これで,私はこの旅の目的はすべて達成したので,あとは帰宅するだけでした。そこで,最後の課題は,私が前日もらった3,000円のクーポンのうちの残っている2,000円分の使いみちでした。トラベルクーポンは税金のムダ使いそのものです。クーポンつまり金券,,でなく,たとえば,ポイントでもらえるのなら使いやすいのですが,クーポンは使えるところが限られていて,しかも,それがどこなのか小さな字で書かれた一覧表だけでは簡単にはわからないし,前日宿泊した宿でもらって,次の日に使い切ってしまわなければならないということでは,日ごろ買ったこともない土産物に化けるくらいしか使う手段がないのです。
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それでも,1日目に宿泊したときにもらった徳島県の3,000円分のクーポンは,500円券が6枚だったので使いやすかったのですが,徳島県限定だったので,2日目の朝から高知県に行ってしまう私は,使うのに困りました。そして,2日目に宿泊したときにもらった3,000円分のクーポンは,高知県限定であっても翌日の3日目は高知県を旅するから使うのには問題がなかったのですが,1,000円券が3枚でおつりが出ないので,それはそれで使いにくいものでした。うち,1,000円は宿泊先のホテル松葉川温泉の夕食でワインと梅酒に使ったけれど,残りの2,000円が問題でした。
この日,私はその「亡霊」にずっと悩まされることになりました。
高知県といえば坂本龍馬。坂本龍馬といえば桂浜です。桂浜はこれまで何度も行ったことがあって,今回あえてまた行く気持ちはありませんでしたが,高知県立坂本龍馬記念館だけはなぜか行っていなかったので,今回はそこへ行くことにしていました。そして,そのあと,高知県立坂本龍馬記念館内にきっとあるだろうレストランか,あるいは,桂浜のどこかのレストランにでも入って昼食をとって,そこでクーポンを使い果たすことにしました。
そのような勝手な予定を立てて,窪川から桂浜に向かいました。
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高知県内を走る高速道路は,たとえば,高知龍馬空港インターチェンジから高知インターチェンジや四万十中央インターチェンジから須崎東インターチェンジなど,ところどころだけ無料区間があります。そこで,無料区間だった四万十中央インターチェンジから須崎東インターチェンジまで高速道路を走って,その先,桂浜までは一般道に進路を変えました。
やがて,一般道で桂浜の手前まで来たのですが,そこには,高知競馬場と広い駐車場がありました。
そこで思いがけないことが起きました。
それは,この広い駐車場でさくらサーカスが開催されていたということです。
私は,以前,NHKBSPでさくらサーカスのドキュメンタリーをやっていたのを見て興味をもち,そのとき,一度見たいものだと思ったのをここで思い出したのです。まさかここでやっているとは! さすが強運,思わぬ偶然でした。しかし,私は,この運を手にすることができなかったのです。
このとき,頭を駆け巡ったのは,チケットをもっていないし,どうやって見るのだろう,何時からやるのだろう,これからサーカスを見て帰りの飛行機の時間に間にあうのだろうか,高知県立坂本龍馬記念館にも行きたいし,などなどのことでした。
車が信号待ちになったときを利用して急いでネットで調べても,開演時間がよくわかりません。駐車場に係員がいたから,そこで一旦車を駐車して聞いてみればよかったのですが,車が多く渋滞気味で,その流れに従って走っていたら通り過ぎてしまいました。引き返すのもたいへんでした。
ということで,私は目の前に訪れた幸運を自らつかみ損ねてしまったのでした。
家に帰って調べてみると,この時点でサーカスを見ることができたのです。サーカスを見ても,十分に飛行機に乗るまで時間があったのです。行きたかった高知県立坂本龍馬記念館は大したことがなかったから,むしろさくらサーカスを見るべきだったのです。これにはほんとうに後悔しました。
さくらサーカスは来年2023年1月15日まで開催しているということなので,私は,後日,サーカスを見に,再び高知に行くことを決めました。
さて,さくらサーカスを見損ねた私は,行きたかった高知県立坂本龍馬記念館に着きました。ここの入館料は500円程度で,クーポンが使えるということでしたが,おつりが出ないので使うのをやめました。高知県立坂本龍馬記念館の展示は充実していたものの,そこにあったのはそのほとんどがレプリカだったので,期待が大きかっただけに私はがっかりしました。また,館内にはレストランもありませんでした。
見学を終えて,次に桂浜水族館へ行こうと考えました。桂浜まで来て水族館なんて,と思っていたので,これまでは行ったことはなかったのですが,桂浜水族館でクーポンが使えるらしいと知ったからです。しかし,人混みの中結構な距離を歩いてやってきたのに,入館料にはクーポンが使えず土産物だけが可能だと言われて,空腹も手伝って,次第に機嫌が悪くなってきたので,桂浜水族館に入るのをやめました。次第に,私の高知県への想いも薄れてきました。それに輪をかけたのが,桂浜は団体ツアー客だらけだったことでした。とんでもない人混みでした。
あきらめきれず,レストランがないかと,人混みの中をかき分けかき分け,桂浜の新しくできたモールのようなところに行ってクーポンが使えるところを探したのですが,ここもまた,土産物点だけはクーポンが使えても,レストランでは使えませんでした。
さくらサーカスを見損ねた後悔が次第に増幅して,やらたと腹が立ってきました。もらったクーポンの亡霊によって,この日の予定は無茶無茶になって,私は高知県が嫌いになってきました。
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「しない・させない・させられない」とは
「Dans la vie on ne regrette que ce qu'on n'a pas fait.」とは





