いた物語です。
 このころ,南北朝をテレビドラマで取り上げるのは,元寇ととももタブーとされていたので,はじめての試みとして,私は,興味をもって見ました。足利尊氏の生涯は,よくもまあ,これだけ戦いに明け暮れたものだという印象をもちましたが,それは,今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も同じです。
 ところで,「太平記」では,楠木正成を演じたのが武田鉄矢さんです。そこで,私は,楠木正成というと,武田鉄矢さんの顔が浮かんでしまうのです。「人よ,花よ,」を読んでいても,そんな感じになってしまうので,どうもいけません。また,「太平記」には楠木正行も登場したのですが,私にはまったく記憶がありません。
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 今のところはまだ,この小説ははじまったばかりですが,読みやすいので,毎日楽しみにしています。日本人は昔も今も変わらないものだなあ,というのが,これまで読んだ感想です。
 歴史小説は,作者の意図がしっかりしていないとかったるくなってしまうので,今後,どうなっていくか,といったところです。私としては,武将の姿以上に,この時代に生きた庶民の苦悩を描いてほしいものだと思っています。

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